表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/102

71 情報得られず

71話目です。とりあえず今回で【ラム国】偏は終わりですね。いやー長かった。まさか年越してしまうとは思わなかった。

 簀巻きにした魔族の女性はその場に放置し、俺は【カゲアソビ】で小人さんを作り、同じく【影】の鳥に小人さんを乗せてミカヅキたちがいるところまで運ばせた。そして小人さんを介してミカヅキと通話。取り敢えずギルドマスターと騎士団長さんにここに来てもらうように伝えてもらった


 連絡手段に小人さんを使わずとも鳥だけで十分だったのではないかって?確かにわざわざ小人さんを作らなくても鳥で通話をすることもできる。だが、鳥に乗って小人さんが飛んでくるって、なんか良くない?別にそうでもない?あ、そうですか



 しばらくして、ミカヅキとギルドマスターと騎士団長。あとファスタさんと騎士団の人が半数近くと冒険者たちがぞろぞろとやってきた。騎士団の人たちは魔族の捕獲とかで来たんだろうけど、冒険者たちは絶対野次馬根性だろうな


 ちなみに現在も簀巻き状態の魔族の女性だが、驚くほどに大人しく巻かれている。最後の抵抗くらいしてくるのかと思って警戒してはいるものの、その気配は全く無し。どうしようもないと諦めたのか、先程のカゲロウとの戦闘で負ったダメージが思いのほか大きくて行動する気にもならないのか・・・。どちらにせよ、面倒なことをしてくれないのでありがたい


「マスター、お疲れ様です」


 足早に駆けてきたミカヅキから労いの言葉を受ける。今回俺ほとんど何もしていないんだけどな


「おっと、お嬢ちゃん。今回はワタシが活躍したんだが・・・?」


 カゲロウが目ざとく、いや、耳ざとく?反応した。というかそもそもコイツに目とか耳とかってあるのか?


「そうでしたね。お疲れ様ですカゲロウさん。この数の魔物に対して一方的な戦闘。すごく魅せられました」


「・・・ああ」


 自分で褒めろと言って、いざ褒められたらそっけない返事だな


「・・・もしかしてカゲロウお前、素直に褒められて照れてやがんのかぶぇぁ!?」


 煽ったら【影】で思い切り腹を殴られた。痛い・・・鳩尾を的確にやられた・・・痛い・・・


「よう、お疲れさん」


 鳩尾へのダメージに苦しんでいると、ファスタさんがこっちに来た


「しっかし、ホントに一人で片づけちまうとはなぁ・・・。度々そうじゃないかと思っていたけど、やっぱりお前、おれよりも遥かに強いのな」


「あー、はは。そんなことは・・・」  


 だってこれやったの俺じゃなくてカゲロウだもんね!!


 "俺"とファスタさんで闘った場合、負けないとは思うが、"圧倒的勝利"なんてのは微妙なところだ。対魔物に関してはまだしも、対人間となるとファスタさんの方が経験が多いはず。ファスタさんの戦闘技術に対抗して勝利するためには、俺は【影】を使ってのパワーゲームに頼るだろう。そうなった場合、勝ちは勝ちだが"圧倒的完全勝利"とは何か違うような気もする。殺し合いの時はそんなことも言っていられないが


 というかそもそも俺はファスタさんとの決闘も殺し合いも予定なんかしていないし、そんなことをする気は全くないんだけどな


「おいおい、年上を立てようとするのはいいが、謙遜が過ぎると嫌味になるからな?」


「そう、ですね。ありがとうございます」


 まあこれやったの俺じゃなくてカゲロウだけどね!!


 ・・・これ思うの何回目だ


「おう!じゃあ今日は近くの美味いラーメン屋にでも・・・いや、食材を買って帰ってユユに美味い飯でもたくさん作ってもらうとするか!今夜はお前らの対魔物大軍勢との戦勝と王都救ったパーティーだな!!」


「いいですね!」


 今夜は楽しくなりそうだ。よし、早速帰ろう今すぐ帰ろう王都で食材を買ってLet's帰宅!!


「お主ら、もういいかの?」


 完全に帰宅する気でいた所に声がかかる。何だよ誰だよ魔物は片づけたし俺はもう帰るんだよお前も一緒にLet's帰宅するか?と思いながら声の主を見れば、そこにはギルドマスターが・・・


