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47 扉の違い

47話目です。えー、前話で予告ブレイカー君が好き放題やり次回予告ができなかったので、唐突に今やります。今話、ダンジョンもクライマックスへ!!

 夏場はパンがカビやすいので注意ですね!!くれぐれも熱の籠る場所に放置しないようにしないと・・・

 ゾンビ共との戦いを切り抜けて25階層を突破し、現在は階段を上った先の26階の扉の前


「さて今まで通りのパターンでいくとこの階もゾンビ階だよな」


「そうですね、さらに数の増えたゾンビとの戦闘になるでしょうね」


 うわあ、あれよりも数が増えるのかよ。さっきでも満員のすし詰め状態だったというのに・・・。今度こそゾンビが天井とかに張り付いているんじゃないの?


「大丈夫です。増えていても私が燃やします」


 おう、なんとも頼もしい。もうミカヅキだけでこの階突破できそうだな。・・・あれ?俺の存在意義が薄れていっている気がするぞ?気のせいかな?気のせいだな


「よし、扉を開けたら即攻撃開始だ。それじゃあ開けるぞ、3、2、1・・・行くぞっ!!」


 勢いよく扉を開け、その先に待ち構えているであろう大量のゾンビ共に先制攻撃を仕掛ける・・・・はずだったのだが、開いた扉の向こうにはゾンビどころか魔物の一体もいなかった


「・・・・あれ?いない?」


「宿主、奥を見てみろ」


 カゲロウに言われ奥を見る。そこには今まで通りに行くならば本来あと2つ上った先にあるもの、ボス部屋の扉があった。俺たちはそのボス部屋の扉であろうものに近づいていく


「何でここにボス部屋があるんだ?偽物か?」


「いえ、この扉は本物のようですよ。この奥にボスがいるはずです」


 どうやらこの先はボス部屋で間違いないらしい。だがなぜ4階ごとだったものが前回のボス部屋から2階上がっただけでボス戦なんだ?


「・・・宿主、もしかするとラスボス戦かもしれないぞ」


「え、マジで!?」


「ああ、この扉を見てみろ」


 扉を?・・・だめだわからない。俺の気づかないところに"ラスボスの部屋だよ!"みたいなことでも書かれているのだろうか?


「ほら、わからぬか?この扉の装飾具合を!!今までのボス部屋とは違う重厚さ!荘厳さ!そして威圧感!!今までの扉にはないこの雰囲気はきっとラスボスの部屋に違いない!!」


判断材料そこ!?確かに今までの者とは違う気もするが・・・・そんなに違うか?正直とんかつソースと中濃ソースの差並みの違いしかないように思うんだが・・・。というかどんだけ扉?装飾?に熱意を持っているんだよコイツ。まあ、人にはそれぞれあるというしな。・・・カゲロウ人じゃないや


「扉の装飾はともかく、ここがダンジョンの最後ってことになるのか。長かったような、短かったような」


「マスター、まだ攻略し終えていませんよ」


「そうだな。よっしゃ、それじゃあラスボスを倒しにいきますか!」


 ダンジョン最終決戦に向けて俺はボス部屋の扉を開ける


「これだけ意気込んで"実はラスボスじゃありませんでした"ってなたら恥ずかしいですね」


 ええ~、そんなこと言っちゃう!?絶対今フラグ建ったような気がするんだけど・・・




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 

 ボス部屋は、どこぞのレストランを思わせるようなステージだった。壁は今までと違いガラス張りになっていて、魔法による幻覚の類によるものか実際にそうなのかはわからないが夜景が見える。付近に現代都市のように灯りが付いているところが無いせいか星がよく見える。おっと、星を見ている場合じゃなかった


 ——————カツン、カツン


 夜景に合わせるためか、そう明るくない色のライトで照らされる部屋の奥から何かがこちらへ向かってくる音が聞こえる。警戒しながら構えていると、奥から出てきたのは大きな包丁のようなものとフライパンを持ったコック姿の者だった


 『【グール】が現れました』


 グール?あのコックの姿をした奴のことか。レストランでコックと料理ではなく物理戦闘で勝負って・・・。まあ料理知識のない俺からすればありがたい話なんだけどな。というかアイツ、コック帽頭に被るを越して顔を覆っちゃっているけど見えてるのかな?


