61 こちらを見ている
61話目です。何か書こうと思っていたのですが忘れたのでとりあえず早口言葉を。となりのかきはよくきゃくくうかきだとなりのかきはよくきゃくくうかきだとなりのかきはよくきゃくくうかきだ。・・・ホラーですね
いろいろあった盗賊の討伐依頼から数日。俺たちは変わらずギルドに行き、依頼を受けて金を稼いでいた。依頼板の中に何度か"盗賊の討伐"があったけれど・・・さすがに今は気分が乗らない。魔物討伐やついでに薬草採集なんかを中心にやっていた
今日もいつも通り依頼を受けにギルドの中に入っていく
「よぉ、お前ら!久しぶりだな!!」
ギルドに入って早々声を掛けられた。もちろんナンパなんかではない。というかこんなおっさん声のおっさんにナンパなんてされても嬉しくない。いや別に声が可愛けければいいというわけではないが・・・。俺ノーマルなんで
「どうも、お久しぶりですファスタさん」
ナンパおっさんもとい、ラーメン好きのおっさんである冒険者のファスタさん。1週間くらい前に迷宮遺跡【トリルコの森】で別れてそこから会っていなかったので、最近この町に帰ってきたということだろうか
「おう、1週間ぶりくらいか?変わらず冒険者やっているようで何よりだ。ところでお前ら、何か雰囲気変わったか?何かあったのか?」
そう指摘される。別に自分たちでは何かが変わったとは思わないが。まあ何かあったかと聞かれれば
「下手すれば軽く精神崩壊・・・?」
「ちょっと死にかけました」
と言ったところであろうか
「本当に何があったんだよ・・・。まあ何にせよ、確かにお前らは強いが油断は禁物だぜ?」
ごもっともすぎて心に突き刺さる
「はい、肝に銘じておきます」
「ああ、じゃあお前らも頑張れよ。おれはそろそろ【メルーセス】に帰るから」
帰るってことは、ファスタさんて【ルアリトスの町】に住んでいるわけじゃなかったんだな。というか【メルーセス】ってどこぞ?と思っているとそれが顔に出ていたのか
「メルーセス知らないのか?この国の王都だぞ?」
ああ、王都だったのか。ん?ということはファスタさんって王都に住んでいるということ?もしかして結構すごい人?ただのラーメン好きの冒険者じゃないのか。あ、そうだ
「あの、よければ俺たちもついて行ってもいいですか?」
「ん?ああ、別に構わないがお前らはいいのか?ここから王都までは結構距離があるからそんなにすぐには戻ってこれなくなるぞ?」
それについては問題ない。もともと俺たちは旅をしているのだからずっと同じところに留まっているつもりは無い。"王都"という場所にも行ってみたいし、そもそもこの町にはもう2週間近く滞在しているから十分だと思う
ということで俺たちはファスタさんと共に王都に行くことになった
「おれ、今日お前らに別れの挨拶をしに来たはずなんだけどな・・・」
あれだな、偶然道であった知り合いとの別れを惜しんだ後に"じゃあこっちだから"って言った進行方向が同じでちょっと気恥ずかしくなるみたいな・・・ちょっと違うか
ファスタさんと共に王都【メルーセス】に向かうことを決めた二日後、現在俺たちはルアリトスの町の門の前に来ている
「悪いな、荷物も持ってくれる上に乗り物まで貸してくれるなんてよ」
「いえ、別にいいですよ。いきなり王都について行くなんて言ったのは俺たちですし、乗り物と言ってもまぁアレは自力で動かさなきゃいけないんですけどね」
荷物は【影の食卓部屋】に収納しておけば嵩張らないし重さも感じないので移動するときにはかなり便利だ。そもそも預かった荷物もたいしてなかったのだが
乗り物に関しては言わずもがな【魔動自転車】のことだ。馬車みたいに馬やら何やらが引っ張ってくれるわけでは無ですよと言ったが、馬車よりもこっちの方が楽だし速いということで、結局魔道自転車で王都に向かうことになった
「あれ?あっちになんかいません?」
そろそろ出発しようとしたその時、ミカヅキが何かを見つける
「んー、お、本当だ何かいるな。あれはトカゲ・・・か?この距離であの大きさに見えるから、近づいたらなかなかデカいんじゃねえの?」
ファスタさんが目を凝らしてそのトカゲらしき"何か"を見る。何だろうその"何か"が知っているようなものの気がして嫌な予感しかしない
いやいや、まさか。俺は確認のためにその"何か"を見る。魔眼のおかげで遠くのものでもハッキリと見える。トカゲのような姿。だが手に乗るようなサイズではなく全長は2メートル近くありそうだ。見た目はコモドドラゴンだな。そして特徴的なことに本来あったであろう長い尻尾は千切れたようにして途中から無くなっている
「はいもうこれあのコモラン確定!!」
「なんだ?あのトカゲ知っているのか?」
「知っているというかなんというか――――ってこっちに来た!?」
ドタドタと四足を使い、猛スピードで俺たちの目の前までやってきた
「おっきなトカゲが春巻きを欲しそうに見ている!宿主はどうする?
