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09 たった一人の話し相手と交わした約束

9話目です。今回はミカヅキ視点での話になります。

またシリアス回になってしまった···それでも読んでいただけたらうれしいです

 その魔物はとてつもなく強かった。私が使える中で最高クラスの炎魔法をなんなく跳ね返してきたのだ。私は蹴り飛ばされ体を木に打ち付ける


 「ぐうぅぅ・・・・」


 アシュラの攻撃を受けた際に負った傷がかなり深かったらしくいまだに修復しきれず、私はまともに動くことができない。そんな私に奴は近づき、止めをさそうと刀を突き出す


 そうか、私はここで死ぬんだ。この世界に生命を宿し、マスターと出会ってから数週間。いろんなことがあった。マスターと一緒に施設で生活したり、一緒に森へ散策に行ったり、一緒に戦闘訓練をしたり、一緒に日向ぼっこをしたり・・・。ああ、思い返してみれば、生まれてきてからのほとんどの時間、私の隣にはマスターがいたんだ。


 短かったけど楽しい人生だったな。あ、結局おいしいご飯食べられなかったや


 優しくて、少しめんどくさいとこもあるけど・・・。一緒にいて楽しい私のマスター。マスター(あなた)がこの先少しでも幸せになることを願います。あと、私のことを忘れないでいてくれるとうれしいな・・・


 ――――――ドスッ!!


「グフッ!・・・そんなことさせるかってんだよ!!」


 ・・・私の目の前にはマスターがいた。アシュラの突き出した刀はマスターの腹部を貫通し、私には届かずに止まっている


「マスター。なんで・・・」


 なんで・・どうして・・私がアシュラに殺される時間を使えば、マスターなら逃げ切ることは可能だったはず。それをどうして、戦闘のために作られたくせして、自らのマスターすらも守れないような私を・・・


「はっ!可愛い女の子を、体をはって助けるってのは、テンプレだろが。それに、お前が死んだら、誰が俺の話し相手になるってんだよ」


 マスターはそう言った。マスターは私を戦闘用の人形ホムンクルスとしてではなく、女の子として見てくれていた。そのことに、よくわからない何かが込み上げてくる


 これは、嬉しいという感情?でも、それだけじゃないような・・・


 戦闘中の危険な状況だというのに、ふとそんなことを考えてしまう。そのときだった。アシュラが炎を纏った鋭く尖った爪をマスターの目をめがけて横薙ぎにふるったのだ


 ――――グシュッ!!


「がっ!?がああああああぁぁぁぁ!!!!????ぐううううぅぅぅぅ!!!!!」


 マスターの目がアシュラによって潰された。マスターは視力を失くしたようでなにも見えないようだ


 

  ――――ドゴン!!


 アシュラが先ほどまで刀が刺さっていたマスターの腹部に強烈な蹴りを放った。マスターは吹っ飛んでいき、施設の壁に直撃した


「マスター!?マスター!!」


 私は急いでマスターに駆け寄る。修復しきってない傷が痛むが今はそんなことは気にしない


 マスターは重症だった。眼球は崩れ、刀が刺さっていた部分からは内臓が飛び出しかけている。出血も多く、何とか生きているといったかんじだった


 ――――――ザッ


 アシュラが私とマスターの前に立つ


「二人まとめて死ね」


 アシュラが私たちを殺そうと刀を振り下ろす。私はとっさに目をつむった


「っ!!」


 ―――ドスドスドスッ!!!


 いつまでたっても痛みはこない。あれ?死んでない??そう思い目を開けると


「グウゥゥ!!なんだこれは!?」


 アシュラは黒い何かに体を貫かれていた。その元をたどると、マスターの全身を薄く覆っている黒い・・・″影″のようなものだった


「グフッ!これは少しまずいな。いったん引くか・・・」


 そう言い、アシュラはここを立ち去った


「はっ!マスター!!」


 マスターを見ると、黒いものに覆われ、出血が止まっていた。なんで?この黒いものが原因?


「おい、お嬢ちゃん」


「!? だ、誰だ!」


「ここだ、お嬢ちゃんの目の前にある・・・。いや、形作ったほうがわかりやすいか」


 すると、マスターを覆っていた黒いものが一つに集まり、小さな、形の不安定なスライムみたいな黒い何かが現れた


「ワタシはこの宿主に支配されている″影″さ。お嬢ちゃんも知ってはいるだろう?それはともかく、早くしないとこの宿主、死ぬぞ?応急処置はしといたが、この場所だとそれ以上はちょいとできない。さっさと手術台にでも運びな」