 コックがこちらに向かって走り出す。ちゃんと見えているみたいだな。というかさすがラスボス。今までの奴よりもかなり速い。走るコックは手に持つ大きな包丁を振りかぶる。そしてそのまま俺たちが間合いに入っていないのにも拘らず包丁を振るった


 一瞬何かの予備動作かと思ったが、なにか嫌な気配を感じた俺はミカヅキに


「避けろ!!」


 と声をかけその場を飛びのく。すると俺たちが今さっきまでいた場所に、突如として何かに斬られた跡が生じる。何か・・・というのはたぶんあの包丁だろう。たぶん斬撃を飛ばすか魔法か何かで間合いの範囲を伸ばしでもしたんだろう


 というか危ない、無防備で斬られるところだった。死にはしないと思うがわざわざダメージ何て受けたくはない。前を見ると包丁を振りかぶったコックが走るのを止めてこちらを見向いている。帽子が顔を覆っているからどこを見ているのかはわからないが、初見でさっきの技を交わされたのがショックだったのかな?それなら盛大にバカにしてやりたいが・・・。そんなこと考えている場合じゃなかった


「ミカヅキ、今度はこっちが行くぞ!」


 俺はコックにの足元に影の【針】を発生させる。コックは避けれず両足を貫かれ、その場に止められる。そこへミカヅキが炎弾を撃ち込んでいく。動けないコックに炎弾は直撃・・・せずにフライパンに弾かれた。というより裏部分の凹みの反対側を使って逸らされた。何だあの芸当!?さすがコックと言うべきなのか!?


 しかしコックも全ては逸らしきれずに一発炎弾がフライパンの真ん中に直撃し、思い切りその衝撃を受けた。本来なら多少吹っ飛ぶはずだが、足を固定されているため急激な上体反らしをして床に後頭部を打ちつける


 うわー、痛そう。と思ったが、倒れている今がチャンスと思い【半影喰】を作り出しコックへ駆ける。そして斬りかかろうとしたその時、倒れていたコックが逆再生の如く起き上がり俺の攻撃を包丁で受けた。置きあがった時の反動も加わり、押し返されはしなかったものの鍔迫り合いとなった俺は一旦後ろに引いた。というかね、いきなり起き上がってこられて少し驚いた。結構な勢いをつけて起き上がってきたからね、あのコック


「どうします?マスター」


「今あのコックは足を留められて動けない状態だから、攻撃を受けないようにタコ殴りにすれば――――――なっ!?」


 影に足を貫かれていたコックが、無理やり【針】から足を引き抜いた。嘘だろ!?一応あの【針】にフック状の返しも付けてたんだぞ!?無理やり引き抜かれたかっこの足は見事に風穴が空いていた。アイツ痛覚とか無いの!?いや、たぶん無さそうだな。そして自身を留めていた影から解放されたコックは・・・・突然消えた


 消えた!?そんな能力もあるのか――――っ!!右側からライトの光を反射し飛んでくるものを捉えた俺はそれを刀で叩き落とす。地面に落ちたのは小さめのナイフだった


 透明化したうえで不意打ちの攻撃とは・・・。やはりさすがラスボス、なかなか面倒だ。だがお手上げかといわれえば、そんなわけはない。対抗手段はある


「カゲロウ、【魔眼】使うぞ」


「ああ、わかった。【魔眼・制限解放】!!」


 カゲロウが制限を解放したおかげでいろいろと視えるようになる。そういえば久しぶりに戦闘で【魔眼】使うな。それで、あのコックは・・・・いた。今は少し離れた場所に居るな――――っと、動き出した。狙いはミカヅキか!


 コックがミカヅキに向かい斜め前方から包丁を振り下ろす。が、俺が間に割って入り刀で受け止めたためミカヅキには当たらない。コックの表情は見えないが、見えないはずの自身に対応されたことに驚いているようだった。さらにそこから俺は【身体能力強化】を発動させ、鍔迫り合いとなっていたところを今度は退かずに押し返す。態勢が崩れたコックに向かい蹴りを放つ。コックは吹っ飛び


 ——————ダァン!!


