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70 ソースは足りた

70話目です。・・・新年あけましておめでとうございました。遅いのはわかっているんです。わかっているんですよ。でも・・・3が日にやる気を吸い取られていました。お、恐るべし3が日ッ!!

 見渡す限りの大草原に所狭しと散らばり尽くす魔物の死体、死体、死体。まさに死屍累々と言ったところか。息を吸い込めば、爽やかな大地の香りなどではなく、どろりとした血の生臭さが鼻腔に漂ってくるだろう


 不快なこと極まりないが、これで王都が壊滅せずに済んだ。及第点どころかほぼほぼ満点じゃないだろうか。これ、特別褒賞とか貰えたりしないかな?やったの俺じゃなくてカゲロウだけど。・・・傍から見ればたいして変わらないからいいか


「しかしまあ、本当にお前だけで全滅させるとはな・・・」


「おいおい宿主、何度も言うがワタシは一応天界の者だぞ?神どころか天使にだってこれくらいは余裕でできるだろう。なら、ワタシだって制限がかかっていてもこれくらい何てことなくできるってことさ」


 やっぱすごいんだな、天界の人たちって。そりゃあ神様とか天使とかだもんな。それにしてもやはりカゲロウコイツは器用なマネをするな。自分も動き回りながら無数に伸ばした【影】をそれぞれ独立させながら動かすなんてなあ・・・


 【影】が変化した武器の形状は様々だったので、魔物に付けられている傷も様々だ。あっちの方は身体がスッパリと斬れているから剣か、大鎌、そのあたりだろうな。あっちは身体の一部がぐちゃりと潰れているのからハンマーか何か鈍器系の武器だろう。・・・あの潰れたとはまた違う、破裂したような死体が転がるあそこらへんはピコピコハンマーの仕業で間違いないな。うん


 さて、それじゃあ魔物の討伐も済んだことだし、カゲロウにはまた戻ってもらお・・・ん?何だあれ?鳥・・・じゃない、人・・・が2人?人らしき何かしらが、宙に、浮いてる!?


「おいカゲロウ!!あっち見ろ!違うそっちじゃない!王都を背に2時の方向!!」


「・・・む、何か飛んでいるな。人型・・・か。・・・宿主よ、あれはもしかすると"魔族"かもしれんぞ?」


 魔族だと?確かによく見てみれば、人型、翼のようなもの、フードをかぶっているため角があるかは良く見えないが、まさに物語なんかに出てくる魔族や悪魔と称されるソレの外見に似ている


 しかし魔族か。いかにも今回の犯人臭がするな。・・・勝手な決めつけだが


「とりあえず掴まえていろいろ聴いてみようぜ」


「なるほどO・HA・NA・SHIか。面白いことが聴けそうだ」


 お話な!?穏便にいけよ!?


 カゲロウは先程俺がコカトリスとの戦いで使っていた、先端部分がアンカーとなっている【影】のワイヤーを魔族らしき者たちに向かって射出した。高スピードで射出されたワイヤーはどんどん飛距離を伸ばしていく


 高速で迫りくる【影】のワイヤーに気づいた魔族2人は驚き、回避行動をとろうとするが・・・、残念ながら避けきれず、片方の魔族の腹部を貫通、アンカー部分が展開し体を囲い込む


「まず1人目、捕獲」


「捕獲。じゃねえよ!?何で腹に風穴開けちゃってるの!?お話どころかO・HA・NA・SHIすらも通り越した行為だよ!穏便さが遥か後方だよ!!」


 【影】のワイヤーは巻き取られ、隣に腹に穴が開いちゃっている魔族が雑に置かれる。仰向けに置かれているため、フードの中の素顔が見える。どうやらコイツは男のようだ。年齢は、見た目20歳半ば辺りといったところか


「そう言われても、ほぼ確実に当てられる場所がそこくらいしか思いつかなかったのだ。手や脚などは狙いが定めづらい。1発逃せば次弾も避けられる可能性がかなり高い。・・・だが確かにやりすぎたな。これでは事情聴衆もできない・・・か」


 魔族の男は、ひゅー、ひゅー、と細い呼吸を繰り返す。意識ももうだいぶ無いようで死ぬ寸前だ。というか死ぬだろ、これ


「しかたない、もう一人の魔族の方に話を聞くか」


「もう一人の方って、かなり遠くまで逃げられてるけど、ワイヤー届くのか?」


「いや、ワイヤーは使わない」


「ならどうするんだ?」


「こうする」


 カゲロウは【影】を再び樹状に伸ばしていく。伸びた【影】はそれぞれ死に倒れている魔物を"喰い"はじめた


「・・・情報ソースが足りないな。少し集める効率が悪いか。このままだと本当に逃げられ・・・あ、丁度いいのがいたではないか」


 顔をすぐ隣で倒れている今にも死にそうな魔族の男へと向ける。そして


「いただきます」


 【影】が男を喰った


「あ、お前止め刺しやがったな!?」


「宿主よ、今の男は今回の魔物強襲騒動の犯人だ。たとえワタシが喰わなくても、いや、腹に風穴を開けず無傷で掴まえていたとしても、きっとこの国が断罪していただろう。異種族であるなら尚更だ。結局死は免れなかっただろう」


