55 よくあるタイプの初見殺し
54話目です。予告通り、今回のダンジョンパート終わらせました。予告ブレイカー君とか誰それですね
あ、大幅改稿しました。内容は『フハハハハハ!!!【ステータス】にあった数値とかその他諸々を失くしてやったぞ!!』です。
デパートの次は公園か・・・。迷宮遺跡にもいろんな種類があるんだな。天空迷宮遺跡なんてものもあったりするのだろうか?ちょっと気になるな
「早く着いたのはいいが、そろそろ夕暮れに近づいているな。よし、ダンジョンに入るのは明日からにするぞ!」
さすがに、周囲が暗くなってきているこの時間帯からダンジョンに挑戦するのは危険ということだろう。俺たちもそれは同意見なので、ファスタさんに賛成し近くに建てられている宿に泊まることにした
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さて、昨日宿で休んだ俺たちは予定通りこれからダンジョンへと向かう
「ふう、朝飯もしっかり食ったし、これでもう大丈夫だな」
なんて言っているファスタさん。朝飯でラーメンを食べていた。しかも餃子セット。何が大丈夫なのかはわからないが、俺だったら腹が重くて大丈夫じゃないだろうな。よくもまあそんなに朝からガッツリと食べられるものだよね
準備を終えた俺たちはダンジョン【トリルコの森】に入る。が、その前にまず【ダンジョン受付所】を通らないといけない。ダンジョン受付所も各迷宮遺跡にそれぞれ設置されているみたいだ。
中に入ると、同じく挑戦者と思わしき人たちがちらほらといる。すごい、まともに機能しているぞ!!
「おお、賑わってますね」
「いや、結構少ない方だろこれ?」
なんと、これでも少ない方らしい。だってエイルムの方のダンジョン受付所って、エリメラさん以外誰もいなかったからなあ。この人数でも人がだいぶいるように見えてしまう
カウンターで何やかんやと手続きを行う。そっか、本来は手続きも必要なのか。改めてエイルムの受付所が全然機能していなかったんだと感じる。たぶん受付所でバーベキューとかやらないんだろうなあ・・・
そして手続きを終えた俺たちは受付所を抜け、迷宮遺跡【トリルコの森】へと足を踏み入れた
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トリルコの森に入り歩き進めて数分。このダンジョン、さすが森というだけに緑が多い。これ前みたいに本物の木の中にフェイクでもいるんじゃないかと思って"視てみた"けど、そんなことはなかった
いまだに魔物とは遭遇していない。こんなに魔物とは遭遇しない物だっけ?エイルムの塔ではそこそこの頻度であの羊モドキと遭遇していたような覚えがあるんだがな・・・
と、そこで俺は先程ふと気になったことをファスタさんに尋ねる
「そういえば、さっき受付所で"人が少ない"って言ってましたけど何かあったんですか?この時期特有でダンジョンに異変が起こる・・・とか?」
「いや、そういうことは無いな。このダンジョンはずっとこんな感じだ」
「へえ、そうなんですか」
「理由としてはそうだな・・・」
とその時、茂みからガサガサと音が聞えた。その音から察するに人よりも大きな生物だろう。つまり、このダンジョンで初の魔物というわけだ。さて、いったいどんな魔物が出てくるのか・・・?
——————ズリュッズリュウゥゥ
茂みからその大きな体を引きするようにして出てきたのは、蛾とか蝶とかそういうものの幼虫みたいなやつだった。ぶよぶよとした体、そこから生えるたくさんの脚、大きくなって見えやすい顔面などはグロテスク以外の何物でもない。ハッキリ言おう。これ無理、気持ち悪すぎる、帰っていいですか?本能的な拒否反応が全力で出ているんだが
「まあ、こういうことだな」
なるほど、理解ができた。俺も先にどんな魔物が出てくるかを聞いていればここに来るのは断っていただろう。いや、断っていた。後悔先に立たずとはこのことか・・・
「にしても、初っ端から随分な相手が出てきたもんだな。コイツのぶよぶよとした体には打撃が効きずらくてな、基本斬撃か魔法で攻撃するんだがそれでも―――――ってあれ?」
ちょっといい加減にこの魔物には消えてほしかったので【カゲアソビ・針山】でさっさと貫いた。げっ、貫いた勢いで体液が飛んできた!?これ貫くよりも燃やした方がいいな
「お前らすげえな・・・。普通もうちょっと手間取るはずなんだけどな。これなら安心してダンジョンを探索できそうだぜ!」
おおう、こんなのばっかりと戦うのかよ・・・。張り切るファスタさんとは反対に俺のテンションはダダ下がりだ
その後、宝探しの為にダンジョン内を歩き回った。遭遇する魔物はすべてが虫や昆虫系でどれも大きい。ただ、少し助かったのがエンカウント率が【エイルムの塔】よりもかなり低かったということだろう。これで5分に1回のペースで遭遇していたら俺の精神がもたなかっただろう。それほどまでに巨大化した虫の画というのはかなりくるものがあったのだ
散々歩き回って何か収穫はあったのか、というと、嬉しいことにあった。今回の探索で見つけたものがこの2つ。人口遺物【強化虫取り網】、【内部拡張虫かご】だ
2つをセットで拾ったことから察するに、たぶんこれ旧時代のここが【トリルコ森林公園】だった時に、どこかの子供が虫取りをしに来てそのまま置いて忘れていったものなんじゃないかと思う
まあ、何にしても収穫があってよかった。これで何にもなかったら、俺はただ単にここに精神攻撃を受けに来たようなものだからね
今回の探索はもう十分だということになったので、さてあとは帰るだけとなったのだが、どうやらこのダンジョン、入り口に戻るか各フィールドのボスを倒さないとダンジョンを抜けることができないらしい。途中リタイアができないのは何とも不便なことだ。それで今の場所だと、入り口に戻るよりはフィールドボスを倒してしまった方が早いらしい。ということで、俺たちはボスのいるところへ向かって進み始めた
ボスを目指してしばらく歩いた
「っと、だいたいここらへんだと思うんだがなあ・・・」
なんとも適当だな。とか思ったが、どうやらこのダンジョンには明確な【ボス部屋】のような場所は存在せず、次のフィールドの手前の"だいたいこの範囲"というところにいるらしい。探して、戦って、勝たなければ次のフィールドには進めないというまたなんとも面倒なシステムとなっているのだ
とその時、俺たちの少し先の方で木に寄りかかって座っている女性の人影を見つけた。この人もダンジョン挑戦者なのだろう。腕を抑えている様子から、怪我でもしているのかもしれない
「あの人怪我でもしているんですかね?」
俺は女性の元へ近づく―――――前にファスタさんに止められた
「どうしたんです?ほら、あの人ケガしてそうで―――――」
————————ドスッ!
