85 管理者
85話目です。残念僕はまだ生きてました。・・・・・・生きてました!!
5階層へと続く階段の踊り場で一休み、と予定していたが、思いのほか【影】を60%まで開放して使った力の反動による疲労感と倦怠感が強かったので、そのまま踊り場でひと眠りまですることにした。迷宮遺跡内、すこしでも体調を整えておくことも重要だ
ついでの話だが、この疲労を味わったことにより、俺は【影】の新しい使い方を見出すことができた。それは・・・
"身体のマッサージ"だっ!!
【影】を伸ばして自分をマッサージする。自分で【影】を操作するから、今一番押したいところを押せるし、力加減まで自由に調節できるという優れもの!!自分は寝転がりながら前進をほぐされるこの気持ちよさ。うん、かなりいい。
自分で【影】を操作するからそれで疲れる、ということもない。この程度の操作は効き手でペン回しするくらい簡単だ。溜まっても微量な疲労なのでマッサージの癒しの方がそれを大きく上回ってくれる。
途中からミカヅキがほぐしてくれようとしたのだが、押す部分がツボとか筋肉じゃなくて骨だったから痛かった。しかもなぜか張り切って力を思い切り入れていたから、ちょっと折れるんじゃないかと思った。今後は、ミカヅキに任せるのはよしておこう・・・
「さて、昨日は体もほぐしたから硬い床でもそこそこによく寝られたし、張り切って次の階層に行くか!」
「次は、私のマッサージの技術でマスターを骨抜きにしてあげます・・・!!」
骨抜きではなく骨砕きにあう可能性があるので是非ともやめてもらいたい
次の階層である第5階層は、順番通りにいけば通路とボス部屋に分かれているタイプの階層のはずだ。機械犬、機械人形ときて、次は何が出てくるのやら
俺たちはいつも通り、階層入り口の扉を開けるボタンンが設置されてある壁に一度身を隠す。今回も小人さんには先行偵察の任務に出てもらう
ちなみにだが、今【影】の開放率は40%にまで下げてある。いつまでも60%のままでは疲れるし、現段階ではそこまで必要な気はしないからだ。狐少女の方に関しても、もう50%まで開放せずとも大丈夫な状態になっているそうだ。
ボタンを押し、扉が開く。小人さんは開いた扉のど真ん中にいるが反応はナシ。部屋に足を踏み入れても、そこから1メートルほど進んでも反応は無かった。さっきの階層といい、急に飛び出してくることが無くなったな。この階層になってようやくダンジョンが"待つ"ということを覚えたということだろうか。えらいぞダンジョン!!
小人さんのおかげで開幕射撃は無いと判断できたものの、それでも警戒は消さずに俺たちは扉を超えていった。
「・・・え?」
第5階層に広がった風景を見た俺はそんな呆けたような声を出してしまった。5階層、そこにあったのは予想していたような迷路のような通路ではなく、巨大な一部屋であり、正面の壁には巨大なスクリーンのモニターらしきものがあった。雰囲気でいえば、ここは"組織の中央指令室"のようなあ場所だった
なんとなく、このスクリーンで映画なんか見たらきっと迫力満点なんだろうなと思い、ふと何か大事なことを忘れているような気がした。それをなんとか思い出そうとしたその時、突如としてスクリーンの画面が点いた。画面には"sound onnly"の文字のみが浮かび上がっている
一体、何が流れるのだろうか
画面に注目する俺たちの背後でカシャンと音が鳴る。まさかと思い振り向いた視線の先にあったのは俺たちを中心に扇状に広がったマシンガンが約10丁。当然銃口は俺たちに向けられている
くそっ、スクリーンの文字は俺たちの意識を逸らすためのものか。そして背後から機関銃でハチの巣にするという流れ。
だが、これもこのダンジョンで何回もあったことだ。多少驚きはしたものの、俺は【影】を展開し、無数の弾丸に対する防御壁を形成する。背後の攻撃を凌いでいるそのさらに背後から、などという可能性もあったので後方からの攻撃も防げるように、【影】を俺たちを覆うように球状に半円状に展開したが、背後からの攻撃は無かった
