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66 異常な魔物たち








                                  


                                ・・・・・あ、クリスマスか

 王都郊外に魔物の大軍勢が現れたとの報告を受け、俺たちを含む王都第3区の冒険者ギルドにいた冒険者は王都を囲む城門へと向かった


騎士団の人たちは城壁の外にいるということなので、城門を潜り抜ける


 城門を抜けた先、少し離れたところに重厚そうな鎧を装備している人たちがずらりと並んでいた。隊列を組み、ピシッと並ぶ姿は、さすが騎士。訓練されているんだろうな。それとは反対に俺たち冒険者は、隊列なんてあったもんじゃないな。適当に歩いているし、大声で話しているし。まあ、"冒険者"っていったらこうだろう。むしろ騎士の人たちみたいにピシッとしている方が気持ち悪い


 俺たちが騎士団の方に近づきと、それに気が付いた一人の騎士がこちらに向かって来た


「・・・来たか。わたしは王国騎士第3騎士団体団長エドワードだ。王都第3区冒険者ギルドの者たちと見受けるが、ギルドマスターはどなただ」


「ワシが王都第3区冒険者ギルドのマスター、アビステロじゃ。エドワード殿、今はどういう状況なのですかな?」


「城壁の監視者から"魔物らしき大軍勢が王都に向かってきている"との連絡が入ってな。確認を取った後、ここから近いギルドに応援要請を出したのだ」


「して、その魔物の大軍勢とやらは・・・?」


「あれだ」


 騎士団長が視線を向けた先、草原が広がるその先。地平線とは違う何か蠢くものがあった。それはこの王都へと近づいてきているようで、だんだんと蠢く影が大きくなってきている



「あれが・・・魔物の大軍勢・・・?」


「おいおい、まさかあの動いてるやつ全部じゃねえだろうな!?」


「ははっ、ちょっと勝てる気がしねえや」


 想像していたよりも遥かに数の多い魔物を前に、冒険者たちは弱音を吐き始める。そりゃああんなのみたら弱音くらい吐くだろう。さらに言えば王都第3区の冒険者にはBクラスまでしかおらず、そのBクラスも二人だけだ。騎士の人たちがどの程度の強さかは知らないが、あの大軍勢を捌ききれるかどうか・・・



「はぁ!腰抜けどもがぁ!!あんなぁ魔物どもなんざぁ、おれの魔法でぇぶち殺してやるよぉ!!!」


 なんだエビ、復活したのか。というかいたのか


 先程ミカヅキにぶん殴られて地面に伏していたが、元気に声を張り上げ冒険者と騎士団の戦闘に立つ。そういえばこいつが戦闘ってみたことないな。いつもは騒いで煩いだけだし、さっきは殴り合いになる前にミカヅキに殴られてたしな


「まずはぁあの鳥だぁ。焼き鳥にぃしてやるよぉ!!」


 エビが標的づけたのは、血を蠢く魔物の大群の中、空中を飛び、先行してこちらに飛んでくる鳥の群れ。あれは・・・コカトリスか



「フィレ・ゲニエ・アッタク・ブレト・スクフレ—―———」


 エビが呪文みたいなものを唱える。何を言っているのかは全く分からない。すると、エビの周囲に炎の弾が複数出現した。何あれ所謂ファイアーボール?


「————コンティヌオウス・インジェクシオン」


 エビが呟くと、周囲に浮いていた炎の弾が次々と発射される。発射された炎弾は次々とコカトリスに当たり、爆発する。だがそれだけでは終わらず、エビの周囲から炎弾が次々と出現し発射される


「す、すげえ!炎弾をあの威力で、しかも連続展開だと!!」


「デカい態度はホントウゼェが、さすがBクラスか!!」


「ああ、普段の暴言はマジでクソ野郎だが、やっぱBクラスの実力者だな!!」


 エビが周囲の冒険者にディスられながら褒められている。お前ら尊敬してるのか貶しているのかどっちなんだよ。・・・どっちでもいいか。エビだし


 エビの炎弾は次々とコカトリスの群れに突き刺さる。コカトリスたちが爆炎で見えなくなるほどだ。ある程度炎弾を撃ったところで、エビは攻撃を止めた


「はぁっ!こんだけぇ撃ち込めばぁ殺しきっただろぉ!!」


 あっ、ばか、エビ!それはフラグだッ!!