ファスタさんが投げた剣が座り込んでいる女性の腕を貫く
「ちっ、外したか」
「ちょっ!?何やってんですか!!」
「いいから落ち着け。あれは魔物なんだよ」
「魔物?何を言ってるんですか?」
ファスタさんの言ったことがいまいちわからず軽く困惑しているその時、突如気に寄りかかっていた女性がガクガクと動きだした。そのまま体の揺れは大きくなっていき、
「かか、き、ぐ、ぎsyaaaaaa!!!」
グシュッグシュッ!という音をたてながら女性の見た目は巨大な蜘蛛へと変わっていった。うわっ、グロい
「なあっ!?蜘蛛!?魔物!?」
「ああ、これがここのフィールドボス。【ジョロウグモ】だ」
ジョロウグモ。先程のようにスキル【擬態】を使って相手をおびき寄せ、近づいてきたところを美味しく頂いちゃうらしい。シンプルにして初見殺し
なるほどな。さっきは綺麗な女の人の見た目だったが・・・今はクモだ。しかも例に漏れず巨大だ。結局何が言いたいかというと、やっぱりデカくてキモチ悪い
クモが俺たちに向かって糸を放ってくる。これで絡めとられたらベタベタしてそうで嫌だな。なんて思うが、まず糸の射出スピードがそれほど速くなかったので回避できる。ミカヅキも、ファスタさんも大丈夫そうだ
クモは動き回り、様々な角度から糸を放ってくる。俺たちはそれを避けつつ、攻撃を仕掛ける。胴体へ数発と脚を3本ほど使い物にならなくした。うち1本はファスタさんの剣が刺さっていた所で、衝撃で脚がちぎれた
それでも糸を出すことを止めなかったクモだが、急に動きを止めた。周りを見れば俺たちを囲むようにクモの巣が張り巡らされていた。そして周囲を囲まれた状態にある俺たちに向かって、今度は【炎球】を放ってきた。アイツ魔法使えるのかよ!?まあ、そっちがそう来たのならこっちも同じようにいこうか
「ミカヅキ、あれを焼き殺すぞ」
「どうやってです?」
「こうやって」
俺は張られているクモの糸に手をかざす。ミカヅキも理解したようで同じように手をかざす
「それじゃあいくぞ。せーのっ!!」
――――――――ゴォウッ!!
糸を伝って炎が辿る。もちろんヤツも自身の張った糸の包囲網上にいる。勢いよく燃え上がる糸を見て逃げ出そうとするも、炎が駆けるのがかなり速く追い付かれてしまう
そういえばクモの縦糸か横糸はネバつかない、移動するための糸になってるんだっけ?まあ、今はそんなことどうでもいいが
駆け巡った炎がクモに燃え移る。蜘蛛はたまらず地に落ちる。このまま放っておいてもたぶん死にそうだけど、わざわざ待っていたくもないので【カゲアソビ・針山】で止めを刺す。だいぶ体が燃えていたようで、さっきみたいに体液が飛び散ることも無かった
さて、フィールドボスのクモも倒したことだし帰ろう、ということになった。ところで帰還するための転移魔法陣は?と思ったら、どうやら次のフィールドの手前に出現するみたいだ。早速行ってみたところ、確かにあった。あったけれど、少し疑問が湧いた
「こんな適当に出現したら、俺たちが使う前に誰かに使われたりしないんですか?」
「いや、その点については問題ない。ボスを倒したグループだけにしか作用しないみたいだからな、その魔法陣。理由は知らん」
なんかもうあれだな。"異世界魔法すげー!!"って思っておけば大体片付きそうだよね。思考の放棄ともいうが、別にいいだろう。異世界なんだし
というわけで、転移魔法を使ってダンジョンの入り口に戻ってきた
「いやあ、今日は助かったぜお前ら。人口遺物も得られたし、戦闘面でもいろいろな。そうだ、また一緒にこのダンジョンに挑戦しねぇか?お前らとなら、結構うまく行けそうなんだよな」
"また一緒にここに挑戦しないか"・・・か。確かに虫やらなんやらが出てきた。けど、後半になると"キモチ悪い"という感覚すら麻痺し始めてきて、ちょっと楽しかったりした。だから、俺の答えは決まっている
「いえ、もうここは十分です」
はい、というわけダンジョンパート終了でした。前にも書いたと思うんですが、僕、虫とかダメなんですよね。蜘蛛とか幼虫とかかなり。今話のヤツらの描写のところで、勝手に書いて勝手に想像して勝手に不快感とか抱いてました。じゃあ書くなよって?それじゃあ話が盛り上がらないじゃないかッ!!
次回、主人公たちの冒険者クラスを上げます




