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57 コイツじゃない

57話目です。コモドドラゴンって、時速20㎞で走る上に全然走りつかれることが無いんだとか。そのうえ毒を持っているとかなんだとかで・・・。遭遇したら死にますね、僕。

「大きな・・・トカゲ」


 トカゲ・・・ね。うん、心当たりしかないや。ダンジョンから帰ってきた翌々日くらいにギルドへの通り道の途中で見たあの謎のコモドドラゴンみたいなやつ。たぶんあれだよな。あ、そういえばミカヅキがあのトカゲの尻尾取っちゃってたなあ。どうしよう・・・生えてたりしないかな


「ええ。体が大きくて力も強いけど、人懐こくていい子なのよ」


 確かに人に囲まれて暴れ出さないくらいには人懐こいと言えるかもしれない。だが、いくら人懐こくてもそんなものに春巻き目当てで飛びこまれては、じゃれるという範疇を超えて生死に関わってくる問題になってくる


「わかり・・・ました。俺たちも全力でレゼリアちゃんを探し出します!!」


 正直に"2日前に見ました"とか言ったら、ぶん回して尻尾が千切れちゃったことも言わないといけないから何も言わないでおこう 


「ええ、お願いするわ」






 依頼主の屋敷から出た俺たちは、一番初めに【レゼリアちゃん】であろうデカいトカゲを見た場所に向かった


「さて、行方不明のトカゲを探そう。そして千切れた尻尾の言い訳を考えよう。というかミカヅキ、あのトカゲどこに投げたの?」」


 ぶっちゃけて言うと、件の道に着いたはいいけど、結局あのトカゲってミカヅキがどこかへ投げ飛ばしたから、ここに来た意味ってあんまりなかったりする


「それが、私にもわからないんですよね。何せあのトカゲ、いつの間にか尻尾を残してどこかへ消えてしまったわけですし・・・」


 消えったて・・・。だいぶミカヅキの所業によるものだと思うんだが。というか、今もしかして手がかりゼロ?


「ですが心配はいりません」


「何か作戦でもあるのか?」


「はい。使うのは私の能力スキルです」


 ミカヅキのスキル・・・?ああ、なるほど


「空を飛んで上空から見つけるってことか?」


「違います。【情報収集クラッキング】です。アシュラのときも使ったアレです」


 そういえばあったなそんなこと。つまり今回も【情報収集クラッキング】を使って行方不明のトカゲの足跡を追うということか


「・・・ん?というか、あのトカゲは飛んで行った・・・・・んだから、足跡をたどるのは難しくないか?」


「安心してください。私の【情報収集クラッキング】だって前よりも練度が上がってできることが増えてきているんです。今回のような事例に有効なもので言えば、例えば探索範囲が拡大したり、地面以外に壁などについた痕跡も見つけられるようになったりしています」


 なるほど、それは便利だな。これなら例え建物の壁を登って屋根上に逃げていようとも発見することが可能というわけか。というかそもそもトカゲって壁登れたっけ?・・・登れそうだな。異世界の生物だし


「まあ、いろいろと便利機能が追加されたわけですが、結局は"痕跡"を見つけてからじゃないとこのスキルの探索能力って発揮されませんからね・・・」


「・・・つまり、その"痕跡"は人力で見つけるしかないってことか?」


「そうなりますね」


 結局手がかりはゼロじゃないか・・・





 取り敢えず痕跡を見つけないことには始まらないので、2日前の俺の曖昧な記憶を頼りに、"たぶんこっちに飛んで行ったはず・・・"という方向に歩いていた。ミカヅキには【情報収集クラッキング】を使って痕跡を探してもらっている。今のところの成果は・・・聞かないでほしい



「なかなか見つからないな・・・」


「そうですね・・・」


 現在はちょっとした路地に入って休憩中。歩き回ったから、というのもあるがミカヅキのスキルが長時間の使用ができないようなので時折休みをいれながら探索をしている


「あ、マスター。春巻き食べます?」


「また春巻きか・・・。というかいつの間に買ってきたんだよ」


「さっきマスターが目を離した隙に」


 なんという無駄に素早い行動力・・・!!


