51 潰れない理由
51話目です。今回でエイルムの町を旅だ―――――
予告ブレイカー君「フハハハハ!!我っ!!参上っ!!」
・・・まあ、たぶん予告ブレイカー君が登場するだろうとは思っていました。
ダンジョンの地下から地上に転移し、受付所へと戻ってきた。今回はそう時間もかからなかったので、今は夕方くらいの時間だ
「ただいま戻りましたー!」
声をかけて受付所に入る。夜には戻ると言っていたはずなので、バーベキューの準備でもしてくれていたりするのかなと思っていたが・・・二人とも普通にテーブルに着いて駄弁っていた
「本当に今日帰ってきた・・・」
「ごめんよアライ君。まさか本当に今日中に帰ってくるとは思わなくて、その・・準備、していないんだ・・・。今日は準備をして、明日に・・・何てどうかな?」
・・・うん、まあそれでいいか。急いでいるわけでもないし
「じゃあ、そうしましょう。あ、下準備とかしますか?食材出しましょうか」
「うん、よろしく頼むよ」
【ブラックボックス】からダンジョン内で得た商材たちを取り出していく。肉、魚、キノコ、野菜みたいなものなどなど・・・
「準備はぼくがやるから置いておいてくれていいよ」
「じゃあ、アライ君とミカヅキちゃんはわたしと倉庫から道具を探しに行きましょうか」
倉庫っていうと、仮眠室から出てきて間違って開けたあそこか。確かに物がごちゃごちゃしていたけど、バーベキューコンロとかあるのかな?一応ここ【ダンジョン受付所】だぞ?
・・・・・あった。バーベキューコンロらしきものが
「あ、あったみたいね」
「ええ、本当にありましたよ。というか何でこんなアウトドア用品みたいなものががここにあるんですか」
「うーん、昔から"人は皆祭りが好きだ"っていうじゃない?そういうことよ」
この説明で納得できるかと言われれば、微妙なところだが・・・まあそんなものなのだろう。とにかく、このコンロは見つけたのでこれを持っていこう
「あ、そういえばアライ君。ダンジョンで得たアイテムってまだある?」
「ありますよ。刃物とか、少ないですが宝石とかも。どうしました?いりますか?」
「いや、"いりますか?"じゃなくて、よかったら買取をしようと思ったんだけど・・・」
ああ、なるほど買取か!!そういうシステムもあるんだな。そういえばちょっと懐事情が危うくなりかけてきているんだったな
「それなら、ぜひお願いします!」
「じゃあ、あっちの受付で・・・と、その前にこのコンロ運ばなきゃね」
バーベキューコンロを倉庫から運び出し、受付所のホールに置く。そして俺はアイテムの買取をしてもらうために受付に向かった
「売り出したいアイテムはここに出してね」
ゲームの中にあるショップのNPC店員みたいなセリフだなと思いながら、エリメラさんが指した目の前のカウンターの上にダンジョンで拾ったアイテムを置いていく。刃物や宝石、羊毛、羽毛、木の棒、ただのローブなどなど、実は食材以外にもいろいろ拾っていたりする
「け、結構あるわね。捌くのが大変そう・・・」
「何言っているんですか。久々の受付嬢としての仕事でしょう。頑張ってください」
アイテムの換金には時間がかかりそうなので、しっかりと仕事をしてもらうべくエリメラさんは少し放置しておく。久々の仕事を堪能していただこう
エリメラさんを放置してから数十分が経った。暇をしている間にストールさんの所にでも行こうと思ったが受付所のホールに姿は見えず、どこにいるかもわからなかったので諦めて椅子に座り、ミカヅキとカゲロウと一緒にしりとりをしている
「ダイオウイカの"か"だ、マスター」
「"か"ね、か・・か・・あ、カカオで。じゃあ"お"で、ミカヅキ」
「"お"ですか・・。お・・お・・・」
「お、終わった~!!」
エリメラさんの声が聞こえた
「タイミングぴったりですね」
「ね・・ね・・ネットカフェ。次、宿主」
「え!?"ふぇ"って何!?ふぇ・・ふぇ・・!?」
「えっと、もう終わりません?」
ミカヅキが"ん"を言ったため、しりとりは終了となった
「ふう、疲れたわ。もう当分働きたくない」
いったいこの人は何を言っているんだろうか・・・。今までさんざん働いていなかったから"働かない癖"でもついたのかもしれない。最終的に"働いたら負け"とか言ってダンジョン受付所にすら来なくなるということにならなければいいが