 ″影″!?影というのは天界でマスターにとり憑いたというあの影だろう。しかし・・・


「なぜ、″影″が・・・?」


「詳しくはあとで話す。ほら、早くしな!!ワタシも消滅したくはない・・・・・・んだよ!!」


 そう言われ、私は慎重に、急いでマスターを運ぶ




 この施設は、生物を実験に使っていたため、手術台等の道具も残っている。私はその手術台にマスターを降ろす


「さて、お嬢ちゃん。今からこの宿主の損傷したところを修復する。ただ、流れ出た血と魔力は戻すことができない。そこでお嬢ちゃんから、血と魔力をわけてもらう。幸い、お嬢ちゃんの血は問題なさそうだ」


 これでマスターが治るというのならそのくらいなんの問題もない


「それじゃあ、修復を開始するぞ」


 再びマスターの全身を黒く薄いものが覆う。それと同時に黒い管のようなものが伸びてきて、私の腕に刺さる。血と魔力が吸われている感覚がわかる


「マスター・・・。こんなところで死なないでくださいよ・・。マスターは私に命を与えたんです。最後まで面倒は見なきゃいけないんですよ?・・・″お前が死んだら、誰が俺の話し相手になるんだよ″って、マスターが死んじゃったら私は誰と話せばいいんですか・・・。それにまだ、マスターにおいしいもの食べさせてもらってません。約束破る気ですか?一緒に・・おいしいもの食べに行きましょうよ・・マスター・・・」


 私はマスターに呼びかける。マスターとまた元気に一緒に過ごせる日々を願って・・・


 ・・・・・・


「おい、お嬢ちゃん。損傷したところの修復は終わった。血も魔力も問題ないくらいに回復した。これでもう死ぬ心配は無くなっただろう。だが、眼球だけは完全に破壊・・されていて修復することはできなかった」


 よかった。マスターは死なないんだ!・・・でも、眼球か・・・


「どうしたお嬢ちゃん?もしかして何か使えそうなものがあるのかい?」


 ・・・ある。情報収集クラッキングでこの施設のことを探ったときに見つけたもので、それは今も保管されている。だが、アレは重要な問題があるのだ


「・・・それは開発した人たちに”魔眼”と呼ばれていたもの。″視ること″に関しては最強といっていい。ただ、一度に入ってくる情報の量がとてつもなく多くて、普通の人間どころか改造人間である獣人や魔人でさえも莫大な量の情報を処理しきれず、脳の回路が爆発して死んでいる。だから、マスターにはとても・・・」


 ”無理だ”そう言おうとしたとき、影は言った


「なるほど。ならその″魔眼″を宿主に移植しろ」


「な!?だからその″魔眼″に脳が耐え切れなくて――――」


「お嬢ちゃん、ワタシを誰だか忘れたのか?そんな普通の人間やたかが改造されただけの人間なんかとは違う。ワタシは天界出身の『バグのくせにやたらと強い』って有名な″影″だぞ?そのくらいは余裕で処理できる。それとも、宿主にはこれから一切の光を見ることもなく生きて行けっていうのかい?まあ、お嬢ちゃんがそのほうがいいというのならそうしな」


「くっ!!・・・わかりました。魔眼を持ってきます。だけど、私に魔眼を移植できる技術はないです。だから魔眼の移植はあなたに頼みます」


「ああ、いいだろう」



 

 私は研究室内の重要物保管室から魔眼を取り出し、マスターのいる手術台へ運んでいく。本当に大丈夫だろうか。しかし、今はあの″影″を信じるしかない。私にはなにもできないのだから・・


「・・・持ってきたか。ほお、きれいな青色をした瞳じゃないか。じゃあ、それを宿主にはめるんだ。間違っても逆向きに入れないでくれよ?」


 私は向きを確認して魔眼をマスターに一つずつはめる


「それじゃあ神経を接続するよ・・・・・よし、つながった!これで、見えるように・・・!!!くっ!?た、確かにこれはすごい情報量だ。だけど、処理できないほどでは・・・。よし、少し慣れてきたな。だが、常にこの状態は宿主にもかなりの負荷がかかりそうだ。ふむ、宿主が全開状態に慣れるまでワタシがセーブを掛けておくことにしよう」


「み、見えるようになったのですか?」


「ああ、成功だ。あとは宿主が目覚めるだけだが・・・」


「ぐぅ!ううううぅぅ・・・」


「マスター!!!どうしたんですか!!??」


「うなされているようだな。まぁ、しかたないだろう。唐突な異世界転移にこんな危険なところに放り出され、視力を失うという恐怖まで。保っていた精神が崩れているのだろう。お嬢ちゃん、宿主をベッドに運んで、そばにいてやりな。そのほうがいいだろう」




 私はマスターをマスターの部屋へと運びベッドに寝かせた。マスターはまだうなされたりしている


「大丈夫ですよマスター。私が・・私がずっとマスターのそばにいますからね」


 私はマスターに守ってもらった。でも、次は私がマスターを守る


 二度とマスターがこんな目に合わないように、私がずっと、ずっとマスターのそばにいて守ってみせる



ということで、影が登場しました。果たして主人公はどうなるのか!?


次回、主人公がパワーアップします

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