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閑話 やがて巡り合う物語

閑話です。あ、"別話"じゃないですよ。閑話です。

今回三人称視点で書くことにチャレンジしてみました。いや~、難しい。あと、すっごい話が長くなった。2話で区切ってしまおうかと思いました。(区切ってません)


あとみなさん。淹れ立てのコーヒーは冷ましてから飲んだ方がいいですよ。舌を火傷します

 少年はそこに立っていた。眼前に広がるは美しい野原と草花である。普通、そのような光景を目の当たりにすれば、その美しい光景に対して感嘆の声をあげるところだろうが、少年の胸中の大部分を占めるのは大きな戸惑いであった。それもそのはず。つい先ほどまでいたのはコンクリートと鉄に囲まれた科学の発展した現代技術にあふれた少年の住む町であり、こことは全くもって逆の景色だったのだから


(ここはどこだ?僕は何でこんなところにいるんだ?)


 少年は自信の戸惑いを落ち着かせるように、この場所に来るまでの過程に思考を働かせていく




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 少年はこの日もいたって普通に過ごすはずだった。朝に起き、朝食を食べ、着替え、家を出る。周りの同年代とも代わりのない日を過ごしていく。少年はそうあるものだと思っていた


「行ってきまーす」


 そして少年は普段と変わらずに家を出た。だが、一ついつもと違う点があるとするならば、それは少年はこの日二日ぶりに家から出たということだろうか


(うーん、二日ぶりか。怠いなあ。今日はゆっくりと休みたいよ。みんな、何か声かけてくるかな?いや、むしろ休んでいたことすら気づかれていなかったりしてね)


 少年はそんなことを思いながらいつもの道を通り、いつもと変わらない場所を通り過ぎていく。そして少年の目的地であるその場所がある階まで階段を使って登っていく。そして、階段を上りきったその最後の一歩を地面につけた時、それは起こった。少年を中心におよそ1メートルほどの、何やら不可解な文字の刻まれた光が突如として現れたのだ。それはもはや、文字というより模様のようであった。


(な、なんだこれ!?ま、魔法陣!?一体何が!?誰が!?)


 見たことも無いその模様が何なのかをを少年は瞬時に理解する。ファンタジー作品に触れていれば目にすることの多い、いわゆる魔法陣というものにそっくりだったからだ。しかし、そんなものが存在するのは架空の世界の中だけである。現実にそんなものが存在するはずがなく、まだ"誰かが仕掛けた手の込んだイタズラだ"と考えた方が理解が及ぶ。しかし、とっさに周りを見渡しても、少年が立っている場所の近くには人の影も、また、何者かが近づいてくる雰囲気さえも無かった。再び少年に疑問が浮かぶが、そんな間もなく、そのまま少年は現れた光に吸い込まれるかのようにしてその場から消えてしまった



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




(ダメだ。全くわからない。やっぱり僕はあの階段から落ちて死んだってことで、あの時見たのは単なる記憶違いみたいなものだったのかも)


 少年はそう結論を出し、少し落ち着きを取り戻すのと同時に、"死んじゃう前に、もっといろんなことしてみたかったな"という後悔が浮かび上がってきた。そんな時、少年の目の前に一人の人が現れた


「お!次の人が来た!!今回はきちんと仕事をこなしてみせるぞ!!」


 彼は少年とそうあまり変わらない年齢をしているような見た目ではあったが、明らかに纏う雰囲気が違っていた。そこらの一般人とは全く違う、今までに相対しことのない雰囲気を発する者を目の前にした少年は、先程までずいぶんと落ち着いてきていた心が今度は緊張をし始め、その場に硬直するように立ち尽くした


「えっと、初めまして。ぼくは君たちから"神"と呼ばれる存在かな。といっても、ここには最近入ったばかりだから下っ端の下っ端・・・うん、というより見習いの立場なんだけどね。あ~、えっとね、だからそんな緊張しなくてもいいから。楽にしていいよ」