「それにこの春巻きに釣られてレゼリアちゃんも寄ってくるかもしれませんよ?」


「いや、さすがにそんな簡単にはいかな――――――――」


 突如、頭上から大きな影が落ちてきた。ドスンというなんとも重量のありそうな音を鳴らしながら地面に着地したそれは・・・コモドドラゴン似のデカいトカゲだった


ほんとに来たよ。どんだけ春巻きに執着しているんだよこのトカゲ・・・。というかもう春巻きじゃなくて俺たちに執着しているんじゃないの!?


 俺たちに執着しているかどうかはともかく今回も狙いは春巻きのようで、一瞬の溜めの後にミカヅキの手に持っている春巻きに飛び掛かった。身を反らしレゼリアちゃん・・・長いな、やっぱりコモランでいいや。コモランの突撃を回避する。ここまでは2日前と同じ流れだ。だが、今回は少し状況が違った。そう、コモランの尻尾が依然と比べてかなり短くなっているのだ


 2日前の事件で奴は尻尾が千切れてしまった。さすがに2日で尻尾は再生しないのか・・・というかそもそもあの大きさのトカゲって尻尾は再生するのか・・・?とにかく、現在コモランの尻尾は元あった長さの半分も無い。故にミカヅキは前のようにコモランの尻尾を掴むことができない。コモランはミカヅキを通り抜け、壁に向かって飛んでいく。このままだと顔面からぶつかるとその時、コモランは身体を反転させ壁に脚から着地、いや着壁し、その壁を四足で蹴って再びこちらにとんできた


 おい待て、あのトカゲ今とんでもない身体能力を見せなかったか!?壁を蹴って飛んでくるトカゲなんて絶対普通じゃないって!!それとも異世界のトカゲはみんなあんな感じなのか!? 


 飛んできたコモランは空中で付け根から少し先しかない尻尾を横に振る。その尻尾はミカヅキではなく、俺に向かって振られたものだった。先程から繰り出されるコモランのビックリ身体能力に唖然としていた俺はその尻尾に反応するのが少し遅れてしまった。体に当たるのは避けられたものの、その尻尾は先程ミカヅキからもらった春巻きを持っていた手に当たった


思っていたよりも衝撃が重く、つい持っていた春巻きを手放してしまった。それを待っていましたと言わんばかりに口でキャッチするコモラン。そして綺麗に地面へと着地し、こちらを一瞥。そしてそのまま路地の奥へと走って行った


 あのヤロウ、俺の春巻きを・・・!!その上最後にコッチ見た時ドヤ顔していた気がする!!気がするだけだが、なんか悔しいしムカつく。絶対に掴まえてやる!!


「ミカヅキ、追うぞ!!」


「はい!!」





 

 俺たちはコモランを追いかけて路地裏を走っていく。この路地裏はかなり入り組んでいるようで、何れない土地というのもあるが下手をすれば迷ってしまう。とにかく今はコモランを追いかけなければいけ何だが・・・アイツ速すぎない!?少しずつ距離は縮んでいるけど、なかなか追い付かない


「くっそ、トカゲ相手に【身体能力強化】を使わなければならないとは!!」


 一気に片を付けるため、スキル【身体能力強化】を発動させる。スキルの効果によって加速し、コモランに接近。そのまま捕まえようとして・・・寸でのところで避けられた


「あと少しだったのにっ!!」


「素手じゃなくて【影】を使えばいいじゃないですか」


 ・・・失念していた。そうだよ【影】があるじゃないか。よし、次こそ仕留めて・・・違った、掴まえてみせる!!


