56 ペット探しの依頼
56話目です。軽ーくこの1話で終わらせるつもりだったのに、軽ーく終わらなかった・・・
迷宮遺跡【トリルコの森】からの帰還後、その日は宿で休み、翌日再び【魔道自転車】を使い一日かけて【ルアリトスの町】へと帰ってきた
「よっし、クラスアップのために働くぞー!」
「おー」
そう、本来俺たちは冒険者クラスを上げるために働こうとしていたのだ。それが何故か知り合ったばかりのラーメン好きに誘われてダンジョンへ宝探しに行っていたのだ。まさしく、あれ?どうしてこうなった?である
というわけで、俺たちはクラスアップのために依頼を受け始めた。ファスタさんは、昔からの知り合い冒険者さんと一緒にまた【トリルコの森】へと向かって行った。これで俺の中で"ファスタさん=ラーメンとダンジョン"というのが確定された
まあ、それはともかく今俺たちは冒険者ギルドに向かっているのだが・・・
「ところで、お前は何を食っているの?」
「春巻き・・・ですけど?」
「いつの間に!?」
「さっき、マスターが目を離した隙に」
「随分と素早い行動だね!?てか何で春巻き・・・」
「たまたま目について美味しそうだったもので。あれです、3時のおやつ的な感覚です」
「おかしいな。俺の記憶だとまだ午前のはずなんだけど、俺とお前の間では時間がずれているのかな?」
「気にしたら負けですよ」
どうにも納得がしにくいが、気にしたら負けということなので気にしないことにしよう。とその時、人が何かを囲うようにして集まっているのが見えた。野次馬根性で近づいてみると、人に囲まれたその中心にトカゲがいた
いや、トカゲといっても手の平に乗るような小さいやつではない。体長2メートルにも届きそうながっしりとした体をしている。えーと、あれだ。コモドドラゴン。それにそっくりの生物がどっしりと佇んでいた
するとそのコモドドラゴンがゆっくりと周囲を見渡し、ある一点、俺たちがいる方向で視線を止めた。そして、のしのしとことらに向かって歩を進める。コモドドラゴンの進行方向先にいる俺たちを含めた野次馬は左右に別れ道を開ける
貴族のお通りとそれを見る町人とかかよ。しかし、このコモドドラ――――長いな、コモランでいいや。それでこのコモランはいったい何なんだ・・・?どこへ向かおうとしているのだろうか・・・うん?止まった?そしてこっちを見た・・・?俺か?いや違うな。ミカヅキ・・・の持っている春巻き?
コモランがこちらに体を向ける。そして一瞬の溜めをつくりミカヅキへと飛び上がってきた。正確には春巻きに向かって。あれ?トカゲって飛べたっけ?異世界生物だからそういうこともできるのかな?できるんだな
飛び掛かってきたコモランをミカヅキは避けて躱す。そしてコモランの尻尾をガッシリと掴み、そのまま自分ごとグルグルと回り始めた。最初はゆっくりと回っていたが、そのうち速度と回転がどんどん増していく。そして充分に回したところでコモランが吹っ飛んでいった。ハンマー投げかよ・・・。というか、あれの落下場所、少なからず何らかの被害が出ていそうだなあ・・・
「あの、マスター。これあげます」
人通りで突然のハンマー投げを披露したミカヅキが俺に差し出してきたのは、さっきのコモランの尻尾であろうものだった
「それどうしたの?」
「さっき、少し振り回しすぎて途中で切れちゃって・・・」
そんな物俺に渡されても・・・。とはいえそこらへんにポイ捨てするのどうかと思うし、仕方ないので【影の食卓部屋】に入れておくことにしよう。さて、だいぶ寄り道をしてしまったが当初の目的通りギルドに向かうとするか
ギルドに到着した俺たちは依頼板の所へと向かう。・・・よし、今回は声を掛けられなかった。まあ、今ファスタさんはここにいないし、その他に知り合い何ていないから声何てかけら得れるはずもないんだけれど、二度あることは三度あるあるというし・・・あ、まだ一度目しかないや
最下クラスの俺たちが受けられるのは、Eか一つ上のDクラス又はランクフリーの依頼だけだ。魔物討伐や植物採取なども、比較的簡単な内容であるがその分報酬は上のクラスの依頼と比べても安い。この報酬金だけで食っていくのは中々厳しいだろう。まだ生活に余裕があるうちに払いのいい依頼も受けられるようになっておかないと
