80 枷
80話目です。今回も日曜日に投稿できなかったあああぁぁぁぁぁ・・・・・・。あ、どうでもいいことですが一昨日の25日で初投稿から1年が経ちました。ここまでダラダラ続けてこれたのも、こんな作品を読んでくれているみな様方のおかげです。ありがとうございます。そして2年目もダラダラとよろしくお願いします。
最初のフロアのボスを倒し、自動扉の空いた先にあった階段を下りて次のフロアへと向かう。下りへの階段しかなかったから、このダンジョンは下へと進んで行くタイプなんだろう
というか、扉が自動なんだしてっきりフロアの移動はエレベーター的なものを使うのかと思ったら普通に階段なんだね。なんでここはアナログなんだろうか。敵の侵入を遅らせるためか・・・?
階段を下りきって次のフロアへと続く扉の目の前へと立つ
「・・・・・・」
あれ?開かないだと?別の扉は開いたのにここだけ開かない?もしかして故障だったりするのか?どれにしても扉が開かないのならこのダンジョン探索を諦めるか・・・いや、無理やり開けてしまうという方法も——―――――
「・・・あ、マスター。そこに扉の開閉ボタンらしきものが」
この扉は自動じゃないのかっ!通ってきた扉でことごとく手動で開けようとして少し恥ずかしい思いをしたから今度こそはと目の前で待ち構えたというのに、半自動なんて微妙な扉の設置をしやがって!!
まあいいだろう。とりあえずこのボタンをおして扉を開け——————————いや待てよ?これまでの通りで行くと、今回もまた扉を開けて足を扉から出した瞬間に何かに襲われるはずだ。今回こそはそうはならない
扉の前からボタン近くの壁際まで移動し、壁を背に、右手をボタンの上に軽く置いて構える。カチッと言う音と共に軽く沈むボタン。そして扉が横にスライドして開く
扉が完全に開ききっても何かが突っこんでくることは無かった。ということはこの階層にはフライングしてくるような落ち着きのない何かしらがいない。もしくはその何かしらは俺たちが姿を現せないと突っ込んでこないということになるな
扉の外を確認してみるか。ドッキリ番組の如く顔を覗いた瞬間に横から"バァーン!!"とか来られたら怖いな。【魔眼】を使っておこう
俺は魔眼を発動させ慎重に扉から顔を出して外を確認す———————
大量の弾丸が俺に向かって乱射される未来が視えた
「ッ!?!?」
右手で壁を思い切り押し体を後ろにそらし、後退する。その瞬間、扉の向こう側から俺がさっき視たとおりに弾丸の豪雨が降り注いだ。危ない、あのままだったらハチの巣にされるところだった
だが、ハチの巣の運命を逃れたのはいいものの、後退する際により後ろに逃れようと【身体能力強化】を発動して思い切り踏み込んだため、勢い余って壁に思い切り頭をぶつけた。痛い・・・
しかし銃弾か・・・。もはやフライング以前の問題になってきている気がする。リスポーンキルならぬスタートキルだ。開幕早々に死亡確定装置じゃないか。この1階層のボスがオルトロスといい、2階層のスタート即行がほぼ即死装置だったり、ダンジョン難易度が異様に高くないか!?挑戦者にクリアさせる気ないだろ絶対!!
