67 空中戦
67話目です。腸炎が流行っているらしいですね。気を付けないと。そういえば心なしかお腹の調子があまり良くない気が・・・。まさか、腸・・・炎・・・?(ガクガクガクガク)
コカトリスに向かって突撃を仕掛けようとしていた冒険者と騎士団の踏み出した足が止まる。飛んでいたコカトリスたちも突然の出来事に進行を止めていた
何故先頭のコカトリスは唐突に地面に突っ込んだのか。答えは簡単
そう、俺がやりました
何でって?そりゃあ、俺もそろそろ何かしたかったからだよ!!
ギルドではファスタさんがカッコよくエビに突っかかりに行くし、ミカヅキがエビぶん殴り倒しちゃうし、そのエビは魔物に先制攻撃を仕掛けるし、その上ほかの冒険者から貶されながら尊敬されるし、ギルドマスターと騎士団長もカッコよく喝を入れるし、俺ここまで出番なしじゃん。空気じゃん。エアーじゃん
というかそもそも、騎士団やギルドマスターはどれほどの実力かはわからないけれども、今ここにいる冒険者の中で一応現状トップの方の力を持つBクラスのエビの攻撃が全然効いていないんじゃ、俺かミカヅキが出るしかないじゃん?じゃあ、俺が行くしかないよね?
とりあえず1体沈めたことにより、コカトリスたちは警戒して進行速度は低下している。魔物だし、イッちゃってるような顔をしてるから馬鹿みたいにそのまま突っ込んでくるかと思ったが、そこは野生に生きる本能故か。このうちに俺も一旦皆の所に戻る
「・・・マスター、何一人で突撃しているんですか」
「だって、いい加減俺も何かしたかったし・・・」
「マスターが全部やっちゃったら私の分が無くなるじゃないですか!」
あ、心配してたのそこなんだね
「じゃあ、半分に分けよう。あの群れのここから見て右半分がミカヅキ。左半分が俺。これでどうだ?」
「わかりました、それでいいです。・・・あ、でもマスター、相手は空中にいますけどそうやって闘うんですか?私は飛んだりできるので問題は無いですが、マスターって飛べませんよね?というかさっきどうやってコカトリス地面に叩きつけたんですか?」
「まあ、その点は策があるってことだ。問題は無い。よし、それじゃあ・・・行くぞっ!!」
俺とミカヅキがコカトリスの群れに突撃しようとしたその時、背後から
「あの、お主ら・・・」
と声がかかる。振り返ってみてみると、ギルドマスターが理解が追い付いていないといった顔で俺たちを見ていた。ほかの冒険者や騎士団長をう含めた騎士団の人たちまで同じような顔だ
「あー、お主ら、えっと」
何となくこの話長くなりそうだなと思った俺はギルドマスターに向かい
「行ってきます!!」
の言葉と共に満面の笑みとサムズアップをお届けして素早くこの場を駆けだした
「ギルドマスター、まあ、あいつらなら大丈夫だと思いますよ。Bクラスの俺が保証しますよ。それに見たと思いますが、あっちの少女はウィリチリを一発で殴り倒していましたし、少年の方も同じくらい強いですから」
「そうか・・・。そうならいいんじゃが・・・。何かワシ、さっきから見せ場取られてないかの・・・?」
ギルドマスターの呟きに対し、皆は何も言わずただ顔を前に向けるだけであった
さて、コカトリスを倒そうか。と言っても相手は空中にいる。王都を攻撃するためにかそこまで高高度を飛んでいるわけではないが、10メートル近い高さはさすがに【身体能力強化】を使ってもなかなか難しいだろう。ミカヅキはさっき"それじゃあ行ってきますね"と翼を生やして飛んで行ってしまったが、もちろん俺に翼は生えていない。カゲロウにも無理って言われたしな。ではどうするか
まずスキル【身体能力強化】を使います。
次に迫りくる敵に向かってダッシュします。
適当に速度が出たら敵に向かい跳躍します。
ある程度の高さの所で【影】をワイヤーのように射出し、敵に突き刺します。
この時のポイントとして、跳躍時の速度がなるべく落ちないように最高到達点に来る前にワイヤーを射出します。
射出した【影】のワイヤーを巻き取るように勢いよく収縮していきます。これで再び速度を出します。
ワイヤーを収縮しきったら敵に突き刺していたアンカー部分を膨張させ、破裂させます。この際破裂の他に"棘状にして突き刺す"や、"刃状にして切り刻む"などでも構いません。
仕上げに地面に叩き落してもいいでしょう。
そして自身も落下する前に再び【影】のワイヤーを別の敵に射出し、乗り移ります。
そう、つまり飛べない俺はゲームなどで見かけるワイヤーアクションを真似てみたのだ。やってみたかったんだよねワイヤーアクション。こう、ワイヤーを駆使して空中を自在に動き回る、みたいな。
でもこれやってみるとかなり難しい。相手も動き回るし、空中戦が専売特許みたいな奴らだからたまにワイヤー外すし、【身体能力強化】を使っているとはいえ空中をワイヤーで引っ張られながら移動するってのは体に負担もかかる。何よりバランスがとりにくい。自在に使いこなすには相当な訓練が必要だな。やっぱりこんなものを使いこなせちゃうゲームとかのキャラクターってすごいんだな
