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別話5 エイルムのダンジョンにて

サイドストーリー5話目です。いや、違うんです。エタってたわけじゃないんです。ちょっとやらなきゃいけないことの波状攻撃を食らって、抜けきったと思ったら「あれぇ!? もう2週間過ぎてる!? てかもう3週間経ちそう!?」みたいな状態だったんです。ホントなんです。エタってない証拠といえばなんですが、この話を書き始めたら書きすぎていつもの文字数の3倍程度になったので3話に分けて3日連続で投稿しますッ(ここまで早口)

 ここは迷宮遺跡ダンジョン【エイルムの塔】12階。点在するテーブルマウンテンみたいなところに架けられた不安定な吊り橋を渡りながら進んでいくステージ。標高が高く、私たちがいるのは雲の上。落ちたら即死ね。本当にダンジョンの中なのかと疑ってしまうのも無理はないと思う


 ここもそうだけど、今まで通ってきた階層は迷路みたいになっていたり海みたいになっていたり、いやホントにダンジョンっていうのはよくわからない仕組みになっ――――――――


「"【羽】"のモーション!来るよ!!」


 っと、今は戦闘中だった。集中をそらさないようにしないと。最前線からかけられた注意喚起にわたしは思考を再び戦闘へと向ける


「みんな下がって!北館キタタテ君は前へ!」


 先ほど告げられた敵の行うであろう攻撃をもとに、パーティーのみんなへと指示をとばす。指示を飛ばすなんてらしくないことをしていると思うが、なんやかんや言っても私がこのパーティーのリーダーになってしまっているのでリーダーらしくこうやって作戦指示をとばしたりしている


 上空から4本の脚と背中に巨大な翼をもった巨大な体躯の魔物こと【ピアサ】がその両翼を広げ、羽の弾をマシンガンの如く乱射してきた。実際には羽ではなく、羽の形をした魔力のかたまりなので、魔力弾といったほうが正確かもしれないけど


 視界を埋め尽くさんとばかりに撃ち込まれた羽。それを前にでた北館君が自身のスキルである防御壁を張って防ぐ。ガガガガッと羽が防御壁に当たる音が響くが、防御壁破られる様子は無い


 私は北館君が張る防御壁の空間から出る。まだ羽は撃ち込まれているのでこのままだと私はハチの巣にされてしまうわけだけど・・・勿論こんなところで死ぬつもりなんて微塵もない


「【全反転リバース】」


 私の目の前に障壁が展開される。ただ、これは北館君のように"防ぐ"為の障壁ではなく、"反射"させる障壁だ。わたしの張った障壁に当たった羽が方向を反転して空中にいるピアサへと飛んでいく。まさか自分が撃ち放った弾丸がそのまま、いやリバースの効果で1.5倍がえしで飛んでくるとは思わなかっただろう。必死に回避しようとするが、もともと大きな体躯のせいで全て避けることはできない


「河野さんっ」


「はいよ!北館君、足場っ!」


「うっす」


 跳ね返ってきた自身の羽を受けて怯んだ今が絶好の機会。このパーティーで一番近接戦闘にむいている河野さんに指示をする。とどめを刺すべく動き出した河野さん。だが、敵は空中。一方わたしたちは普通の人間なのでこのまま空中を飛行することはできないし、そんなスキルは持っていない


 そこで再び北館君の出番。彼の防御壁を守りに使うのではなく、今度は空中に展開してもらい足場にすることで、空中に存在する敵に近づくことができるようになる。というわけだ


「そぉりゃっ!!」


 河野さんが振るったロングソードがピアサの首へと入り込み、切り裂く。切断とまではいかなかったけれども、確実に死に至るほどの傷は負わせている


 「ギギャアアアァァァ!!」と断末魔を上げながら地へと落下してくるピアサと、「わあぁぁぁぁ!!おちるぅぅぅ!!」と言いながら落下してくる河野さん。私は河野さんの落下地点に反射威力を0.5倍にした障壁を張り、河野さんが地面へと激突して真っ赤なお花が描かれるのを避ける。そして落下してきた河野さんは障壁へと突撃し、トランポリンのように跳ねて無事着地した。それを確認した私はもう一方の無事に着地しなかった方、ピアサへと近づいていく


「Gigyaaaaa......」


 頭と胴体がほとんどとれかけているような状態でまだ生きているなんて。魔物の生命力というのはすさまじいものね。だから、確実にとどめを刺す


 私は倒れるピアサの頭部に手を触れる。それに反応してピアサも私に一撃でも返してやろうとでも思ったのか、火事場の馬鹿力・・・いや、死に際の馬鹿力で私へと牙を向けようとする


 だがその瞬間、ズドンッという音と衝撃とともにピアサの頭部は地面に真っ赤な大輪を咲かせた


「よし、これで終わり」


 さすがに生命力の強い魔物といえども頭を破壊されたんじゃ生きていられないだろう


「いやー、助かったよカスミー。にしてもさ、さっきのポーンってトランポリンみたいに跳ねるやつ?おもしろかったからまたやらせてよ!」


「・・・じゃあ取り敢えず15メートルくらい上からダイブしてよ。気分次第で障壁だすから」


「気分次第!?」


「大丈夫。15メートル程度なら今の身体じゃ頑張れば骨折程度で済むんじゃないかな?」


「それでもひどいよっ!?」


 まあ、パーティーを組んだ最初は慣れなくてぎこちなかったりもしたが、さすがにこれで3週間近くか。共に命を懸けた戦闘を行っていたので、こんな冗談くらいは言える仲にはなった


