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42 晴れ時々魚

42話目です。魚といえば、昔"鮭は白身魚"ということを知って衝撃を受けました。ややこしい身の色合いしてますよね

 ダンジョンの"新"2階層を切り抜けた俺たちは、3階へは上がらずに階段の踊り場で休むことにした。ダンジョン内だと外の景色は見えないが、それなりの時間は経っていると思うので一度休憩するためにも今日はこれ以上は進まないことにしたのだ。


 何故階段かといえば、どうやらここには魔物は入ってこない場所のようであり、今はほかの挑戦者もいないため、絶好の安全ポイントだからである。別に魔物が出るところで寝ても、カゲアソビの【繭】とかニンギョウゲキの【小人】さんとかがあるから、睡眠中に殺されるような危険性はそこまで大きくないと思うが、危険は小さいにこしたことは無いからな


「そういえば、今日大量にゲットした羊モドキの肉、ちょっと焼いて食べてみない?」


「そうですね。どんなものなのか興味はありますね」


「ワタシも生でなく焼いたのも食べてみたいな」


 そういえばコイツ【影の食卓部屋ブラックボックス】に入れてた羊モドキ肉をつまみ食いしてたんだったな。というか生で食ってたのかよ!焼くくらい自分でやれよ!まあいいや、早速焼いていこう


 羊モドキの肉を適当な大きさに切ってその上に塩を振り、それをカゲアソビで作ったフライパンの上で焼いてみる。え?塩をどうやって入手したかだって?某お屋敷からちょこっと頂いてきました。適当な焼き色になったら影で作った皿に盛る。味付けは塩とか振れば完成だろう、このスキル【影】ってめちゃくちゃ便利だな。まさかフライパンもいけるとは思わなかった


 さてさて、では焼いた羊モドキの肉を食べてみようか。じゃあ、いただきます。・・・・おお、思っていたよりうまいな。肉はちょっと硬いが噛みきれないことは無い。塩もいい感じに効いている。俺は料理の知識が無いからこんなものだが、うまく調理すればもっと美味くなるかもしれないな。・・・ダンジョンから出たらストールさんに頼んでみようかな


「この肉結構おいしいですね」


「やはり焼いて味付けもしてある分、生で食べるよりもうまいな」


 その後、食事を終えた俺たちは明日に備えて寝ることにした





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 階段の踊り場で睡眠をとった俺たちは、軽く朝食を食べて3階へと上がった。1階2階共に迷路のような構造だったため、3階も同じように迷路形式となっているのだろうと思っていたが、実際俺の目の前に広がる光景は・・・・当たり一面の水だった


「え、ちょっと待って?理解が追い付かないんだが」


「私も同意見です」


 なにこれ?この階水没したの?とか思うが、水底はかなり深いようでどう見ても元のデパートの階層が水没したようには見えない


「宿主、これはもう無理に理解するより"そういうもの"と考えた方がいいのではないか?」


「・・・・・そうだな。もう、そうしよう」


 うーん、迷宮遺跡ダンジョンって不思議だなあ!!


 ダンジョンの不思議はともかく、今はこの水の階を突破しなければいけない。この階は今俺たちがいるところを含め、水の上に小さな島が点々と存在している。だが厄介なことに小島と小島を繋ぐための橋のようなものが無いのだ。つまりは水中を通って次の小島、次の小島へと渡っていかなければいけないのだが・・・


「明らかになんかいるんだよなあ」


 水中には魚影のようなものがいくつも見える。これ、泳いでいたら確実に襲われるよね


「水中でも勝てないことは無いと思うんだけど、やっぱり戦いにくそうだよな」


「なら宿主、水の中を行かなければいいだけではないか」


「どうやって?」


「橋を造ればいいだろう。影で」


 なるほど、確かにその手があった。この影を使えば島を繋ぐ橋など簡単に造れる。よし、これで問題解決だ。早速進んで行こう


 

 俺たちは影でつくった橋の上を歩いていく。ふはははは!どうだ魚ども!!これでお前たちはこちらに攻撃ができないだろ――――


 ——————パシャンッ!


 そんな水音と共に、水中から1匹の魚がこちらに向かって飛んできた


「げっ!マジかよ!?」


 橋は水面からそこそこの高さがあるのだが、それを普通に超えてきた。まさかこの高さまで飛んでくるとは思わず驚いたものの、問題なく飛んできた魚を斬る。が、それを皮切りに次から次へと魚が飛んできた。


「うわっ!ミカヅキ、ちょっと急ぐぞ!!」


「は、はい!」


 飛んでくる魚どもを斬ったり交わしたりしながら急いで次の小島へと向かった



「まさか橋の上まで飛んでくるとは・・・」


「ビックリしましたね」


 俺たちは飛んでくる魚を対処しながら次の小島へと辿りついた。橋の上ではあんなに襲ってきた魚たちも島に上がると全然来なくなった。陸上だと水に戻れずに死ぬということが分かっているのだろうか。まあ、飛んで来られても迷惑なだけなのでその方がいいんだけどな


「よし、休憩終わり。次行くぞ!」


「マスター、またあの中を進んで行くんですか?」


「比較的安全に進む手段がそれしかないからまあそうなるんだが・・・、ちょっと俺に考えがある」


「考え・・・ですか?」


「ああ、取り敢えず進んで行くぞ」




 俺は再び橋を作る。ただし、今度は橋の両側にかなり高い壁を作って


「なるほど、これで魚は飛び掛かってこられないということですね」


「そういうことだ。さすがにこの高さを飛び越してくるものはいないだろう」


 この会話中にも両側の壁からは「ドンッ!ドンッ!」と魚たちがぶつかる音が響く。・・・魚ってこんな体当たりが強かったっけ?いくら壁を突破されないとはいえ、こうも物を叩くような音が絶えず両側から聞こえるというのはちょっと怖い


 しばらくすると魚が壁にぶつかるような音が次第に減っていき、遂には音が無くなった


「あれ?奴らも諦めたのか―――――」


 ——————カンッ!!