 と窓ガラスに激突した。すごいなあの窓ガラス。今"やべえ、割ったかも!?"って思ったのに全然問題なさそうだよ。さすがダンジョン仕様、丈夫にできているんだな


「マスター、敵が見えていたんですか?」


「見えていた・・・というより"視える"ようにした」


「なるほど、【魔眼】ですか」


「あと、【身体能力強化】も使ったな。ミカヅキも使っておけば?」


「そうですね・・・【身体能力強化】。あ、マスター。今あのコックってどこにいます?」


「今は・・・そうだな。真正面の窓のフレームから数えて・・・右側の6番目の所だな」


 というかアイツもすごいな。あの衝撃を受けていまだに透明化が解けないなんて。何だろ、根性かな?


「右側の6番目ですね、わかりました」


 そういうとミカヅキは床に落ちていた先程コックが投げたナイフを手に取ると


「せいっ!!」


 真正面の窓のフレームから右へ6番目の所にいる、こちらを様子見しながら構えていたコックに向かって投げる。強化された身体で投げられたナイフは避けられることなくコックの腹部へ命中する


「おっ、お見事」


「やりました!」


 ナイフはコックの腹部に刺さったものの・・・ダメージを受けているようには見えない。いや、見えないだけでダメージは蓄積しているだろう。その証拠に奴の透明化が解けてきている。だが倒れる気配はない。何せ奴は痛覚が無い様子。言わばさっきの階のゾンビと同じだ。頭を飛ばすなり心臓を貫くなりしないと死なないだろう


「なら、確実に仕留めに行く!!」


 俺とミカヅキはコックに向かって駆ける。【身体能力強化】のおかげで間にあった距離が瞬く間に縮まる。コックが時間稼ぎか持っていたフライパンを投げてくる。が、当たること無く床に落ちる。迫る俺たちに対してコックは包丁を構え・・・振るう。振るわれた包丁の刀身の先からは、さらに倍ほどの透明な刃が出現する。なるほど、これが最初の攻撃でやられたことのタネか。透明な刃を確認した俺はミカヅキにも指示を出し回避する


 よし、奴は大振りの攻撃直後で隙ができている。このまま詰め寄れば―――――――炎っ!?


「ミカヅキ、範囲攻撃が来る!!大きく横に回避!!」


 【未来視】により直後に起こる事情を視た俺はミカヅキに急いで指示する。そして俺とミカヅキは咄嗟にそれぞれ両サイドに回避する。その直後コックが炎を吹き、先程まで俺たちが走っていたルートを炎に包んだ。危うく焦げるところだった!さっきのフライパンと包丁はこれの為の時間稼ぎか?というかあのコック口から火を吹いたよな!?なんで帽子燃えないの!?


 炎を回避し、両サイドからコックを攻める。あと少し、というところで炎を吹き終えたコックがミカヅキに向かい包丁を振るう。それと同時に腹部に刺さっていたナイフを俺に向かって投げる。ミカヅキは振り下ろされた包丁を【月見酒】で受け止めてうまく逸らす。俺も事前に視えたので当たることなく回避。そして


 ———————ドシュッ!!  ザシュッ!!


 俺がコックの首を斬りおとし、ミカヅキがコックの心臓を貫いた。ラスボスと言えどさすがにこれで死なないということは無いらしく、地面に倒れ伏した。やがて倒れたコックは光の粒子となり空へ散っていく。その光は窓から見える夜景と相まってやけに綺麗に見えた。・・・まあ、光の本が魔物ということを考えてしまうとなんとも微妙な気分になるのだが


「終わりました・・・ね」


「ああ、終わったな」


「終わりだな。よくやったな宿主、お嬢ちゃん」


 初挑戦のダンジョンはいろいろ驚いたし、大変だったし、手間取ったり疲れもした。でもとにかくこれで



迷宮遺跡ダンジョン【エイルムの塔】、攻略完了だ!!」



はい、ということでコックと物理対決な回でした。やっとラスボス倒しましたよ。【エイルムの町】に入ってから現実の時間でそろそろ2か月ですよ。どんだけ延ばすんだよ、僕・・・


次回、ダンジョン完全攻略完了?です

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