ある少年について
『先日、市街地や警察、自衛隊に多大な被害をもたらした少年が、自衛隊の特殊部隊による作戦行動の末、射殺されました。少年は、学校などで便利とされ、広く使用されている「おもいえがき」を使用し、破壊活動を行ったとされていますが、真偽の程は調査中とのことです。』
これは、我々が任務を受けて射殺した少年のことだ。
我々は、相手は少年ではあるが、このままでは国が滅びかねないと判断した国の依頼で、あの少年を射殺した。
しかし、部隊のほとんどは精神を病んでしまった。
子供を殺したことも然ることながら、あの少年の想いが最後に、我々に思いがけない形でダメージを与えていったのだ。
「おもいえがき」。私の子供も使っている。いいものだ。
絵を描くだけでなく、口が利けなかったり耳が聞こえなかったりする子供にとってはコミュニケーションツールに成りうる。素晴らしい発明だと思う。
しかしあの少年のものは、いささか普通のものではありえないことを数えきれないほど発生させた。
まずは、立体物の具現化だ。
本来なら、思い描いたものが紙に描かれて出てくる。これだけだ。
しかしあの少年のものは、立体物はおろか建造物、ロケットもしくはミサイルのようなものまで具現化させ、さらに機能していた。
さらに、文字も書けるという機能の拡張か、最後にあの少年の心の中が我々に見えたのだ。
具現化という形だけでなく。頭の中に、直接。
悲痛な叫び。隊員のほとんどはその場に崩れ落ちた。
そのまま病院に運ばれて出てこない隊員もいる。部隊はほぼ壊滅したと言ってもいい。
私もおかしくなりそうだ。四六時中、罪悪感に苛まれているのだ。
あの叫びはまだ頭の中に残っている。恐ろしいぐらいに焼け付いて離れない。
いや、こう言った方がいいのだろうか。
頭の中に描かれてしまったのだと。
こわいひとたちの話です。
こわいですねえ。