 自らを"神"であると言った彼は、少年に気軽に話しかけた。普通、自分のことを『神だ』なんて言う人を見れば、頭のおかしい人か、ちょっとイタイ人なんだと思うだろう。どちらにせよ関わり合いを持ちたくないような人間であることには変わりない。しかし少年は、先程見た魔法陣のような謎の光、気が付けば美しい草花が咲く豊かな自然がある場所に居たという摩訶不思議な状況から、目の前にいる"神"と名乗る彼が、どうにもただの頭のおかしい人という風には思えなかった


「神様・・ですか・・?」


「うん、そうだね。神様だね?」


「ということは、ここは天国かな。やっぱり僕は死んでしまったということなんですかね」


 と、少年は言った。"階段から落ちて死ぬなんて間抜けな死に方だなぁ"とまるで他人事のようにつぶやく少年の一言は、未だ自分の死を自覚していないものなのか、それとも何かを諦めた心境からのものなのか。あるいは、それとはまた違った感情なのかどうかはわからない。だが、神と名乗る彼の口から告げられた言葉によって、少年は勘違いをしていることに気づかされる


「え?君が死んでいる?違う違う!!君は死んだんじゃなくて、今から異世界召喚されるんだよ。ここはその通り道みたいなものだよ」


 少年は呆気にとられる。"開いた口が塞がらない"という古くから伝わる言葉をその身で実践しながら


「異世界!?召喚!?え、え?僕は死んだんじゃあ・・・。だから、今目の前に神様がいて、ここは天国・・・」


「いや、確かにここは君の言う天国・・というか天界だし、ぼくは神だけど、何も神とは死後にだけ会うとは限らないんだよ?神にだっていろんな役回りがあるんだ。ぼくは君みたいな世界を渡る者を対象に仕事を行う部類の神なのさ」


「な、なるほど」


「というか君

、ここに来る前に、魔法陣とか見なかったのかい?」


 見るには見ていた。というよりガッツリと魔法陣は見たし、実は"異世界転移"という言葉も一瞬だけ少年の頭を過ったのだが、"そんなことがあるはずがない"と少年の思考からは外されていたのだ


「まあいいか。それで、君は今から異世界に行く。そして僕の仕事は君に召喚先の異世界について簡単な説明をすることさ。それじゃあまず、君が今から行く世界の名前から。その世界の名前は"テラルス"。剣と魔法と魔物なんかが存在する世界だよ」


 唐突に始まった神からの説明。少年は聞き逃すことのないようにしっかりと耳を傾ける。が、神の言った"魔物が存在する"という言葉に、ついつい突っ込まずにはいられなかった


「え、魔物がいるんですか?」


「うん?魔物?ああ、いるよ。結構いるよ」


「待ってください。魔物って、ゴブリンとか、コカトリスとかそういう感じの魔物ですよね?そんなの、僕死んじゃいますって」


「それは大丈夫。あっちの世界に行ったら、何かしらの能力スキルが使えるようになっているはずだから。あと、あっちの言葉もわかるようなスキルも付くから問題ないよ!!たぶん」


 神の話を聞き、少しだけ安心を感じた少年だったが、最後の"たぶん"というなんとも不確定な言葉を聞いたとたん、再び不安が押し寄せてきてしまった


「あの、神様。僕につくスキルって、魔物とも戦えるようなものなんですか?」


「えーっとそれは、僕にはわからないかな?戦闘系のスキルかもしれないし、生産系のスキルかもしれないし・・・」


「そんな!!あ、あの、やっぱり僕異世界行きたくないんですけど、元の世界に返してもえませんかね・・?」


 自分が生きていけるかどうかが決まるスキルも、もしかしたら戦うことのできるものではないかもしれないとしった少年は、神に自分を元の世界に戻すことを要求した。だが、神から告げられたその言葉は少年を大きく落胆させることとなった


「残念だけど、それはできないんだ」


「なっ!何でですか!」


「今回君を召喚したのは向こうの世界の者だ。だから、ぼくたちはそう簡単に干渉することはできない。というか許可されていない。これは僕の立場が低いこともあるんだけどね」