 案の定、晴れた爆炎からはコカトリスが羽ばたき出てきた。無傷・・・とはいかないが、決定的なダメージは見受けられず、堕ちた個体もいないようだ


「なぁ・・・んだとぉ。なんだとぉぉぉ!!!」


 エビはさらに炎弾を出現させ、コカトリスに撃ち込んでいく。先程よりも魔力を込めているらしく、威力も弾数も増している。しかし焦って冷静さが欠けたのか、弾が乱れていて命中率は良くない。コカトリスの体が大きいがために被弾しているようなものだ


「くうぅぅぅぅ・・・!!」


 エビの魔力が切れたようだ。残念ながら堕とせた個体は1匹。重傷1匹、中傷3匹程度と言ったところか。群れ全体にはさほど影響は出ていないみたいだ


 しかし、


「おかしいだろ、いくら何でもよ。いくら何でも、強すぎるっ!!」


 誰かが言った


 そう、この魔物、強すぎるのだ。エビの攻撃威力が見た目よりもすごく弱かったというのなら納得できるが、たぶんそんなことは無いだろう


 何かおかしいと思ってコカトリスをよく視てみる。魔眼のおかげで遠くの敵の顔もハッキリクッキリだ


 ・・・あ、これホントにおかしい。目が血走っていて焦点もぶれたりしている。というか目がイっている。口の端から涎も垂れているし。何かもういろいろ通り越して、"クスリやっちゃってます"といったかんじだ。コカトリスだけでなく地上を移動している魔物たちも同じような状態だった。つまり明らかに異常。自然的原因か、それとも人的原因か・・・



「ふざけんなっ!こんなの相手にしてられっかよ!おれは逃げるぞ!!」


 冒険者の一人が言った


「おれも・・・。おれも抜けさせてもらう」


「おれもだ。こんなところで死にたくないっ!」


「おれも」

「おれもだ」


 次々と離脱しようとする冒険者たち。キミたち、騎士の人たちを見習えよ。ほら、あの魔物を見ても微動だにせずに隊列を成して・・・あ、数名めっちゃ逃げたそうにしてる。隙あらば逃げようとしてる!


「待て、お主ら」


 ギルドマスターが逃げようと冒険者を呼び止める


「何だよギルドマスター。おれたちは逃げんだよ。無駄死になんてしてたまるか」


「どこへ逃げるつもりじゃ」


「そりゃ、遠くだよ」


「逃げ切れる可能性は絶対か?馬に乗ったとしても永遠に走り続けられるわけではあるまい」


「そ、それは魔物だって・・・!!」


「お主らも見ただろう。あの魔物は異常。一般的な奴らとは違う。何があるかは・・・わからんのだぞ?」


「クッ!!」


 たしかにこの魔物たち、なにが起こるかわからない。あれだけの炎弾を被弾して死ななかったように、防御以外にもいろいろ能力が高くなっていると考えるべきだろう


 ほら、あのゴブリンも、おかしくなりすぎて最早ヘドバンしながら走っているような状態だ。あんなの、普通のゴブリンにはできないだろう。やはりいろいろと強化されているんだろう。三半規管とか・・・



「現在、他の区の騎士団や冒険者ギルドにも救援要請を出している。それまで耐えて頂きたい。よろしく頼む」


 そう言って頭を下げる騎士団長。驕らないし、この人いい人かもな。それだけ必死ということもあるだろうが。猫の手も借りたいくらいなのだろう


 冒険者も騎士団長に頭を下げてまでそう願われては無下に拒否することもできない。逃げ切れる可能性が100パーセントではないと考えなおした結果、渋々とだが参戦することにしたようだ


「貴様ら!我ら王国騎士団は国を守るために存在する!この迫りくる脅威から国を守るのだ!我らの使命を、全うせよッ!!!」



「お主らも冒険者なら・・・腹ァ括れや!!ゴブリン1匹逃すんじゃねェぞ!!!」



 騎士団長とギルドマスターによる鼓舞。オオオオッと声が上がる。中にはやけくそ気味に叫んでいる奴もいるが、冒険者、騎士団ともに士気は十分に高まった


「行くぞ貴様ら!!最初の目標、コカトリスの集団!!叩き潰すぞ!!」


 皆が声を上げ、コカトリスに向かい駆けだしたその瞬間


 コカトリスの群れ、その先頭を飛んでいた1匹が地面に叩きつけられた



はい、ということで ✖【主人公最強】→ 〇【エビのターン】でした。脇役が出しゃばってんじゃねぇぇぇ!!!まずい、この章今年中に終わるのか!?もう1週間もないぞッ!!やるしか・・・ないな。


次回、行けっ主人公!次こそキミの番だ!!

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