避難
「マジかよ」
女の人の肉を食べてる人がいる。
多分これは感染者というやつだと思う。
感染者は死ぬまで止まらないから殺さないといけないって聞いた気がする。
このまま放っておいたらもっと被害者が増えそうだ。
俺は急いで家に戻った。
キッチンから包丁を取り出す。
そしたら急いで感染者のところに向かう。
さっきの場所に戻るとまだ肉を食っていた。
狂人化するウイルスは発症したら治らない。
発症する条件は感染者に噛まれて体内にウイルスを取り込むか、突発的に狂人化するかの二つだった。
突発的な感染は理由がわかってない。
女の人は助からないだろう。
ところどころ肉を食われてるし噛まれてるから生きてても狂人化する。
女の人も俺が殺すしかない。
俺は包丁を手に握って感染者の背後にゆっくり忍び寄る。
感染者は食事に夢中なのか俺には気づいてないみたいだ。
俺は感染者と50cmくらいの位置まで近づく。
心臓がバクバク鳴っている。
心臓の音で感染者に気づかれそうだ。
俺は感染者の頭を抑えて首を切り裂く。
切り裂いた首から血が噴き出る。
俺の服が血の色に染まる。
最悪だ。
感染者はしばらく痙攣して動かなく鳴った。
きっと死んだんだと思う。
念のために食われてた方の女の人の心臓にも包丁を突き刺す。
女の人の意識はなかった。
腹や顔が食われてるから当たり前だ。
きっとショック死したか気絶していたんだと思う。
感染者を始末したら罪悪感が俺を襲う。
感染しても元は人間だ。
殺したら罪悪感が湧く。
でも罪悪感がどうとか言っている場合じゃない。
感染者を相手に感情論で動いても死ぬだけだ。
どっかの国がどっかの国は国民が「感染者を殺すのはかわいそうだ」とか反対して結局は行動を起こせなくて滅びたってニュースを見た。
だから感染者を相手にするときには感情論を捨てた方がいい。
俺は家に戻ってシャワーを浴びた。
体に血が付いてて鉄臭いからだ。
シャワーを浴び終わった俺はテレビでニュースを聞きながらスマホで情報を集める。
さっき家の外に感染者がいたから近くでたくさんの人が感染して暴れまわっていてもおかしくない。
だから情報を集めてここから避難するかを決めなきゃいけない。
しばらく調べていると隣の県がたくさん感染者で溢れているらしい。
自衛隊が出動して感染者を殺し回ってるらしい。
もしかしたら俺もここから逃げた方がいいかもしれない。
いや、逃げた方がいい。
隣の県から感染者がこないとはかぎらない。
さっきの感染者も隣の県からきたやつかもしれないし。
とりあえず真央にこれからどうするか相談しよう。
本当はもっと人生経験が豊富な人に相談したかったけどしょうがない。
コンコン
部屋をノックする。
「入ってもいい?」
俺は入っていいか聞いてみる。
「いいよ」
返事が返ってきた。
入っていいらしいので入る。
入ると真央は机で勉強していた。
俺は人を殺してたのこいつは勉強をしてたのか。
羨ましい。
俺も人を殺さないで勉強してたかった。
「さっき女の人の悲鳴がきこえただろ?」
「聞こえたけどそれがなに?」
「それを見に言ったら悲鳴をあげた女の人が感染者に襲われてた。」
「は!?マジで!?その人は?感染者はどうなったの?」
真央が大声を出して驚く。
そりゃ、当たり前だ。
国を滅ぼした感染者が家の近くにいたら驚く。
「二人とも俺が…殺した。」
殺したことを言うか迷ったけど言うことにした。
「え?なんで襲われてた人まで殺しちゃうの?なんで?」
すこし言葉足らずだったみたいだ。
「女の人は噛まれてた。噛まれたら感染するって言うの知ってるだろ?」
「あぁ、なるほど。そういうことね。」
真央がほっとしたように胸を撫で下ろす。
きっと殺人者じゃなくて安心したみたいだ。
俺は感染者を殺すのも人を殺すのもあまり変わらないと思うけど。
「それで近くの状況について調べて見たんだけど隣の県が感染者が溢れてるらしい。だからさっきの殺した感染者は隣の県から来た奴かもしれない。だから逃げない?」
避難することを提案してみる。
ちなみにここは福岡県で隣の県は長崎県だ。
「逃げるのもいいけどお父さんとお母さんはどうなるの?」
父と母は仕事で家にはいない。
行き先を教えておけばどうにかなると思う。
「行き先を教えとけばどうにかなるんじゃねぇの?大人だし。あと車使ってももう一台あるから大丈夫だろ。」
そう。
俺の家には車が二台ある。一台使っても平気だ。
「うーん、じゃあ避難する?でもどこ行くの?」
そりゃあ、もちろん山口県の方だ。
「俺は関門橋を渡って山口の方に行った方がいいと思う。」
「じゃあ、それで」
真央もそれでいいらしい。
俺たちは山口の方に感染者から逃げることにした。
真央って受験生なのにこんなことしてて大丈夫なのだろうか?