「そう・・ですか・・・」


 少年はこの神から、元の世界に返してもらうことは無理そうだと諦めることにした。だが、少年には悠長に落ち込んでいる暇など無かった


「おっと、もう時間のようだ。じゃあ、今から君を異世界に送る。そこに立っていて」


「えっ。ま、まだ聞きたいことがっ」


 これまた突然のことに少年は焦る。だが、神は少年の心情とは関係なしに転移の準備を手早く済ませる


「それじゃあ、頑張って。君の幸運を祈ってるよ」


 その言葉とともに、少年は再び光に包まれた。そして、草花の生い茂る天界から、まだ見ぬ異世界へと送り出されて行ったのだった





 少年が送り出された直後の天界。そこに、少年を送り出した神は立っていた


「さて、今日のぼくの仕事は終わりかな?先輩に報告しないと。いやあ、今日はいつもよりうまく対応できたな。これはもしかしたらほめてくれるかもしれないな!!」


 そう神は喜々としてこの場を去っていった。果たしてこの神は、仕事がうまくいったことに喜んでいるのか、それとも"先輩"なる神に褒められる可能性があることに喜んでいるのか。それはまさしく、"神のみぞ知る"といったところであろう




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 少年の眼前に広がるのはまたしても草原だった。しかし、先程いたところと比べるといささかその美しさはん見劣りしてしまう。さすがは天界と言ったところであろうか。だが、少年にとってそこは問題とするところではなかった。少年はこの草原に一人で立っているのだ。ここがどんな場所なのかも、どこに行けば人の住む場所にたどり着けるのかもわからない不安感。そして、こんなわけのわからない場所に自分一人という心細さが少年を襲う。そんな時、少年の周りにいくつもの光が現れた


(これは、魔法陣!?)


 そう、それはまさしく少年が異世界なんて場所に来ることになった原因であり、そして今は、少年の心を安心させるものだった


(よかった!僕以外にもこの世界に来た人はいたんだ!!どんな人かな?もしかして、知り合いとかいたりするかな?とりあえず友好的にいかないとかな)


 光が収まり、魔法陣から現れた者たち。それは少年の予想を外れ、また、期待を大きく裏切るものだった。それはまさに"異形"であった。巨大な全身鎧で中が見えない者。"巨人"そう呼ぶに相応しい、見上げなければその頭部を確認できないほどの巨体を持つ者。そして爬虫類の鱗を持ち、鋭い牙や爪、大きな翼を背中に生やした、神話上やファンタジーなんかでよく登場する伝説の生物"ドラゴン"。その他いろいろといるが、そんな見るからに善人とは思えぬ雰囲気を出す者たちが魔法陣から現れたのだ。少年はこの一瞬で悟った


(無理だ。これとは絶対に友好関係なんて築けない!!下手をしたら僕が殺される。くそう、もっとまともな人はいないのか!?)


 少年は縋るようにあたりを見回す。すると、少し離れたところに普通の人の見た目をした者が二人いた。その二人は何故かメイドのような格好と執事のような格好をしていたが、今の少年にとっては何の問題もない話である。重要なのは、会話が成立しそうな人がいたということだ


(とりあえず、あの人たちのところに行こうっ)


 少年は駆け出す。駆け出して数歩、少年は突然影で覆われた。その影の元が太陽にかかった雲であればどんなに良かったことか。だが生憎のこと空には太陽が輝き地上を照らしている。では、少年を覆った影を作り出したのは何か。それは巨大な尻尾であった。尻尾の持ち主は先程魔法陣より出てきたドラゴン。そのドラゴンが尻尾を振ったのだった


 一つ言っておくと、ドラゴンとて、わざと少年に向かい尻尾を振り下ろしたのではない。鳥が空を飛ぶように、人間が手を動かすように、ごく当たり前に尻尾を振っただけなのだ。そこに運悪く少年ががいた。ただそれだけのことだった。しかし、少年にとっては"ただそれだけ"なんて言葉では片づけきれない。何せ自分の体と同じくらいの太さの尻尾がかなりのスピードで向かってくるのだ。当たればただでは済まないことは明白だ。下手をすればこの一撃で死ぬかもしれない


(やばい、これは、死ぬかも・・・)


 迫りくる尻尾をスローで見ながら少年は思う。人間は生命の危機的状況に陥ると脳の処理速度が上がり、動きがスローモーションに見えるようになるという。少年もその状態になっていた。だが、今は何よりこの状況をなんとか回避することが最優先事項である。少年は迫りくる尻尾をスローで見ながら必死に考える。

しかし、解決策は浮かばなかった。そしてその時にはもう、尻尾は少年の眼前にまで迫っていた


(ちくしょう!!こんなところで僕は死ぬのか!!)