 そう言われてしまえば何とも言えな・・・まて、そういえばまだ魔族の男が犯人だとは確定していなかったぞ!!これ、男がシロだったときどうしようか・・・。どうにもできないな・・・


「さて、これで十分だろう。・・・ハッ!!」


 カゲロウが力を込めると肩甲骨あたりに何かが集まっていくような感覚が伝わる。そして【影】が盛り上がり、やがて真っ黒な翼が出来上がった


「翼が生えた!?」


「ああ。もちろん装飾としてのものではない。お嬢ちゃんと同じ、"飛ぶ"為の翼だ」


 軽く地面を蹴り飛び跳ねる。すると足は再び地面に着かず、空中に留まる。すげぇ、飛んでる!!


「っと、新しい器官というのは、動かしづらいな」


 翼を動かし、バランスを取る。やはりカゲロウでもいきなり新しい器官を動かすというのは難しい物なのだろうか


「よし、慣れた」


 そんなことはなさそうだった。もう体も安定しているし・・・


「飛ばして行くぞ!」


 翼を1回、大きくはためかせ前方へと進む。高度もある程度上げつつさらに速度を上げながら飛んでいく。体を流れていく風と眼下を流れる景色に気分も高揚していく。この翼、自分で動かして飛んだらもっと気分いいだろうな・・・。まあ自分で飛ぶのは後からやればいいか


 風を感じているうちに、離れていたもう一人の魔族との距離がかなり縮まっていた。よし、もう少しで追い付く!


 そして魔族に追い付いた。が、何故かそのまま追い越してしまった


「少し速度を出し過ぎたな。止まれず追い越してしまった」


 車は急に止まれないとかそういうやつですかね?


 空中でブレーキをかける。ある程度速度が落ちたところで余った推進力を利用してターン。前方に魔族がいるような位置取りをし、狙いを定めて再び前進


 飛んで逃げている魔族も俺たちを敵だと認識したようで、どうにか撒こうと飛行進路を変えるがカゲロウも逃がさぬように進路上に移動していく。その間も距離は縮まっていく


 逃げ切れないと思った魔族は、空中に留まり迎撃する構えをとる。一方カゲロウは止まるどころかさらに加速し魔族に迫る。そして一気に魔族の手前まで接近したカゲロウは勢いを殺すことなく体を捻り1回転。一瞬反応が遅れた魔族の腹に回し蹴りを叩き込み、振り抜く。魔族は王都方向へ向かい思い切り吹き飛んで行った


「・・・また死んでないよね?」


「思い切り蹴りはしたが死んではいないだろう。ギリギリで腕で防御をとられたからな」


 飛んで行った魔族を追い、俺たちも来た道を戻っていく


 魔族は魔物の死体広がる草原に落下。大きく2回ほど撥ねて地面を転がり、カゲロウが最初にガトリング砲をぶっ放していたところで止まった


「っつ、かはっ。はぁ、はぁ、はぁ」


「ほう、あれだけダメージを受けてまだ意識があるのか。大したものだな」


 苦しそうに呼吸をしながらもこちらを睨んでくる魔族。先程確かにカゲロウの蹴りを防いだようで若干変な方向に曲がっている腕を押さえている


 あれ、この人女性だ。何でわかったかって?それは簡単、胸があったから。脱げたフードの下の素顔も女性らしいもので、先程の男と同じくらいの年齢の顔立ちだ。・・・さっき翼を生やすために取り込んだの、あの男の人じゃなくて、こっちの女の人の方が良かったな・・・


「ふう、ワタシはもう疲れた。宿主よ、交代だ。戻してくれ」


 あ、交代?今このタイミングで?まあ、今回はカゲロウがだいぶ活躍してくれたしな。しっかりと休んでいてほしい。・・・アイツいつも休んでいるようなものか


「支配率変更、40%から75%」


 『支配率を40%から75%に変更します』


 体の感覚がしっかりとしたものに変わっていく。それと同時に俺を覆っていた【鎧影カイエイ】も霧散するように消えていく。先程までの感覚に少し慣れてしまったせいで、自分で自分の体を動かせるようになったのに違和感を感じてしまう。感覚を戻すため、一通り手足をぶらつかせたり、両手で握ったり開いたりを繰り返す


 感覚を取り戻したところで次の問題にとりかかろう


 この魔族の女性、どうやって持っていこうか・・・


 尋問するにしても、やはりギルドマスターや騎士団長さんなんかがいた方がいいだろうし、あの人たちも聴きたいことはあるはずだ。だがそこで問題なのが、この人をどうやって向こうまで持っていくかだ。体はボロボロだが、目は死んでいないッみたいなかんじだし、俺が直接運んで刺されたりしないだろうか。・・・簀巻き状態にして【影】で小人さんとか使えばいいか


「いやそもそもギルドマスターたちにこっちに来てもらえば済む話か」


 でもこの人は暴れたり逃げないようにしないとな



 とりあえず女の人は簀巻き状態にしておくことにした



はい、というわけで結局この章終われなかった!!まあ次の行き先はだいたい予想がついたとは思いますが・・・


次回、これでこの章が終わるはずです

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