「マスター大丈夫ですか!?」
頭を押さえて蹲る俺にミカヅキが心配をかけてくれた。ただ、これはどれについての大丈夫ですかだろうか・・・?銃弾に当たりかけたことか、後頭部を壁に強打したことか、それとも両方か
「ああ、なんとか大丈夫だ」
まあ、こう答えておけばどれについてでも返答にはなっているだろう
「そうですか、良かったです。でも今のは、銃弾ですか?あんなのを撃ち込まれたら死んじゃいますよね。このダンジョン、積極的に殺しに来ていますね」
どうやらミカヅキも同じようなことを思っていたようだ
「ここをどうやって突破しようか。【影】で銃弾を防ぎつつ通過するしかないということか・・・?」
「マスター、一時休憩にしませんか?オルトロスを倒してそのままで来ていますし、少し休憩しましょう」
そうか、オルトロスを倒してまともな休憩を取らずに2階層に挑戦するところだったのか。多少なりとはいえ、ボス戦で疲れてはいるだろう。それを無視して進めば、どこかで俺たちに被害があったかもしれない
「そうだな、じゃあいったん休憩にするか」
階段で休憩って、【エイルムの塔】に挑戦した時もやったな
「やあ、宿主。ちょいと話がある」
俺たちが階段に腰かけ座って休憩していると、カゲロウが何やら大事な話とやらがあるといって来た
「話ってなんだ?あ、それよりあの子はどうなった?」
「命に別状はないが・・・、左腕がダメだったな。その他は大丈夫だ。宿主がエイルムで買わされた回復薬も使ったりしてな。あの回復薬、値段の割には質が良かったな」
そういえばあったなそんなもの。まさかこんなところで役に立つとは・・・。何が何処で使えるようになるかはわからないものだな。だがそうか、左腕がダメになったか
「今はまだ意識も戻りそうにない。継続して治療することになるが、死にはしないだろう」
意識はまだ戻らないか。でもカゲロウが継続して治療してくれるなら良かった。勝手な考えだが、あの子の命が潰えなくて良かったと思う
・・・さらに勝手な考えだが、ケモ耳を触ってみたいという俺の願望が叶いそうだしな。死んでてもケモ耳はある?いや、俺はどこぞの童話の王子のように死体愛好家じゃないんで
「しかし、お前がこうまでしてあの子を助けてくれるとはな。・・・まさかだけど【影】の中で食ってたりしないよな?」
「いやいや、そんなことはしないさ。狐娘を助ける理由としては・・・単純に興味があったからだな」
興味ねえ。やはりカゲロウも獣人のケモ耳が気になるということか。・・・違うか
「そう、そのあたりについての話をしようと思っているんだ。狐娘を【影】に入れた時に気づいたのだが、この娘、両手足と首に枷のようなものがついていてな」
枷?異世界で少女で獣人で枷となると、思い当たるのは奴隷とかと呼ばれる人だな。ということはこの狐の少女は奴隷ってことか?一人でいるということは主人なんかに当たる人とはぐれたか、若しくは逃亡してきた、とか・・・?
「この枷を調べてみたんだが、【魔力制限】【場所探知】【破壊耐性】などなどいろいろ機能が積まれていたんだ。ああ、機能は面倒だと思ったから喰ったぞ」
おおぅ、機能盛り盛りだな。しかしカゲロウもさすがだな。道具に付けられていた機能を喰うなんて製作者もビックリものだぞ
「それでこの枷の中で一つ気になる機能があってな」
「それは?」
「【魔力制限】だ。5つの枷全てに魔力制限がついているんだ。だがそれでもなおこの狐娘から感じる魔力量は常人より少し少ない程度だ。内包する魔力は相当なものだと思ってな、調べてみたんだが・・・すごいぞ宿主。魔力量だけで言えばお嬢ちゃん以上だ」
ミカヅキよりも魔力量が上!?それなら確かに5つも魔力制限をかけられていてもおかしくないかもな。枷をかけた側の奴らも相当警戒したのだろう
「その有り余る魔力を無理やり抑え込められているのも狐娘の状態が悪い原因の一つにもなっていたりしたんだが・・・まあその機能は喰ったし狐娘から漏れ出した魔力はワタシが吸収していたりするから問題はないが。宿主、さっき【身体能力強化】で後ろに下がった時壁に頭をぶつけただろ?あれ、狐娘の魔力の分普段より魔力が込められていて威力が若干上がっていたぞ」
それも原因になっていたのか・・・。そういうのは言ってくれないと、頭ぶつけたの地味に痛かったんだからな!?
「で、この異常な魔力量なんだがどうも先天的なものじゃない気がする」
「先天的じゃない?ということは何かの影響を受けてとんでもない魔力を持ったと?」
「ああ、どうにも違和感があってな・・・。ああそうだ、王都【メルーセス】で魔物の大進行があっただろ?あの時の異様に強くなった魔物共と同じような、そんな印象だ」
「っ!?ということは、この子は誰かに人体改造されたってことか!?」
「可能性は高いな」
獣人の少女、両手足と首の枷、異様な魔力量、人体改造の可能性、メルーセスに現れた魔人族。これはますます魔人族の国に行ってみなきゃならなくなったが・・・なにやら面倒なことになってきた気がしてならない。俺は獣人少女のケモ耳をモフモフしてみたかっただけなんだがなあ・・・
「詳しい話は当の本人の意識が戻ってきてからだな。それまでよろしく頼むぞカゲロウ」
「ああ」
気になることが一気に増えてしまったが、取り敢えず俺たちはこのダンジョンの攻略を進めるか。まずは目の前の乱射装置の突破だ
はい、ということで狐少女に関するお話が少し出ました(←ただし狐少女本人は登場しない)。ちょくちょくと布石を打っていきます。ただ、先はまだ長そうです・・・・・・
次回、弾丸の豪雨を何とかして突破していきます