 ドラゴンの巨大な尻尾が少年に当たる。少年はその計り知れない衝撃を直前に目を思い切り瞑る。そして1秒、2秒、3秒が過ぎていった。その間に少年には尻尾の当たる衝撃どころか、何かが掠るようなことも無かった。不思議に思った少年が目を開けると、そこには誰もいなかった。ドラゴンも、巨人も、メイドと執事も。少年は何が起こったのか理解できていない。ただ一つ理解できるのは、"自分は死んでいない。生きている"ということだけであった


(ぼ、僕は助かったのか!?周りにアイツらは見えないけど、もうあんなのと関わりたくない!!どこか、遠くへ行こう)


 少年は歩き出した。どこへ向かえばいいのかなどわかるはずが無かったが、とにかくどこかへ、どこかへと移動がしたかったのだ


 少年が歩き始めて数時間。いまだ人どころか何とも遭遇していない。ただただ何も無かったが、魔物が出なかったことに関しては運が良かったと言えるかもしれない。さすがに疲れてきたのか息が乱れ始める。頬も上気し、体が熱くなるような感覚になる。そして、遂に少年は地面に倒れてしまた。明らかに疲れだけが原因じゃないと見て取れる


「そうだ、僕、病み上がりじゃないか・・・」


 そうして少年は、地面に倒れこんだまま静かに目を閉じた





少年が倒れこんでからさらに時間が経った。そこには倒れこんでいる少年を見る人の影があった




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




 少年は目が覚めた。ふとあたりを見回すと、そこがいつもの自分の部屋でないことに気が付く。そして、少年は自分が異世界に来た事、ドラゴンの尻尾で死にかけたこと、歩いている途中で倒れてしまったことを思い出した少年は勢いよく自分が寝ていたベッドから体を起こした


「ここはっ!?どうして僕はここに!?」


 その時、部屋の扉が開き一人の少女が入ってきた


「あ、起きたんだ」


 扉から入ってきた少女に少年は警戒する。ここは異世界、先程のように注意力が欠けていてはすぐに死んでしまう。この少女は一体何者なのか、そして今の自身の状況。まずはそれを訪ねることにした


「君は・・誰?どうして僕はここにいるんだい?」


「私?私はエミティア。この家の娘よ。あなたは、町の外で倒れていたの。熱が出ているようだったし、ほっとくのもあんまりだから家まで連れてきたの」


「そうか、僕を助けてくれたのか。本当にありがとう」


 少年は感謝の気持ちを込めて深々と礼をした。あのまま放置されていれば、動けぬところにまものが現れ、少年は食い物にされて死んでいただろう。エミティアはまさしく少年の命の恩人ともいえる存在である


「それで、あなたの名前は?何で倒れていたの?」


 この問いに少年は困ってしまう。果たして、ありのままを話したところでこの少女は信じてくれるのか。そもそも、自分が異世界から来た事などを言ってしまってもいいのか。だがとりあえず、自分を助けてくれたこの少女に、最初に明かすことができるものがある。少年は少女に告げる


「えっと、僕の名前は――――――――」


 


 これは、とある少年が異世界に召喚され、やがてある者と巡り合いこの世界を救うのに貢献するための物語。その始まりである



はい、ということで閑話でした。この話は、本編の予告みたいな感じですね。はい。

さて、この話に登場した"少年"。それはいったい誰なのか!?正解は、いつか本編でっ!!


次回、本編に戻ります。そろそろあの方の登場ですかね

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