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33 不人気なダンジョン

33話目です。今回からダンジョン編に入ります。たぶん戦闘描写が多くなるんだろうなぁ。苦手な戦闘描写の練習を兼ねて頑張っていきますので、どうか期待せずにゆる~く読んでくれるとありがたいです

 エイルムの入り口に着いた俺たちは、門の前で身分証明書のチェックを行った。今回はアセトアの町の時と違って、ちゃんと俺もミカヅキも身分証明書となる冒険者カードを持っているから何の問題も無い


「・・・・よし、オーケーだ。ようこそエイルムへ」


うーん!何にも引っかからずに通行できるっていいね!!



 町の中に入った俺たちは、護衛依頼の完了を報告するためにとりあえずこの町の冒険者ギルドへと向かった。ギルドを探して町を歩いているうちに何となくわかったのだが、どうやらこの町は中心にある迷宮遺跡ダンジョンをぐるっと囲むようににつくられているようだ。ダンジョンって観光スポットとかにもなってそうだからな。それを中心に栄えていたりするんだろう


 そんな風にダンジョンを見ながらギルドを探し、右へうろうろ左へうろうろするも一向に見つからず、いい加減町の人たちに訪ねてみたところ、どうやらこの街の冒険者ギルドは俺たちが入ってきた入り口とは反対方向にあるらしかった。素直に町を一周すればよかったのに・・・。何て面倒なことをしてしまったんだ





「えっと、依頼の完了ですね。・・・・はい、護衛依頼の完了を確認しました。お疲れ様です」


 ギルドに着いた俺たちは護衛以来の完了の報告をして、報奨金をもらった。ついでに、ここに来るまでに出くわして倒した魔物の魔石も換金してもらった。これで多少お金は入ったな



「それじゃあアライ君。ここまでありがとう。また機会があったらよろしくね」


「はい、こちらこそ。ありがとうございました。また何かあったらよろしくお願いします」


 そして俺たちはストールさんとも別れた。ちなみにだが、旅の間の食事はストールさんが出してくれた。たまごサンドやハムサンド、サラダサンドにジャムサンドなど、実に様々な種類のサンドイッチを頂いた。普通においしかった。そして、結局俺たちが食べても3日間でストールさんのサンドイッチのストックが尽きることはなかったのだった・・・。どんだけ持ち歩いているんだよ!?サンドイッチ愛好家とかそういうのかな?


「それでマスター。この後はどうするんですか?」


「この後は・・そうだな、ダンジョンに行ってみるか」


「おお、ダンジョンに行くのか宿主。ふむ、いったい何が出るのか楽しみだな」





「いや~、大きいですね~」


「そうだな~。ここからだと見上げる形になるから首が痛いな。そろそろ折れるかも」


「いや、首が折れるって・・。一体どんな見上げ方をしているんだ・・・」


 ダンジョンのすぐそばにやってきた。いや~でかいね。町からパッと見た時もでかいなとは思ったけど、すぐそばまで来てみると迫力が違う。ちなみにだが、ダンジョンとそれを囲む市街地の間は距離がとられていて、その間には住居や店は建てられていない。ダンジョンの中には魔物がいるから、超近距離に人が生活するというのは危ないからだそうだ。まあ、今までにそんな事件は起きたことは無いらしいが念のためということらしい


「というか、このダンジョン。【エイルムの塔】でしたっけ?これってあれですよね。"塔"っていうより・・・・"超高層ビル"」


【エイルムの塔】という名前のこのダンジョン。だがミカヅキが言った通り、このダンジョン、"塔"というよりは"超高層ビル"と言った方が当てはまるような外見をしている。たしかダンジョンって元は旧時代の建物だったんだよな。これ、もとは何だったんだろう?ちょっと視てみるか・・・


「・・・・・へえ、なるほど!ミカヅキ、このダンジョンってもともとはデパートだったみたいだぞ!ちなみに名前は【エルフェルム】っぽい」


この町やダンジョンの名前が【エイルム】だから、もしかしたらこのダンジョンから取ったのかもな。だとしたら、微妙に解読できていないところがなんとも残念だ


「え、何でそんなことわかったんですか?」


「"視た"。あと、建物の名前はあっちに書いてある。こっからだとちょっと見えにくいかもしれないがな」


「あ、ホントですね」


 それとこのダンジョンを鑑定してみたら、なかなか面白いものが視れた


--------------------------------------------------------------

【種族】  魔物


【スキル】 迷宮


-------------------------------------------------------------


 なんと種族とスキルがあったのだ。魔物って表示されたけど、そもそも無機物のこの元デパートは生物なのかとかそういう疑問が湧くが、きっとこのスキル【迷宮】がなんとかしているんだろう


 あ、種族が魔物になっているということは、ダンジョンは魔物の核である魔石を持っているということだよな。その魔石をとってしまえば、見事ダンジョンは死んだことになり機能しなくなるということだな!!まあ、そんなことはしないけどな


「よし、じゃあダンジョンに行ってみるか」




俺たちはダンジョンに入るため、ダンジョンの前に建っている通称"ダンジョン受付所"と呼ばれるところに向かった。なんでもこの場所が一応ダンジョンの管理をしているところになるらしく、ダンジョンへの出入りはここを通してから行くらしい