射撃が開始されて30秒ほどか、ようやく騒音と【影】の障壁にあたる衝撃が無くなった。第2射に警戒しつつ【影】の障壁を一旦解除する。モニターには変わらず"sound onnly"の文字が表示されている
『ハロー、侵入者』
突如として声が部屋中に鳴り響く。その声はまさしく機械音声といったようなもので、ベースは女性の声だろうか。
『開幕射撃はすべて防がれましたか。しかしまあ、あの程度を防げなければここまでは辿り着くことがでないので当然と言えばそうですが。』
「おい、お前は誰だ?」
恐らくこの階層のボスとかそこらへんだとは思うが、一応の何者かの確認をするのはお約束的出来事だろう
『ワタシは現在、ここ【エルベール山軍基地】を統制するマザーコンピューター。いわばここの管理者です。』
おっと、どうやらフロアボスどころかラスボスみたいなやつが登場していたようだ。ということは、もしかしてここがこの迷宮遺跡の最下層だったりするのか?まだ5階層なのだが、このダンジョンは随分と階層が少ないようだ。いや、難易度的なものを考えるとこの階層数で妥当なのかもな。どう考えてもこれまでに行った2つのダンジョンと比べて難易度が桁違いだもんな
『では侵入者。排除します。』
何が来るのか。またマシンガンか、それとももっと火力のあるものか、はたまた落とし穴とか罠系か。どこから何が来るのかよく目を凝らして周囲を警戒する。視界の端で何かが光を発し始めたのを捉えた俺はそこに目を向けた
瞬間、部屋中に莫大な光量と耳が壊れるような大音量の音が響き渡る
使われたのはマシンガンでも落とし穴でもなく、スタン攻撃だった。魔眼のおかげで視力がよくなっているうえで光を直視してしまったため俺の視界は完全に潰されてしまった。聴覚も通常通りには機能していない。つまり、今俺はかなりピンチである
まずいな、俺だけならどこから攻撃が来ても【影】で防げるとは思うが、ミカヅキはそうはいかない。恐らく俺と同様スタンを食らって視覚聴覚はまともに機能していないはずだ。攻撃を凌ぐことは難しいだろう
パンッと銃声が鳴り、感覚で避けた俺の頬の近くを風圧が通り過ぎる。危ない、ギリギリだったな。しかし、この状態でどこにいるかもわからないミカヅキを守ることはできるのか・・・?
「宿主、視覚が使えないんだろ?開放率を上げろ。ワタシがお嬢ちゃんの方を担当してやる」
「わかった、頼んだぞ」
開放率を再び60%までに上げる。どうなっているかはわからないが、これでミカヅキの方は大丈夫だろう
ガシャンと音がし、今度はマシンガンが撃ち込まれる。視覚不良のうちにとっとと殺そうという算段だろうが、残念。俺には奥義"籠る"があるにのだ・・・いや、今回はせっかくだからそれは止めて、魔眼の"未来視"を使って弾丸を凌いでみることにする
正面、右、左、背後。それぞれから撃ち込まれる無数の弾丸を、俺は回避行動をとったり【半影喰】を使ったりして凌いでいく。弾丸を捌き続けること数十秒、ようやく視界が平常に戻ってき始めて―――――――パシュンッという音が鳴る。階層の壁上方から発射さっれたいくつものロケット弾が視覚が戻ってきたばかりの俺たちに追撃と仕掛けてくる
こっちへ飛んできた数発のロケット弾は【影】を展開して防ぐ。ズドォンと【影】とロケット弾が衝突した音だ。勿論【影】にはなんのダメージもない
そうだ、ミカヅキはどうなった!?辺りを見渡すと、ケガも何もない無事そうなミカヅキがいた。よかった。しかしそこで非常に気になるものを見つけてしまった。
無事なミカヅキのミカヅキのその隣には・・・真っ黒な人型の何かが立っていた
はい、ということでマザーコンピューターなるものが出てきました。
Q.スタン攻撃って未来視でどうにかならなかったの?
A.はい、ごもっともで
Q.視覚が潰されても全周囲を【影】で覆えば弾丸防げない?
A.だ、だってそんな余裕綽々で防いでたら物語的に面白くないし・・・・・・
次回、アイツの大激闘




