31 笑いあう
31話目です。えー・・・・、今回も予告を無視していますすみません!!というか予告のところにまでたどり着いていませんすみません!!でもどうか、楽しんで読んでいってください!!
そうだよ、町で食料買ってないから今"影の食卓部屋に入っている食べられるものって魔物の肉以外ないんだった!!うわ~、またあの不味い肉を食べなくちゃいけないのか~。しかも、ここ最近普通にうまい物食べていたから、余計に不味く感じるだろうな、絶対に。はぁ~、やっちまったぞこれ・・
「悪い、ミカヅキ。今、島の魔物の肉しか持ってない・・」
・・・・・。あれ?ミカヅキの反応が無い、ぞっ!?ミカヅキは、死んだ魚のような眼をしていた。それも死に立て新鮮なやつではなく、死んで一週間くらいそのまま放置されていた魚のような眼だった。目は俺を向いているはずなのに、どこか遠くを見つめているような・・・。なんだろう、これもう怒っているとかそういうの通り越して只々絶望みたいな感じだな。なんか怖い!!これなら怒ってくれた方が俺の方もまだ精神的に助かったよ!!
「・・マスター、それで、私たちのお昼ご飯はどうなるんですか?」
「え、えっと。この魔物の肉を食べるしかないかな。・・って思いますです。はい」
喋り方はいつも通りなのに、得体のしれない威圧感を感じたもんだから、思わず変な敬語使っちゃったよ
「魔物の肉をですか?不味いしか感想の言いようもないあの島の魔物の肉をですか?」
「だから、町で何も買ってなかったんだから魔物の肉しか・・・入ってないんですすみません」
このままではいけないと俺も少し強めの態度で出てみようかと思ったが・・・。すまない、だめだったよ。というか、ついつい謝ってしまったが、俺はなぜ謝ったのだろう。いやいや、これは俺のせいだけじゃないはずだ。食料のことで言ってくれなかったミカヅキにだって非はあるはずだ!!
「はあ、もう、わかりましたよ。魔物食べますよ。まあ、私も食料のことを言わなかった責任は多少なりともありますからね。そのかわり、次の町に着いたらまた二人でいろんな物を食べましょうね」
なんだ、ミカヅキもそういう思いはあったのか。なら、まあ別に、わざわざ俺が何かを言う必要もないよね。次からは二人とも気を付けるとして、今回は笑い話にでもすればいいか
「ああ、そうだな。今回の道中の分も、町に着いた時にいろいろ見て回るか」
にしてもなんだろうな。こう、うまくミカヅキに乗せられた気がしないでもないんだが・・・。まあ、いっかな
「というかマスター。そもそもその肉は食べても大丈夫なんですか?いい加減に腐ってそうな気がするんですけど・・・」
「そのことについては心配ないぞお嬢ちゃん」
急にカゲロウの声がしたもんだから、ちょっとビックリした。コイツ全然しゃべらないと思ったら急に話しかけてきたりするからビックリするんだよなあ。これでも結構慣れてきた方なんだけどね
「カゲロウか。昨日の夜から全然出てこないからどうしたのかと思ったぞ」
「ああ、ワタシは先程まで寝ていたのだ。昨日は屋敷中の人間の記憶をいじくったからな。あれ、結構疲れるんだぞ?」
そういえば、カゲロウにはあの作戦上でなかなか重要な部分をやってもらっていたな。人の記憶をいじるなんて作業、そりゃあ大変だろうな
「そうだったのか。そりゃお疲れさん。で、魔物の肉が大丈夫っていうのはどういうことだ?」
「ああ、そうだな。この"影の食卓部屋"の"収納"の効果でな、中に入っているものの経過時間を止めるというものがあるのだよ。だから、ボックスの中に入っている肉なんかは腐ることなく保存されているということさ」
なんという便利機能!!食べ物を入れても腐らないというのはものすごくありがたいな。これがあれば賞味期限とか、要冷蔵とか気にしなくて済むんだもんな
「さて、肉も問題ないことが分かったし、焼いて食べますか・・・」
俺が決意を固め、"いざ焼かん!!"とブラックボックスから魔物の肉を取り出したとき、近くにいたストールさんが声をかけてきた
「あのう、よかったらこれ、どうです ?」
そういって差し出してきたのはホットドッグのようなパンだった
「え、えっと?」
「いやあ、実は先程の話、聞こえていたんですよねえ。何やら食料がないようですし、よかったらどうですか?」
あ、あの会話を聞かれていたのか・・・。どうしよう、すごく恥ずかしい・・・
「で、でもいいんですか?これだとストールさんの分が無くなってしまうんじゃ・・・」
「いえいえ大丈夫ですよ。まだまだたくさんありますので」
まだまだたくさん?とてもそんなに持っているとは思えないんだが・・・?というかこの人、旅をするにしてはだいぶ荷物が少ないような・・。俺たち?ブラックボックスがあるから手ぶらでも全然問題ないのさ!!
