87 地下空間
87話目です。前話のあとがきで『このダンジョン編はあと1話で終わる』と言いましたね。それで『盛大なフラグ』とも書きましたね。
・・・・・・今回は本当に今話で終わりましたよっ
ミカヅキに抱えてもらいながら俺たちは底の見えない空間を降りていく
ちなみに影人さんは【小人さん】になってもらって俺の頭の上に乗っかってもらっている。さすがに2メートルの身長のままでは、いくら構成物質が【影】で重量的な問題がないとしても、スペース的な問題があるからな。かといって、今回かなり活躍してもらったのに"スペース取るんで、はいお疲れ"というのは、いささかどうなものなのか。ということで、解決案が"小人さん状態でついてきてもらう"ということだ。しかもほら、頭にちょこんと乗ってる小人さんとか、かわいらしいじゃないか
降下中、ミカヅキは光をつけようとしない。暗くないのだろうか、俺が魔法とかで光でもつけてやろうかと思ったが、そういえばミカヅキも俺も暗闇でも問題ない【目】だったし、そもそも俺は魔法がまともに使えないことに気が付いた。現状、ミカヅキに抱えられて運ばれているという、これぞ本当の"お荷物"状態だった。
一応安全を気にして、少し慎重気味に降下したためそれなりに時間を要したものの、2分ほどで地面へと降り立った。深い、深すぎるよ。これ普通に飛び降りたら死ぬって。なんてところにマザーコンピューターの本体置いてるんだよ。見つけて壊そうにもその前にこっちが死ぬじゃないか。なんて鬼畜なんだ。あ、このダンジョンずっと鬼畜ステージばっかりだったな。今更か
降り立った先にあった空間は、広い、が。そこまで広大ということではない。感覚で言えば、おおよそ教室3つ分程だろうか。・・・"教室"なんて単語久しぶりに使ったな。そういえば少し前まで学生なんてやってたんだっけ。おおう、ノスタルジック
「マスターどうしましたか?降下酔いとかですか?吐くなら隅の方でお願いしますね。ここで吐かれるのは、ちょっと・・・」
「いや酔ってないし吐かないよ」
「そうですか、ならいいです」
まあ、そこまで感傷的な気分でもないんだがな。こっちにきたおかげでミカヅキとも会えたわけだしな。何回か死にかけたけど。それなりに楽しくやれてたりもするからな。クラスメイトとはぐれた上に何回か死にかけたけど・・・。あれ?思い出に美化補正がかからないぞ
「それで、マザーコンピューターの本体っていうのはどこにあるんだ?」
「それは、あれですよ」
ミカヅキの示した方。そこにあったのは、この真っ暗な空間の中心にぼんやりと淡く光を放つ物体。降りてきたときから気になっていたんだが、というかあれって
「迷宮遺跡の魔石か?」
「はい、そうです」
なるほど、こっちに降りてくる前にミカヅキが言っていた"アレ"っていうのはこの魔石のことだったのか
「ん?それで、マザーコンピューターの本体は?」
「だから、アレですよ」
ミカヅキが指さすのは変わらずダンジョンの魔石。え、ということはあの魔石とマザーコンピューターの本体は同じということか!?
『・・・まさか本当にここまで辿り着いてしまうとは』
「うおっ、喋った!」
目の前の魔石から、上のボス部屋で聞いた声が流れる。どうやら本当にコアと同化しているらしい
『一応、どうやっても死に至るようなステージ構成にしていたはずなのですが・・・あなたたち、なかなかに普通じゃありませんね。』
「まあ、ちょっと危険地帯で暮らしていたこともあったんでな。あとは、運だな」
『なるほど、運も実力のうち、ということですか。あなたたちも運と実力が優れていたようだ。』
マザーコンピューターに褒められた。ただ、若干呆れたような声音になったその心情は"やれやれ、とんでもない奴らが来てしまったものだぜ"といったところだろうか。しかしなんだろうか、今のコイツの言葉に何か違和感を感じないでもあったような・・・?まあいいか
「で、ミカヅキは何やってるの?」
俺はさっきからこの部屋を隅から隅までウロウロしているミカヅキに声をかける
「いえ、エイルムの時みたいに人口遺物か何かでも落ちていないかと」
ああ、なるほど。俺は今回、武器庫でゲットした車や重火器等々で満足しているのではあるが、何かあるならばもらっておきたい欲はあるな
『残念ですか、ここには特には何もありませんよ。あるとしたら・・・ワタシの真下にあるこれくらいですかね。』
マザーコンピューターの言葉につられて見た魔石の真下の床。そこには迷宮遺跡【エイルムの塔】の魔石が設置されていた場所と同じようにして刻まれている魔法陣だった
内容も・・・だいたい同じか。異界からヤバイそうな奴を呼び出して従わせる魔法陣だ。これを見つけてしまったとなれば、よし、やるしかないな!