4体目のコカトリスを屠り、右側を担当しているミカヅキを横目で見てみる。エネルギーの消費が激しいためか、翼を常時展開しているわけではなく俺と同じようにコカトリスに飛び乗りながら戦っている。炎、風、氷など各種魔法を放ち、愛刀の【月見酒】を振り回し、次々とコカトリスを地に落としている
「俺も負けてられねえな、—————ッと!」
斜め右前方にいたコカトリスが翼を広げ、その羽をマシンガンの如く飛ばしてくる。武器として飛ばしてくるあたり、直撃したら、"ふわっ、なにこれ柔らかい"みたいなことにはならないだろう。普通にハチの巣とかになりそうだな
俺は跳躍&ワイヤー射出ですぐさま被弾範囲外にいたコカトリスに飛び移る。さっきまで俺が乗っていたコカトリスは仲間の羽マシンガンに対応できず、直撃。地面に落ちていった
フレンドリーファイアありがとうございました。やっぱり馬鹿だなコイツら。味方諸共攻撃してどうすんだよ。いや、もしかしたら"味方"っていう認識は無いのかもな
乗り移ったコカトリスも【半影喰】で首を撥ね、そいつを足場に空中へジャンプ。ワイヤーを射出し、1体のコカトリスの首元に突き刺す。危ない、成功してよかった。これ外していたらそのまま10メートル下の地面まで落下していたね。少しスリルを求めてみたがちょっと心臓がキュッとなった
突き刺したワイヤーを縮めず、振り子の要領で弧を描きながら移動。反対側にいた別のコカトリスにワイヤーを射出し、乗り移る。振り子の支点に使ったコカトリスはアンカー部分を膨張させて破裂の首ちょんぱ、いや、首ちょんパァン!しておく
「楽しそうなことしているな宿主」
乗り移ったコカトリスを屠りワイヤーでの空中移動中カゲロウが話しかけてきた
「あれ、起きてたのかカゲロウ」
「ああ、今起きた」
「本当によく寝てるよなお前」
「まあ、寝る子は良く育つというし、ワタシも成長するためには寝ておくべきだろう」
いやお前は不定形で実体なんてないんだから寝ても育たないだろ。むしろどこが育つんだよ
「それよりまあ、なあ宿主。ワタシも手伝ってやろうか手伝ってやるぞ手伝わせろ」
どんどん強制力増してんじゃねえかよ!!
「いやいいって、久しぶりにばーっと動きたい気分だし」
「ワタシだってばーっと動きたい!いいではないか減るもんじゃあるまいし」
減るわ!!お前が手伝ったらコカトリスどんどん減ってくわ!!
「ほら最近ワタシやることなくて【影の食卓部屋】で食べるか寝るかしかしてないからそろそろ動きたいと、あ、宿主、上」
カゲロウに言われ上を見ると、上空に太陽をバックにして滞空する1匹のコカトリス。陽の光が後光のようになっていて敵ながらカッコイイと少なからず思ってしまった
っとそうじゃねぇ!!
緊急回避。俺は隣のコカトリスに飛び移る。次の瞬間、上からコカトリスが錐揉み回転をしながら落下、先程まで乗っていたコカトリスに突き刺さる。あぶねえ、ドリルかよ
すると俺の意思とは関係なく【影】が何本か伸びていき、ドリルコカトリスとそれに突き刺されたコカトリスを突き刺す
「やっぱり手伝ってやろうか、宿主?」
「はっ、あんなのお前に言われなくても気づいてたわ」
軽口をたたきあいながら、【半影喰】で乗っているコカトリスを斬り伏せる
数分後、俺は最後の1匹となったコカトリスを刺し殺していた
「終わりましたか、マスター」
「あ、ミカヅキ。お願いなんだけど、俺も一緒に地上に降ろしてくれない?」
「いいですけど・・・一番最初どうやって降りたんですか・・・」
無理して着地しました。脚が痛かったです
冒険者や騎士団のいるところに戻るとファスタさんは笑顔で、ギルドマスターは何か達観したような表情で迎えてくれた。もうワシ、本格的に見せ場無いんじゃろう?わかっておる、わかっておるぞ?とかなんとか呟いている。何があったのだろうか
「おつかれ二人とも。やってくれるとは思っていたが、実際目にするとやっぱすげえな!」
「ありがとうございますファスタさん。ところで、今はどういった状況ですか?」
「ああ、今は地上の魔物の進行を食い止めるために、魔法が使える奴などを中心に遠距離攻撃をしている。たまに魔物の遠距離攻撃も飛んでくるから騎士さんたちが盾で出張ってくれたりしているな」
先行してきたコカトリスを倒しているうちに、どうやら本隊の地上の魔物の大軍勢もかなり進んできたようだ。まだこちらの軍勢との接触はしていないものの、もう間に距離が無い。魔法の食い止めもこの大軍勢には効果何てあって無いようなものだ。援軍はまだ来ないみたいだし、もう一回俺たちが突撃して・・・あ、そうだ
「なあカゲロウ。お前、魔物の大軍勢とやる?」
はい、ということで主人公無双回でした。無双・・・?微妙ですね。
あ、気力があれば今日中にあと1話投稿できる・・・かもしれません。期待なんてせずにいてください
次回、カゲロウの見せ場です