「ああ、ぼく"道具箱"のスキルを持っているんですよ。だから、見た目以上に物は持っているんですよ。さあ、どうぞ食べてください。一人では余ってしまいます」
道具箱なんてものもあるのか。たぶん俺のブラックボックスと同じか、似たような効果があるんだろうな。それにしても、ストールさん・・なんていい人なんだッ!!どこかの領主の件があるから、差し出されたホットドッグに一応鑑定かけてみたんだが、何にも仕込まれていなかったよ!!普通においしいホットドッグだったよ!!異世界初遭遇の一般人がこんな人だったらよかったのになあ・・・
昼食を兼ねた休憩を終えた俺たちは再びエイルムに向かって歩き始めた。歩くこと一時間近く、遂に敵に遭遇した。出てきたのは4体のゴブリンのグループだった
「なんだゴブリンか。レベルは・・・20代。うん、まあ知ってた」
「いいんじゃないですか?私たちは護衛の仕事なんてこれが初めてですし、対象を守りながら戦うなんてことは慣れてませんからむしろ問題が無さ過ぎてありがたいくらいですよ」
それもそうだな。というかこれ、やっと護衛っぽい仕事がきたんじゃないのか?よし、じゃあさくっとやってしまいますか。えーっと、相手は剣が2体、棍棒が1体で弓が1体か
「ほいっと」
―――――――グサグサグサグサッ!!
ゴブリンが、俺が"カゲアソビ"で作った棘に貫かれて倒れる。手早くやったものだから、ゴブリングループ、突撃どころか弓すら使えずに全員やられてしまった
「ふう、やっぱりたいしたことな」
「マ、マスター・・・」
「ん?どうしたミカヅキ」
「どうしたじゃありませんよ!!何ゴブリン一人で片づけているんですか!!私も倒したかったですー!!私も何かしたかったですー!!」
「お、おう。悪かったな。じゃあ次はお前に任せる」
「絶対ですよ!!」
そしてそれは案外早くにやってきた。ゴブリンを倒してからさらに一時間ほど、今度はスライムが3体出てきた。うーん、今日もこいつらはプルプルとしてるなあ。あのスライムボディをつついてみたいぜ。まあ、こっちが襲われるからやらないけど
「やっと私の番です!!それじゃあ・・せいっ!!」
――――――パキパキパキパキッ!!
なんてことでしょう!あのプルプルボディだったスライムたちの体がミカヅキの氷の魔法によってカチコチに凍ってしまいました!!
「さらに・・・とうっ!!」
――――――パキンッ!!
そしてスライムたちを物理的に壊しに行った!!これは前に依頼で出てきたジャイアントスライム戦と同じやり方だな。スライムに打撃を使うとしたらこのやり方が一番簡単だし、何よりも割ったときの音が爽快なのだ
「ふう。満足しました!」
「そうかい、それはよかったな」
うん、ミカヅキも不満を解消できたみたいで実によかったよ。ふとストールさんを見てみると、何故か半笑いになりながらこっちを見ていた
「どうかしましたか?」
「いや、君たちは強いなと思ってさ。さっき君たちからも"魔物との戦いは慣れている"って聞いてはいたんだけど、こんなにとは・・・。冒険者というのはみんなこんなかんじなのかい?」
「それは・・・人にもよるんじゃないですかね?ぼくらは最近冒険者になったばかりなのでよく知らないですけど」
「そうか、ならぼくは君たちに護衛についてもらうことができて運がよかったんだな」
そう言ってストールさんは笑った。俺も、"こちらも食料を分けていただいて運が良かったです"・・・とはさすがに口にできないので、そういう意味を込めて笑った
たとえ含む意味が違えども、確かにそこは俺たちの笑いで包まれていたのだった
はい、ストールさんはいい人という回でした。なんか、話の切り方も微妙なかんじになってしまいました・・。え?いつものこと?そ、そんな・・・
次回、果たして"あの方"は登場するのか!?というかさせたい!!