 そういえば俺が呼んでたんだっけ。というか魔族の女性放置しっぱなしだった・・・


「ワシらお主に呼ばれたんじゃが・・・ああ、遅れたが魔物の殲滅ご苦労じゃった。全く、お主らは何者じゃ・・・?」


 これやったの俺じゃな・・・もういいや面倒くさい


「まあ俺たちがどうのこうのは置いておいて、魔族らしい人を掴まえたんですが、どうします?」


「魔族か、よく掴まえきれたのう・・・。ふむ、この魔族の処遇に関してはワシら冒険者ギルドではなく・・・」


「わたしたち王国騎士団が引き取ろう」


 騎士団長さんが騎士の人を引き連れてやってきた。取り押さえる道具なのか、縄とか手錠とかを持っている。"視た"ところ、魔法を封じ込める機能があるらしい。定番道具だな


「この魔族は騎士団本部へと連行し、尋問することにしよう。今回の件について何かわかることがあるやもしれんな。貴様ら、この魔族を捕らえよ!!」


「・・・尋問なんかしなくても私のスキルならいろいろ得られますけどね」


 そういえばミカヅキの【情報収集クラッキング】ってそんなこともできたっけな。便利能力だよな・・・


 騎士団長さんに命じられ拘束道具をもった騎士団の人たちが魔族の女性に詰め寄っていく


 と、その時、今まで静かに簀巻きにされていた魔族の女性が不意に顔を上げ、瞳孔を開き口角を上げてニィッっと笑った


 あ、これマズパターンのやつじゃない!?


「ッ!!全員退避ぃぃぃ!!!!」


 騎士団長さんも危険を感じ、この場に集まってきた人に大声で退避を叫ぶ。瞬間、ドォン!!!という大音量と共に爆発が起きた







 だが、誰もかすり傷一つもつくことは無かった。理由はこれまた至って簡単。俺が防いだからだ


 騎士団長が大声で退避と叫んだ時と同時に、俺は簀巻きにするために使っていた【影】をそのまま利用し【影の食卓部屋ブラックボックス】を展開、魔族の女性を包み込んだ。それと同時に【ブラックボックス】内で爆発が生じた。十中八九魔族の女性だろう


「・・・む?何も無かった・・・?おい、そこの冒険者の少年。もしや貴様が爆発を防いだのか?」


「ええ、一応。でも爆発を止めたわけではなくこちらに被害が来ないように防いだだけですから、もしかしたらあの魔族の人は・・・」


「そうか、助かった。礼をいう。あの魔族を閉じ込めたのはその黒い箱の中か?開けてもらえるか?」


「わかりました」


 俺は【ブラックボックス】を解除する。その中には、誰もいなかった


「死んだのか?いやまさか逃げられた・・・?」


「いや、死んだよ、宿主」


 カゲロウが告げる


「今のは自爆による大破壊を狙ったものだったようだ。爆発と同時にあの女の身体は吹き飛んだ。本来ならそこからさらに周りを巻き込むのだろうが、生憎それは宿主が張った【ブラックボックス】に阻まれた。爆発の威力は【ブラックボックス】内にだけにとどまり、余計とあの魔族にダメージが入るだけだった。こんなところだな」


 なるほど、大ぜいを巻き込む自爆だったということか・・・。というか自爆までするって、これはもう今回の件の主犯者ということでほぼほぼ決定だな


「くそっ、やられた。情報漏洩をしないためか!!」


 騎士団長が悔しそうに歯噛みをする。せっかくの情報元を失ってしまったのだから結局敵は何を目的でこれを仕掛けたのかが分からず終いになってしまう。いや、もしかしたらミカヅキがスキルを使っていたならば!そう考え、ミカヅキに視線を向ける。が、ミカヅキは少し気まずそうな、申し訳なさそうな表情をする


「・・・余裕だと思って何もしていませんでした。さすがに跡形も無いとなると、スキルでも及ばないです」


「つまり情報は・・・」


「・・・すみません」


「いや、お前が気にすることは無いさ」


 もともと魔族はたまたま発見しただけだったからな。俺にとっては何かしらの情報が得られれば御の字程度のものだった。王都に住む一般人に向けてなんて極悪非道なことを!みたいな正義感とかではないが、何がどういうわけなのかを知っておけば、今後自分たちの身を守る上で下手を踏まない可能性が高くなるはずだ

 

 だが、この【ラム国】はそう軽く考えてもいられない。この魔物の大進行が自然的なものではなく人為的なものであり、今しがた自爆した魔族の裏にも糸を引いている者がいるかもしれない。さらに言えば、事件の犯人が魔族なのだから、国家侵略の可能性がある。自爆され情報を得られなかったのは大きな痛手だろう


「上に報告して、早急に真相の調査と防衛戦力を強化に取り掛かる必要があるな・・・」


 頑張れ、騎士団長さん!!俺には応援することしかできないし、応援しかする気もない!!



 こうして今回の魔物大進行はいろいろと謎を残しながらも片付いた。個人的には思い切り体を動かせたし、魔族にも初めて会うことができたのでそこまで悪くはなかった。まあ、魔族は会ったというより遭遇した。それで話すことも無く死んじゃった。というものだったけれど。・・・魔族、か


「・・・行ってみるかな。魔族の国」



はい、というわけで自爆してしまいました。ここらへんの話、もっと主人公が活躍するつもりだったんだけどな・・・。まあ誰も主人公に期待なんてしていないから別にいい—————カチッ☆ ・・・カチ?え何このドクロのスイッt——————





ゲッホ、ウェッホ。なんで自爆スイッチがあんなところに・・・

次回、別話ですェッホ、ゲッホ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