 コモランが通って行った道を追いかける。直進の道をダッシュで追いかけ、次の角を曲がっ――――


 ギリギリで見えたそれを緊急回避。【身体能力強化】のおかげで、多少無茶な動きをしてもしっかりと体がついてきてくれた。ほぼ倒れるような形でしゃがんだその瞬間、ガチンと歯を思い切りかみ合わせたような音と共に俺の上をコモランが通りすぎる


 あっぶねー!!今のちょっとタイミング悪かったら喰われていたんじゃないの!? ちょっとばかしスリルを味わったけど、この場所は奴を掴まえるチャンスだ。L字型の角となっているため、慎重に奴を過度の方へと追いつめてそれを【影】で掴まえれば完璧だ!!


「ミカヅキ、奴を過度の方へと押し込むぞ!慎重に、慎重にな・・・」


「慎重に、慎重に・・・」


 ゆっくりとコモランを角へと追いつめていく。そしてあと少し、という時にコモランが後方の壁を蹴って飛んだ。俺たちを飛び越すつもりなんだろう。だが、そうはさせまいとミカヅキが愛刀【月見酒】の鞘そのままでコモランの頭部へと思い切り振り下ろす


 ゴンッという鈍い音と共に飛び上がっていたコモランがそのまま地面へと落ちる。ミカヅキが相当強く殴ったのか、倒れたまま動かないコモラン。死んではいないようなのでセーフだ。とりあえず俺は【影】の【縄】でコモランを縛り、【影の食卓部屋ブラックボックス】の中に放り込む


 よし、これであとは依頼主の所に戻って、コイツを届ければいいだけだ!!






 コモランを掴まえた俺たちは依頼主の豪邸に向かった。豪邸に着いた俺たちは扉をノックし開けてもらう。すると、扉の先ににいたのはメイドの人ではなく、依頼主当人だった


「レゼリアちゃんは!?レゼリアちゃんは見つかったの!?」


 めちゃクチャ詰め寄ってくる。それだけ、このトカゲが大事というわけか。じゃあ、俺たちも苦労の末に掴まえたそのレゼリアちゃんを引き渡そうか


「はい。ちゃんと掴まえてきましたよ」


 そして俺は【ブラックボックス】からコモランを取り出し―――――と、のそのそと何かが俺たちの横を通りすぎていった。それはそう、体長2メートル近くある、大きなトカゲだった


「ああっ!!レゼリアちゃん!!どこに行っていたの?心配していたのよ?」


 突如屋敷の中に入ってきた謎のトカゲ。あれ?これがレゼリアちゃん・・・?じゃあ、今俺が手に掴んでいるこのトカゲって・・・


「シュアアァ」


 俺が今手に掴んでいる方のコモランが鳴いた


「『ぬし、春巻きとやらをよこせ』」


 え?今のカゲロウの声か?何かちょっと変だった気がするんだが・・・


「カゲロウ、今なにか言ったか?」


「ん、ああ。このトカゲの言葉を翻訳したのだよ」


「そんなこともできるのかよ!?」


「まあ、【影】だからな!」


 すごいな【影】!!それで、このトカゲは春巻きが食べたいとか何とかと・・・。なるほどわかった


 俺はコモランの残った尻尾の部分を掴み、自分ごと奴をグルグルと回す。そして十分な回転と速度が出たら


「飛んでけこのヤロウッ!!!」


 空に向かってコモランを投げる。あ、どうやら今回は尻尾は千切れていないようだ


「冒険者のお二人さん、レゼリアちゃんを見つけてくれてありがとうね。はい、これで依頼完了になるかしら」


「え、ああ、はい」


 依頼主さんから依頼完了のサインの入った依頼書を貰うが、俺たちが掴まえたのは別のトカゲで捕獲対象のトカゲに関しては本当に何もしていないのでこの紙を貰うのはかなり気が引けるんだが・・・ここで受け取らないていうのも失礼だと思うから、受け取るしかないんだよね・・・




 こうして俺たちのDクラスへ上がるための最後の依頼は釈然としないまま完了したのだった



はい、ということでコモランは星になりました(なっていません)。コモラン、このまま使い捨てにするのもなあ・・・。どこかで入れようかと悩んでいます


次回、下手なシリアス回がやってきます

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