「いやあぁ、みんなお疲れお疲れ!ほれ、誰かさんケガとかしてないっすか?オレっちが治すっすよ?」


 回復職ゆえに戦闘面で活躍のできない鈴池スズイケ君がここぞとばかりに声を張り上げる


「ほら、前線組の3人さん!どうっすか!?」


「私は大丈夫かな」


「・・・ボクも大丈夫」


「あたしも気にするほどじゃないから大丈夫かな?」


「ノーンッ!!」


 3人から断られた鈴池君がオーバーリアクション気味にショックを受けている


「最近オレっちの出番少なくないっすか?需要がどんどんなくなっていってる気がするんすけど」


 あ、落ち込んだ


「そ、そんなことないから大丈夫だよ鈴池君!」


 すぐ傍にいた坂口さんが慰めにかかる


「ほら、回復職ってパーティーにいるだけで違ってくるだろうし、それにわたしだって戦闘はできないけど、鈴池君が護衛にまわってくれているから安心できるし。需要アリアリだよ!」


「さ、坂口さんありがとうっす!!」


 立ち直ったみたい。まあ実際に回復職というのは必要なわけで、最近だとこの辺りでの戦闘にもそれなりに慣れてきたわけだけど、やっぱり新しい場所だとそういうわけにもいかず負傷が多くなる。そんな時に鈴池君のような回復職がいてくれると結構助かる。戦闘だってできないことはないので坂口さんの護衛もしてくれてるしね


 うーん、というか、さっきの鈴池君のフォローって本来リーダーである私がやるべきだったのでは・・・?まあ、私より坂口さんとの方が仲がよさそうなのでこれはこれで大丈夫かな


「ほら芽生メイ、あんたはドロップ品の鑑定というお仕事・・・があるんだから、そっちもやってね?」


「あ、うん」


 "お仕事"というワードを強調して坂口さんを促す河野さん。明らかに鈴池君に対する当てつけだよね。ほらまた鈴池くん「ノーンッ!!」って言ってるし


「こら河野さん止めなよ」


「・・・鬼ですね」


「あれ!?北館君まで!?」


 ちゃんと注意しておくが、本気で鈴池君に嫌がらせをしているわけではないだろう。普段は普通に仲良さそうだし。あくまで私が見ている範疇のことではあるけれど


「それで、今回のドロップ品の方はどうだった?」


 私は坂口さんに尋ねる


「うん、今回はね"上質な羽毛"だった」

 

「なんだ今回も羽毛かー」


「いやいや、今回は"上質な"っすよ」


「・・・なんだっていいと思う」


 手に入れたドロップ品は持ち帰って売却するので、上質ならばその分高く売れるんじゃないかな?なら、今回はちょっとラッキーってことだよね


「それで、これからなんだけど、今回はこれでダンジョン探索は一旦やめて町に戻ろうかと思います」


 私はみんなに向けて次の行動を話した


「え、次の階層行かないんすか?次の階層からはまた違ったステージになるらしいからオレっちがバリバリ活躍できると思ったのに」


 鈴池君がバリバリ活躍するってことはつまり、私たちがバリバリ負傷するってことだからそれはあまり好くないことなんだけどね


「あたしはまだまだ行けるけどなー。次のステージってのも気になるし」


「・・・ボクは桐山キリヤマさんに賛成」


「わたしも右に同じく、かな」


 多数決の原理でいけば5人中3人と過半数を超えたので一時帰還で決定するんだけど、一応私の考えを説明しておかなきゃだよね


「私の考えを言っておくとね、確かに鈴井池君の言う通り次の階層からはステージ構成が違うという話を先に進んでいるパーティーから聞いているの。だから、何があるかわからないから進むとしてもこのまま行くよりも万端の準備が必要かなって思うの。ダンジョンに潜りっぱなしだと肉体はともかく精神的疲労がたまるでしょ?」


 面倒なことにこのダンジョンは1回出るとまた最初の階層から進まなくてはいけない。だからダンジョンに泊まり込みで攻略していくしかない。となると、さっき言った精神的な疲労もそうだけど、食料など物資のの枯渇という問題も出てくる。今回潜ったときは次の階層を想定した十分な資材は持ってきてはいないから、次の13階層の情報が少ない今、進むのはあまり得策ではないと考えたのだ


「もともと、私たちはこのダンジョンの攻略が目的ではないしね。あくまで戦闘に慣れるため。無理をして死んじゃったら元も子もないじゃない?」


「まあ、確かにそうっすね。オレっちも死にたくはないっすし、町に戻るに賛成するっすよ」


「あたしも駄々こねてまで次に行く気はないから、全然いいよ」


 全員の賛同を得られたので、この階層に設置された帰還の魔法陣に乗って町に戻る


 さて、明日はゆっくりしようかな



はい、ということで新しいキャラが出てきました。今後の登場予定ですか? 今のところないです。勇者側のダンジョンの攻略速度が遅い? 違うんですよ。これが普通なんですよ。むしろ速い方ですよ。アイツらが異常なんですよ


次回、アイツが出てくる・・・!! 


(明日のお昼頃投稿予定です。)

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