「お疲れ様です。それで、どうなりました?」
「えっとねー、換金したアイテムとわたしからのサービスとダンジョン攻略おめでとう的なものを合わせて金貨10枚!どうかしら?」
じゅ、10枚だと!?それだけあれば当分は困らない、というか十分だ。だが・・・
「いいんですかそんな大金!?経営難とかで潰れたりしませんかココ!?」
「大丈夫よ。このダンジョンって大元は国のものだから、この【ダンジョン受付所】って国営なのよ。まあ、結構アバウトな仕組みだからその場その場に管理を任せているっていう放置的なものなんだけどね」
なるほど、ダンジョンに全然挑戦者が来ない状況なのにここが潰れることが無かったのはそういうことか
「お金の方も全く問題ないわ。アライ君がダンジョン破壊したからってくれた魔石。あれを売ったらとんでもない額で売れたのよ。だからどうってことないわ。というかあなたたち本当に何者よ?こんな魔石をホイホイ出せるなんて・・・」
いや、そんなホイホイ出せるような代物ではないんだが・・・。あの時はその場を収める手っ取り早い方法だったから魔石を渡したのだけれど・・・。そんなに金になる物だったのか。ちくしょう、あのおっさんめ!!
「まあ、ちょっと冒険してたところがちょっと特殊だったということですよ。じゃあ、この金貨10枚はありがたく頂きます」
俺が金貨の入った袋を受け取ったその時、受付カウンターの内側の壁にある扉からストールさんが出てきた。ストールさんそこにいたのか。というかもう、受付所のこの扉"ご自由に出入りどうぞ"みたいな感じなのだけれどいいのだろうか。普通従業員以外立ち入り禁止とか
「下準備終わったよ。あれ?もしかしてお話し中だったかな?」
「いえ、大丈夫です。下準備お疲れ様です」
「いや、何てことないよ。あ、エリメラさん。食材はあっちの調理所の所で保管させてもらったよ」
「あっちね、わかったわ」
この受付所、調理所まであるのかよ・・・。仮眠室に、アウトドア用品に調理所と、なぜこうもダンジョンに関係のなさそうなものが充実しているのだろうか・・・。バーベキューは明日の昼頃から始めるということにし、この日は解散することになった
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
太陽も高く上がる現在は昼少し手前ほどの時間。約束の時間には少し早い気がするが、俺たちは【ダンジョン受付所】へ向かった。受付所の中に入る。・・・が、中にはストールさんどころかエリメラさんもいなかった
まさか本当に働きたくない病が!?と思っていると、ふと香ばしい匂いが漂う。匂いはどうやら入り口の反対側、ダンジョンへと行くための開かれたドアの先からの者らしい。まさかと思い駆けていくと、扉を抜けた先、エリメラさんとストールさんが既にコンロで焼き始めていた
「二人とも早いですね」
「だってもう昼だしね」
「先に焼いてしまった方がみんなでゆっくり食べられるかと思ってね」
そういうストールさんの横で、焼かれたばかりの肉などを既に食べているエリメラさんがいるのだがいいのだろうか。その後は俺もストールさんの手伝いをしたり、皆でバーベキューを楽しんだ。やはり、料理の知識がある人が作ったものとない人が作ったものでは美味しさが違う。・・・料理教室でも行こうかな?
食事も終えた後、満腹そうなエリメラさんが訪ねてきた
「そういえばあなたたち、エイルムの町にはいつまでいるの?あ、いや"さっさと出ていけ"とかそう意味じゃないわよ?あなたたちは旅をしているようだし、ダンジョンも攻略してしまったからいつまでこの町に滞在するのかなと」
そういえば、次はどこへ行こうかなんて考えていなかった
「ミカヅキ、お前どこか行きたい場所とか無いのか?」
「いえ、特にないですね」
だと思った。だが、俺も別に行きたいところなんて無いしなあ・・・。あ、それならアレを使って決めよう!!
はい、ということでまだ旅立っていません。バーベキューと焼き肉って違うらしいですね。
次回、やっと町を出る・・・はず!!そしてあの人と通話する・・・かも!!