『侵入者、何をしているのですか?』
「この明らかに発動したら面倒そうな魔法陣に落書きして魔法陣を描いた主に嫌がらせをする作業」
『・・・ああ、そうですか・・・。』
【天界性万能手袋】の性能を活用して魔法陣に書かれた【セルン文字】を消して、書き直す。前回と同じように書き直して魔法陣の内容を変える。と、そこへ部屋をウロウロし終えたらしいミカヅキが近づいてきた
「マスター、そもそもこの魔法陣って魔力の供給源を絶てば発動しないんじゃ・・・・」
供給源・・・この場合はダンジョンの魔石になるのか?それを壊してしまえば魔法陣は発動しないと・・・。なるほど、その手があるのか。まあ、そうだとしても落書きは一応しておくけどな
『残念ですが侵入者、ワタシを壊したところで魔法陣は発動しますよ。この魔法陣とこのダンジョンは別のものなので、例えダンジョンが機能停止したとしても魔法陣は発動するのです。』
なんだ、結局発動するのか。やっぱり落書きしておいてよかったな
『まあ、何であれこのダンジョンは壊すのですけれどね』
「・・・は?おいどういうことだそれ!?」
『そういうプログラムが組み込まれたんですよ、この魔法陣を書いた本人に。"これが見つかったら見つけた者ともどもここを破壊するように"と』
おいおいマジかよ。どこまで行っても迷惑じゃないかこの魔法陣を書いた奴!!
『そろそろ崩壊が始まります。』
その言葉と同時に地鳴りが響き、揺れが発生する。ダンジョンの崩壊が起こり始めたようだ。次第にその揺れはどんどん大きくなっていき、その影響でこの部屋の天井の欠片らしきものが
パラパラと落ちてきた
「くそっ、どこかに脱出口は無いのか!?」
見渡してみるも、それらしきものは見当たらない。マズイな、このままだと生き埋めになる。こうなったら、カゲロウの力をギリギリまで使ってこのダンジョンとエルベール山に穴を開けてそこから抜け出すしか・・・。どういった被害が出るのか分からないが、ここで死にたくは無いしな・・・!!
「マスター、見つけました!!」
【影】を使ってダンジョンをエルベール山諸共吹き飛ばそうとしたとき、ミカヅキが声を上げた
「出口がありましたよマスター!マスターの真後ろの壁、そこの奥に空間があります。そこに転移魔法陣らしきものが・・・!!」
しゃがんだ体勢で地面に手をついていることから察するに、スキル【情報収集】を使ったのだろう
「よし、よくやったミカヅキ!」
今回はミカヅキが大活躍だな。最近情報収集スキルの出番も全く無かったが、やっぱり便利だよなあのスキル
俺は反対方向へ振り向き再び【影鎚】を作り上げ、大きく振りかぶって壁に思い切り撃ちつける。すると確かに中が空洞となっているような感覚が伝わり、そして一瞬の後に壁は崩れ去った。奥に存在した空間には、ミカヅキが言った通り転移魔法陣があった
「あったぞミカヅキ!!」
ミカヅキを魔法陣があるこちらの部屋に急いで呼び寄せる。崩壊がだいぶ進んできたようで、揺れもよりひどくなってきている。この地下空間もいつ巻き込まれるか分かったものじゃない
『おめでとうございます侵入者。あなた方はここ、迷宮遺跡【エルベール山軍基地】を攻略いたしました。本来のクリア条件であればワタシを倒すまでなのですが・・・、どうせダンジョンと共に沈むのなら大差はないでしょう。』
振動が大きくなる空間の中、突然つらつらと喋り始めるマザーコンピューター
『残念ながらあなた方に贈れるような物はありませんが、せめてのものとして転移魔法陣への魔力供給くらいはワタシがやりましょう。』
「お、おい。ちょっと待ってって・・・」
足元の転移魔法陣が光始める
『それでは、さようなら。運と力を兼ね備えた勇敢なる迷宮遺跡攻略者よ。』
その言葉と同時に俺たちは発動した転移魔法陣の眩い光に包まれ、崩壊の振動と音が響く迷宮遺跡から脱出したのだった
はい、ということで長かった(僕の投稿間隔のせい)ダンジョン編も終わりました。まさか宣言通りに今話で終わるとは・・・。どうせまた予告ブレイカー君でもどこかから湧いてくるんだろうなと思っていたんですが、見事に回避しました! 自分でも驚き!
次回、あちら側の人たちの話