というわけで、できそうなものいろいろと依頼を受けていこう
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そんなこんなで三日が経った。とにかく何かの依頼を受けていた。討伐系や採取系や街中アルバイトやらなんやら・・・。そして今日、あと一つの依頼を受ければ見事俺たちはDクラスへと上がることができるらしいのだ。昨日受付のお姉さんから聞いた
こんなものでクラスアップが起こるのかとおおったら、どうやら【アセトアの町】で暇つぶし程度にやった依頼が少し影響しているらしい。何だろう、机の引き出しから100円玉見つけたようなラッキーな感じだ
というわけで、クラスアップのための依頼を受けようと掲示板に向かったのだが・・・
「あれ、依頼全然なくね?」
そう、依頼が無かったのだ。全く無いというわけではないが、Cクラスやそこらの俺たちでは受けられないクラスの依頼ばかりだったのだ
何故だ!?タイミングか?今日はもともと依頼が少なかったうえに、他の冒険者さんたちが取って行ってしまったということか!?最下クラスの依頼だからって油断したなあ・・・。仕方がない、また明日にでも来るか
「あっ、マスター。1つだけ依頼がありましたよ!」
えー、このタイミング?もう今から帰る気分になっていたんだけどな・・・。いやいや、せっかくギルドに来たんだし、あと一つなんだから受けるべきだよな。というか、その依頼を確認しないと。えーっとなになに・・・?
『依頼内容:ペットの捜索 クラス:フリー 報酬:銀貨2枚』
なるほどなるほど。ランクフリーでペット探しか。しかも報酬が銀貨2枚。なかなかいいんじゃないか?というか、よくこれが残っていたな。真っ先に取られそうなものだが・・・
「うん、いいんじゃないか?この依頼を受けることにしよう!」
受付のお姉さんに依頼書を持っていき、俺たちがこの依頼を受けるという手続きをした。手続きが完了した後は、依頼主の所に行って詳しい内容を聞く
ということで依頼主の家に来てみたわけなんだが・・・うん、立派なお屋敷ですね。さすがにどこかの領主の屋敷並みとはいかずとも、それでもここに身分のいい人が住んでいるであろうということは想像がつく。なるほど、だからあんなに依頼の報酬金が良かったのか
「すみませーん。ペット探しの依頼を受けに来た者なんですけどー」
そう大きな声で呼んでみると、扉が開き、中から女性が出てきた。この人が依頼主・・・ではないよな。もしかしてメイドさんか!?うん、メイドさんだな!!いわゆるエプロンドレスと呼ばれるその服がいかにもという風に物語っている。だが残念かな、若くない・・・
「えっと、冒険者ギルドから依頼を受けに来たんですけど・・・」
「わかりました。では、こちらへ案内いたします」
メイドさんに案内されて屋敷の中の客室らしきところへ通される。しばらく待っていると、扉が開き、女性が入ってくる。メイドさんではない。"ああ、この屋敷の人だな"とわかるような豪華そうな服を着たその人は、やはり今回の依頼主だったようだ
「じゃあ、早速本題に入るわよ。依頼内容は、わたしのレゼリアちゃんを探し出してほしいの」
レゼリアちゃん・・・ねえ。だがしかし、俺たちはそのレゼリアちゃんというのが何なのかがわかっていない。依頼書には"ペット"としか書かれていなかったからな
「ああ、そういえばまだレゼリアちゃんのことを詳しく伝えていなかったわね」
こちらの考えている子が伝わったらしい。顔にでも出てしまっていたのだろうか。ともかく、これで今回探す対象が何なのかを知ることができる。さて、いったいどんな生物なのか・・・?
「そうねえ・・・。レゼリアちゃんは体長が2メートル近くある大きなトカゲね」
はい、ということで本物のコモドドラゴンの尾はそう簡単にちぎれません(たぶん)。コモドドラゴン関係ないですが、イグアナって犬猫みたいに懐くらしいですね。
次回、コモラン捕獲劇




