別話6 エイルムの町にて
サイドストーリー6話目。連日投稿2日目。ほら、ちゃんと投稿したよ! 嘘じゃなかったでしょ!?
エイルムのダンジョンから帰還した翌日、私はほぼ一日中寝ていた。それはもう惰眠をむさぼった。ダンジョンの床という硬い地面で寝ているとどうにも体が痛くなってしまう。あー、まともな寝床は素晴らしい。ベッド最高!
とまぁ、昨日は存分にダラダラと過ごしたので、今日は少し町に出てみようかと思いそとに出ている。勿論一人で。ダンジョン内では四六時中パーティーのメンバーと一緒だった。別にみんなといるのが嫌いというわけではないが、一人の時間っていうのも取りたいじゃない?
そういうわけで、帰還して4日程は各自自由行動にしておいたので、その時間私は存分に一人を楽しもうと思う
取り敢えず宿舎の食堂にて朝食をいただく。といっても寝すぎてそろそろお昼時だから"朝食"とは言えないかもしれないけれど。朝はガッツリ派ではないのでダンジョン受付所にいる男の人、確かストールさんだったかな。その人が作ってくれているサンドイッチをもしゃもしゃと食べる
うん、やっぱりおいしい。この人もういっそこれを商売にすればいいと思う。カフェとか出してさ。コーヒーとサンドイッチ、おいしいと思うんけどなぁ。・・・そういえばそもそもこの世界ってコーヒーあるのかな?そういう嗜好品ってやっぱり高かったりするのかな?
サンドイッチを食べ終わった私は宿舎を出て町に向かう。といっても、特に町に行って何をするとかもないから目的のないぶらり散歩なんだけれど
町の大通りはいつも通り賑わっていた。衣服屋や武器屋、飲食店。様々な店が並び、そこにたくさんの人が入ったり出たりをしている。町の人たちもいるけれど、鎧を着た人や大剣を背負った人や魔法使いっぽい格好の人たち、つまり私たちと同じくここ迷宮遺跡【エイルムの塔】に挑戦しに来た人たちも多く見受けられる
私たちがこの町に来たときは既にダンジョン挑戦者とか商売人とかで賑わっていたのだけれど、ほんの少し前まではそうではなかったらしい。なんでもこの【エイルムの塔】は別名【黒群の塔】と呼ばれていたらしく、第1階層から第7階層まで、えっと、その、黒い悪魔、台所の天敵こと所謂"G"の見た目そのまんまの魔物が床から壁から天井までを埋め尽くしていたらしい。想像するだけでゾッとしてきた
あんまりな悍ましさと精神的なダメージによって・・・というのもあるだろうけど、そもそもの話で数が多すぎて全く進めず、かといって何か目ぼしい宝もあらずということでエイルムの塔には挑戦者が全然いなかったらしい
それが、最近たまたまここに訪れたという、私たちと同じくこの世界に召喚されて行方不明となっている新井君であろう人物がその"G"がいるダンジョンの階層を切り取ってまともな階層だけにしたうえに、自らでエイルムの塔を完全攻略したんだとか。その噂を聞きつけた冒険者たちが我も我もとダンジョンに挑戦しにこの町を訪れ、その冒険者相手に商売をと商売人が訪れ・・・で、今のような環境になったらしい
まったく、何をしちゃってるの新井君って感じだよね。ひとつの町の経済に影響を与えちゃってるし。それで、町の人たちに「町に活気が!」とかって喜ばれているみたいだし
というか、邪魔ならそのダンジョンを切り取ってしまえって、発想が飛躍しすぎて宇宙の彼方だよね。普通やらないって。まずできないってあんな大きな建造物。ホント主人公してるみたいね
あと町の人たちの会話の中で「黒い巨人」とか「ダンジョンが町の外に吹き飛んでいった」とか「大きな爆発音がした」とか「あれはきっとUMA」とかって聞こえたんだけど、本当に何をしたんだろうか。UMAってなんだろう。私は町の人たちのそんな噂を小耳にはさみながら、ぶらり街歩きを続けていく。
町のメインストリートも粗方見終わって、特に行きたいところも無くなったためそろそろ宿舎に戻ろうかと思う。このまま来た道を引き返すのもいいけど、せっかくだからちょっと違う道を通ってみようかと思う。どうせ予定も何も無いんだから、ちょっと遠回りの冒険っていうのもいいよね
ということで、旧メインストリートを通っているんだけど・・・活気が全然ない。確かに、もともとほんの少し前までこの町は外から来る人が少なかったらしいからお店がそんなにあるわけじゃなかったのかもしれない。けど、それにしてもガラッガラで人通りがもうゼロに近い。たぶん、さっき通った現メインストリートの方に他方からのお店が開かれてるからそこに皆行っちゃってるんじゃないかな
近くに大型デパートができたせいで昔ながらの雑貨屋さんや八百屋さんが潰れていく・・・みたいな現象ね。まさか異世界でも似たような光景を見ることになるとは・・・。光あれば影もある、と言ったところだけど、残念ながらこういう問題に関しては私たちには解決できそうにない
恨むなら後先考えずにダンジョンを壊した人を恨んでほしい。いっそ呪ってやってもいいんじゃないかな。またどこか訳のわからないところに飛ばされればいいと思うの
「ねえ、そこのきみ」
と、その時背後から声をかけられた。いきなり声をかけられたものだから物凄くびっくりした。全然気配感じなかったんだもん
振り返ると、一人の女性が立っていた。見た目は20歳くらいかな。声の雰囲気や容姿から受ける印象としては、"しっかりしてそうなお姉さん"といった感じ
「は、はい何ですか?」
「きみ、もしかしてこの町にやってきたという勇者、の一人かい?」
「!」
この人、私が勇者一行の一人って何で知っているんだろう。私はダンジョン以外では基本一人行動だし、そうそう目立つ存在じゃないから町中とかを歩いても勇者だと言われたことはない。どこで私を勇者だと?ダンジョン敷地内にある私たちの宿舎近くですれ違った?それとも初めてこの町に来た時の行軍みたいなことをしたときに?
そもそも、何で私はこんなに警戒しているのだろうか。もしかしたらただ挨拶しただけの人かもしれないじゃない。そうだよね、うん。別に隠すことでもないだろうし
「そうですね。一応勇者の一人です」
「おお!やっぱりそうなのか!なんでもここの迷宮遺跡【エイルムの塔】に挑んでいるとか。存分に頑張ってくれよ!」
「あ、ありがとうございます」
「で、」
途端、目の前の女性の目つきが変わった。いや、目つきだけじゃなくて全体の雰囲気も、一気に鋭くなった。や、やっぱりこの人は敵かそれに類する人だったんじゃ・・・!!
「一つ質問。きみのお仲間にここのダンジョンの一部を破壊してダンジョンの構築を変えた人がいる、というのは本当かい?」
きっとこの人が指してるのは新井君のことだろう。ここは素直に言うべき・・・?いや、いいか別に言っちゃっても
「確証はありませんが、恐らくそれは私たちのクラスメイトの一人かと」
「そうかい。じゃあきみ・・・」
目の前の女性がニヤリと笑う。何かが来るっ。私は警戒を一気に引き上げ――――――――――
「あの巨大なUMAについて何か知っているかッ!?」
はい、ということで久しぶりに登場『UMAの人』! 約1年ぶりの再登場みたいです。え、憶えてない?いやね、いたんですよ。「UMAッ!!」って叫ぶ変態が
次回、まさか、『UMAの変態』が、そんなっ
(同じく明日のお昼頃投稿予定です。)