 早速俺たちは受付所の中に入ってみる。中にいたのはダンジョンに挑もうとするたくさんの人々・・・・・ではなく、気怠そうにカウンターに座っている受付のお姉さんだけだった


 あれ?人少なくない?というかいなくない?俺の予想ではもっとこう人が集まっていて、やかましいくらいにガヤガヤしているものだと思ったのに、現実では人ではなく閑古鳥がやかましいくらいに鳴いている


「あら?挑戦者かしら?このダンジョンに挑もうなんて珍しいわね」


 受付のお姉さんがこちらに気が付いたらしく話しかけてきた


「はい。俺たち初めてダンジョンに挑もうと思っているんですよ」


「初めて挑戦するダンジョンがここって・・・、あなたたちかなり選択ミスしたわね。まあ別にいいんだけれど」


 選択ミスをした?どういうことだろう


「あの、選択ミスってどういう・・・」


「このダンジョンは別名【黒群の塔】って呼ばれていてね、踏破者がいないどころか7階層以上に上った人がほぼいないのよ。というより、まずほとんどの挑戦者が1階層で諦めるわね。だから初心者は普通こんなところに挑戦しない。そして初心者じゃなくても挑戦しに来る人はあんまりいない。それこそわたしが一人でも仕事をこなせるほどにね」


 なるほどねえ、それで人がいなかったわけか。だけど、誰もが攻略できない高難易度ダンジョンを俺が颯爽と攻略したら、さぞかし気持ちがいいんだろうなぁ。うん、このまま行こうか。無理だと思ったら諦めればいいんだし


「なるほどわかりました。でも、俺たちは行きますよ。あ、行く・・よな、ミカヅキ?」


「ええ、もちろんです。私はマスターの嫁ですから」


 ・・・・・わー、そんなのあったなー。完全忘れてたぜ。というかこれ嫁関係なくない!?


「ふーん、わかったわ。それじゃあ死なないように頑張ることね。・・・というかあなたたち随分と身軽だけど大丈夫なの?」


 大丈夫・・・?大丈夫とはいったい何が大丈夫であればいいのだろか?そんな風に考えていると、お姉さんが若干呆れたように話してきた


「はあ、そういえばあなたたちダンジョンへの挑戦は今回が初めてだったわね。いい?ダンジョンへの挑戦には武器などの装備は勿論のこと、食料なども大事になってくるわ。階層ごとに入口へ戻ってこられる魔法陣はあるけれど、一度戻ってしまうともう一回1階層から挑戦しなくてはいけなくなるの。だから、ダンジョン攻略するなら基本はダンジョン内での寝泊りになるの」


「それで食料が重要になると」


「そういうことよ。まあ、ダンジョン攻略の詳しいことはそこにある【☆迷宮遺跡ダンジョンガイドブック☆~攻略に必要な基本的なことやあれこれ~】に書いてあるから」



 ここにもそういう本が置いてあるんだ・・・。というかミカヅキがもう早速読み始めているし。しかも流し読みより少し早めのペースで


「これは私の仕事です!!」


あ、そうですか・・・


「それで、食料とかは大丈夫なの?」


「ええ。大丈夫です」


「そう、ならいいわ」


 食料に関しては大丈夫だ。ここに来るまでにいろいろと店を回って買い込んでおいたし、実はストールさんからサンドイッチのおすそ分けをもらっていたのだ。だからあの人はどんだけサンドイッチを持っているんだよ!!もうサンドイッチ屋でも開いてしまえばいいのに


「読み終わりましたマスター!」


ミカヅキもガイドブックを読み終わったようだ。相変わらず読むの速いな~。これで内容全部を覚えているんだからすごいもんだよね


「よし、じゃあダンジョンに入るか!!」


「ダンジョンはあっちが入り口よ。それじゃあ、頑張ってね」


「はい。こちらこそいろいろと教えてくれてありがとうございました」




俺たちは受付所を出て少し歩き、ダンジョンの入り口にまでやってきた。ダンジョンの入り口は元デパートらしく自動ドアになっているようだ。いまは自動ドアが反応しないところに立っているためどあは開いていない


「ふう、それじゃ行くぞ!ミカヅキ、カゲロウ!」


「はい!」


「さて、どんな奴が出てくるのやら・・・」


俺たちは自動ドアの前に立つ。すると


 ―――――――ウィーン


 という音と共にドアが開く。そして開かれたダンジョンの中は・・・・・ただただ真っ黒だった


 それは、なるほど【黒群の塔】の呼ばれるのにも納得がいく黒だった。しかし、"黒"というのはわかったが、では"群"とはいったい何を指すものなのだろうか?もっとダンジョンの先にいけばわかることなのだろうか?


だがそんなことをしなくても、このダンジョンが【黒群の塔】と呼ばれる原因となった一つ。"群"の意味を俺たちはすぐさまわかる、いや、思い知らされるのだった



はい、ということでストールさんはサンドイッチ愛好家かもしれないという話でした。最近サンドイッチ食べてないなあ・・・


次回、ダンジョンに入り・・・

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