 言いかけた俺の目の前を何かの影が通り過ぎ、硬いものの上に硬いものが落ちたような音が俺の目の前から聞こえた。目の前に落下してきたと思わしき物体の正体は、口先の尖った魚だった


「え、何で魚が・・・?」


「ま、マスター!上です!!」


 ミカヅキに言われ上を向くと、その先には影の壁を越えこちらに落下してくる大量の魚たち。1匹、4匹9匹・・・と落ちてくる量は増えていき、それはまるで突然振り出した雨のよう・・・。今はそんなこと考えている場合じゃない!避けながら進むのはちょっと厳しいし、かといって捌きながら進もうにも上をずっと見ながらだと前方への注意が疎かになる。いったいどうしたら・・・


「そうだ!ミカヅキ、これを使え!」


 俺はミカヅキに影で作った傘を差しだす。あっちが雨のように降ってくるなら、こっちは傘で防げばいいだろう。少し大きめに作ったから、そうそう奴らの尖った口先が刺さることも無いだろう


「マスター!」


「なんだ!?」


「相合傘じゃないんですか!?」


「阿呆!そんなことしたら機動力が落ちるだろう!今はこの場を抜けることが重要だろ!?」


「そんなこと言って、本当は恥ずかしいだけなんでしょう?」


「・・・・」


「恥ずかしいだけなんでしょう!!」


 俺はそれ以上ミカヅキに返さずに傘を差しながら急いで橋を駆け抜けた。いや別に決して少しでも本心を掠ったから黙ったのではなくて、ただこの場をさっさと切り抜けたかっただけで・・・。何で言い訳しているんだろ、俺?

 

 魚の雨を切り抜け、俺たちは次の小島へとたどり着いた


「ま、まさかあの高さを超えて降ってくるなんて・・・」


「どうするんですかマスター」


「うーん、また傘をさして行くしかないのかな・・・」


「いや宿主よ、もっといい方法があるではないか」


「いい方法?」


「ああ。さっきの橋に屋根を付ければいいのではないか?」



 カゲロウが言ったとおりに橋に屋根をつけたドーム型のようにしたところ、これが大成功。横からも上からも魚に侵入されることは無かった。体当たりする音は響いているのでちょっと怖いんだが・・・。橋の中は下も上も横も塞いでしまったので暗いのだが、俺もミカヅキも闇の中でも目は見えるので問題なかった




ドーム型の橋を使い次々と小島を渡り歩いていった俺たちは、およそ中間くらいまで来たところで昼休憩をとることにした


 そうだ、せっかく魚がいるんだし、釣りでもしてみようかな。この魚も食べれないことは無いと思うし、こんだけ大量にいれば1匹も釣れないということは無いだろう


 影で釣竿を作り出し、釣り針の先端に羊モドキの肉を取り付ける。あ、撒き餌とかもやっっといた方が魚が集まるかな?細かく切った羊モドキの肉を水面に投げ入れる。数秒経つと、肉に誘われたのであろう魚たちが集まりだし


 ————————バチャバチャバチャバチャッ!!!!!


 なんかもの凄いこととなった。あれだな、鯉に餌をあげた時みたいになってる。狭い範囲に数十匹という魚がグチャグチャになりながら餌を奪い合っている。うん、気持ち悪いなこれ。とはいえ、今は絶好の食料確保の時間だろう。・・ほらもう釣れた。釣り堀よりも釣れるかも。この調子でどんどん釣り上げてやるぜ!!

 

 途中からミカヅキも釣りに参加し、結構な数の魚を確保したところで釣りは終わりにした。さて、次は釣った魚を焼いてみようかな


 えっと、まずは魚のウロコを包丁でとって、頭を切り落として腹を裂き内臓を取り出す。血は洗い流した方がいいよな。洗い流したら魚に塩を振る。・・・適当にやってしまっているが、これで当たっているだろうか?まあ、間違っていたら間違っていたで。俺たちなら死にはしないだろう


 と、ここで右側から気配がした。とっさに影のフライパンで叩き落としたそれは、飛んできた魚だった。おう、このヤロウこんな時にまで俺に仕掛けてきたのか。だが残念だったな!何度も何度も俺が食らうと思うなっ・・!?


 後頭部に衝撃を受けた。後ろを振り向き足元に視線をやると、そこには俺にぶつかってきたであろう魚が1匹。俺はそいつを掴みあげた


「マスター?手づかみで魚なんて持ってどうしたんです?」


 —————ボオオオオオォォォウッ!


「マスター!?何でその魚、炎に直で焼いているんです!?」


 ――――——ムシャア、ムシャア!!


「マスター!?無言で魚を食べないでください!なんか怖いですよ!?というかちょっと焦げてませんか、それ!?」


 ふう、食べきったら少しスッキリした。ただ、下処理なんてしなかったからウロコは歯に引っかかるし、内臓は美味しくないし、焼き過ぎて焦げた部分は苦いしでやらなきゃよかったと思った


 その後、ちゃんと準備をしてから焼いた魚の塩焼きは結構美味しかった



 

 昼休憩を終えた後は再び橋を使って小島を渡り歩き、何の問題も無く次の階へと続く扉へとたどり着いたのだった



はい、ということで肉の次は魚の回でした。この魚の階で、最後の方にダイオウイカみたいなのと戦わせようかと思ったのですが、無駄に長くなりそうだったのでやめました。サクサク進めたいのですが、このダンジョン編で何話消費するのだろうか・・・


次回、最初の中ボス戦!!

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