第1話
こんにちはココアと申します。
今回は初めての小説となりました。
テーマはもちろん恋愛です。
連載小説ですので、これからどうぞお楽しみください。
放課後。
教室に残って黒板を一人、きれいに消そうとしていた深水英。すると、教室のドアががらりと開いた。
英は誰だろう、と思いそちらの方向を見た。
「まだ・・・残っていたのか。」
そこに立っていたのは朱島玲音だった。
「ど、どうしたの?」
英は玲音に尋ねた。
「ああ、ちょっと忘れ物を取りに来たんだけど・・・。英こそこんな時間に黒板1人で消すなんて変なことしてるな。」
「あはは。なんか消したくなっちゃって。」
「ま、いいけど。」
そう言いながら、玲音は机の中から、教科書を取り出した。
そして、一生懸命黒板を消す英の姿を見て、
「・・・消すの手伝おっか?」
と言葉が自然に出ていた。
「い、いや、いいよ。私が勝手にしてることなんだから、1人でするよ。」
英はそういったが、玲音は、
「貸して。俺のほうが身長高いんだから。もうちょっと頼ってよね。英は頭もいいし、なんでもできる。スポーツだって家事だって。でも1人で頑張りすぎだよ。」
といい、黒板消しを英の手から優しく取った。
英は小さくありがとう、と言い、玲音の背中を見つめていた。
黒板を消し終わった後、玲音は英のほうを見た。
「ほら、きれいに消えただ・・・・・」
そのあとの言葉が続かなかった。
夕焼けが英を優しく照らしていたのだ。
(いつにもましてかわいく見える・・・。)
その英を眺めているうちに、今まで英に抱いていた思いが口からあふれ出てきた。
「あ・・・俺、前から思ってたんだけど」
英は玲音の口から何が紡ぎだされるのか気になり、玲音をじ、と見つめた。
「・・・俺、お前のことが好きだ。」
その言葉と同時に玲音は英を引きよせ、おでこにキスをした。
玲音は自分の行動に驚いたが、そのまま勢いで言ってしまおうか、と思った。
英は混乱した。その混乱をさらに誘うかのように、玲音の手が顔に近づき、英の眼鏡をはずす。
「眼鏡・・・外したほうがかわいいじゃん。」
玲音は英の顔を見てにっこり笑った。
英は真っ赤になり、カバンを取って、教室から飛び出した。
走りながら玲音が眼鏡を持ったままであるのに気が付いたが、玲音の言葉や行動が耳や体に残っており、
さほど気にならなかった。
教室に残った玲音は英の眼鏡をもったまま、1人で話していた。
「あー、失敗しちゃったかな、俺。そうだよな、急に告白なんてしたら驚くよな。」
そこに見回りをしに来た担任の先生・・・宮下先生がやってきた。
「遅くまで何してるんだ?」
「あ、宮下先生。忘れ物を取りに来ただけです。」
「そうか。忘れものって、その眼鏡か?」
玲音が手に持っていた眼鏡を宮下は指さす。
「いえ、これは英・・・深水の忘れ物です。」
「先生に貸してくれないか。今から深水の家に用があるから、渡しておくよ。」
宮下は手を差し出した。玲音はその上に英の眼鏡を置く。
「確かに預かったぞ。もう遅いから早く帰りなさい。」
そう言って2人は教室を後にした。
* * * * * * * * * * * * *
家に戻った英はベッドに突っ伏して先程の出来事を思い出していた。
今日はお留守番で誰にも家にいないから、相談ができないことを残念に思っていた。友達も1人しかいないし。その友達はバレーの選抜選手だからとっても忙しい。そんな人に相談するのもちょっと気が引けた。だから、1人でうじうじ考え込んでいるのだ。
(玲音君が私を好きだなんて・・・どういうこと?きっと何かの間違いだわ。間違いでなかったとしても恋愛相手としては見ることができないな。どうしよう・・・。さっきも逃げてきちゃったし。)
そんなことを考えていると家の呼び鈴が鳴った。
(誰だろう・・・?今日は誰も来る予定はなかったはずだけど。)
インターホンを覗くと、家の前に立っていたのは担任の宮下だった。
(なんで先生が・・・?)
そう思いながらもシカトするのはさすがに失礼かなと思ったので、玄関の扉を開けた。
「どうしたんですか?先生。」
宮下を家の中に招き入れようとするが、宮下は入ってこない。
「深水・・・。」
英の名字をつぶやき、英の腕をつかむ。そして家に入り、壁に英を押し付ける。
「先生ッ!!??」
「あいつより・・・俺のものになれよ。」
と言い、キスをしようと顔を英に近づける。
「先生っ、私は・・・誰も選びませんッッ!!」
語気を強くし、拒絶を訴えたが宮下は止まろうとしない。
「やっ!先・・・生っ!!」
唇と唇が触れようとした瞬間、カギが開いたままの玄関の扉が開いた。
「何してんの?先生?」
玲音だ。玲音は怒りをあらわにし、今にも殴りかかりそうだ。英は好機とばかりに、宮下を突き飛ばし、玲音のもとに駆け寄った。
「・・・先生をつけてみたらこの様ですか・・・。情けない先生ですね。警察に行きたいですか?それとも学校に戻りたいですか?」
にっこりと笑いながら玲音は告げる。
「今回は許します。英も嫌がりはしたけど、警察沙汰にはしたくないそうですし。」
宮下はそれを聞き、舌打ちをした。
「悪かった。ただ、深水のことは諦めないからな。」
そう言って英の家を出て行った。
「大丈夫だった?」
心配そうに玲音が英を見つめる。そして英の頭を撫でながらこう言った。
「ばーーーーか。お前鈍感すぎ。」
ばか、と言われてちょっとムッとする英。それもそのはず。定期テストでは必ず3位以内に入る超天才だからだ。
玲音は英をみてふわっと笑う。
「いやー。なんか俺のカンが、危険だから宮下先生をつけろー、って言ってて。来てよかった。」
英は照れながら、″はあーーー?”という顔をした。
「俺がいなかったらどうなってたことか・・・。」
「あはっ。大丈夫だよ。私、2人とも恋愛対象としてみてないから。だってあなたとはまだ何回かしか話しとこと無いし、友達って思ってたわけでも・・・ないから。先生は先生だしね。」
そして2人は笑った。
「なんだよー。じゃあ、今日からトモダチ・・・な。」
「うん。じゃあトモダチ。怖いから一緒にお留守番・・・してくれない?」
玲音は目を見開く。
「俺でいいの・・・?」
「うん。ただ付き合うとも何とも言ってないからね。そこだけは覚えといてよ!」
そう言うと英はにっこりと笑った。
放課後の出来事なんて英はほとんど忘れていた。
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