【闘う】 【春巻きをあげる】」
え、何でいきなりバトルシーンみたいになっているの!?というかカゲロウはなにノリノリで選択肢提示してきているんだよ。闘わねえし春巻きもあげねえよ
「スルーだ」
「おっきなトカゲのターン。おっきなトカゲの【突進】」
危なっ!?マジで突進してきやがった!カゲロウノリノリで【突進】とか言ってんじゃねえよ!!
「宿主のターン。
【闘う】 【春巻きをあげる】」
「まだ続くのかよ。まず選択肢その2つ以外無いのかよ。闘っても得がないし【春巻きをあげる】ってそもそも春巻き持ってねえよ・・・」
「マスター、ブラックボックスの中に春巻き入れていますよ」
入れたのかよ!本当に入ってたよ!!だがこれさえあれば!!
俺は春巻きを取り出し、次いで【身体能力強化】のスキルを発動させる。そして大きく振りかぶって
「とんでけぇぇ!!!」
手に持っていた春巻きを思い切り投げた。春巻きはかなりの速度を出しながら遠くの方へと飛んでいく。それを見たコモランも猛スピードで春巻きが飛んで行った方向へと走って行った。ふう、これで解決だな
「さて、さっさと行きましょうか。またアイツが戻ってこないうちに」
ルアリトスの町を経ってから少し、俺はファスタさんと並走しながら会話をしていた
「そういえばファスタさんってなんでこの町に来たんですか?王都にも冒険者ギルドってありますよね?」
「ああ、王都にも冒険者ギルドくらいある。ただ、最近魔物討伐系の依頼がめっきり数を減らしてなあ。薬草採集の依頼なんかはあったりもするんだが、あんまりそういうのは得意じゃなくてな。そんで、たまには迷宮遺跡にでも行ってみるかと思ってあの町に滞在してたんだよ」
魔物の討伐依頼が少なく、ねえ・・・。魔物の出現が少なくなる時期だったとか、もしくは王都付近の魔物を討伐し尽くしてしまったとか・・・
「あ、ということは俺たち王都に行ってもギルドで受けられる依頼少ないんじゃ・・・」
「どうだろうな。さすがにもう通常通りになっているとは思うけどなあ」
まあ何も依頼を受けるだけじゃなく、せっかくなんだから王都観光なんかをしてのんびり過ごすというのもありだよな。と、そんなことを考えていると
「あの、マス———。———が―――いるんで―――ど・・・」
ミカヅキが驚きと困惑が混ざったような声音で俺に何かを言ってきたが、ミカヅキは俺より少し後方にいるので若干風の影響があって言葉が聞き取りずらい。何を言いっていたのかもう一度聞こうとミカヅキの方を振り返ると、何かいた
「何でっ!?」
おかしい、完全に振り切れたと思ったのに何故かいる。何なのストーカーなの!?あなたの後ろにいるメリーさん的な何かなの!?"あたしトカゲさん。春巻きが欲しいの"。知らねえよっ!!そもそもこいつがオスなのかメスなのかわからないが今はどうでもいい。とにかく逃げようと自転車のスピードを上げる・・・
「着いてきたっ!?」
こちらの速度に合わせてしっかりついてくるコモラン。もうヤダコイツ怖い。もういい加減この謎トカゲをぶん殴って遠くへ吹っ飛ばしてやろうかと思ったその時
「おっきなトカゲが仲間になりたそうにこちらを見ている。宿主はどうする?
【仲間にする】 【見捨てる】」
カゲロウが先程と同じような口調で言って来た
「仲間になりたそうにこちらを見ている!?」
俺は思わず魔動自転車を止める。するとコモランも走るのをやめた。仲間になりたそうにこちらを見ているって・・・。というか選択肢が【仲間にする】と"【見捨てる】"って。"見捨てる"って人聞き悪くないですかね?
「いや、仲間になりたそうにって言われてもなあ・・・」
なんだろう。別に何かあるわけじゃないが、素直に受け入れる気になれないんだが
「なんですかマスター。このトカゲペットにするんですか?」
「え?いや別にペットにするつもりは――――」
「じゃあこれからよろしくお願いしますね、春巻」
「ハルマキが仲間になった!ハルマキは嬉しそうに春巻きを要求した」
俺が悩んでいる間に仲間になっちゃったよ!?あれ?俺の意思とか聞いてくれないんですかね?というかこのトカゲさらりと春巻き要求してんじゃねえよ
「というかミカヅキ。"ハルマキ"っていうのは・・・」
「はい、このトカゲの名前です。ピッタリだと思うんですけれど・・・」
確かにハルマキという名前はこの謎トカゲの印象にピッタリだ。というか逆に春巻き以外の印象がほとんどないんだが・・・
「ハルマキは春巻きを要求している」
「やっぱりややこしい!!」
こうして俺たちに何故か新しく仲間が増えた
はい、ということで仲間が増えました。そういえば東京特許許可局って実際には存在していないらしいですね。
次回、王都。(・・・でどうしよう)




