27 問屋が卸さない
27話目です。"vs領主"の中編となりました。そうです。やる気が続きませんでした。
さらに、投稿も遅れてしまうという始末。これで何度目だろう・・・。もういっそ『投稿間隔3~4日ごと(希望)』にしてしまうか・・・
スープが熱くて忘れていたが、ズボンにめちゃくちゃスープがかかっているんだよね。ズボンが濡れていて気持ち悪いです。はい
「うーん、何から話そうかな・・・。ああ、このアセトアの町が辺境にあるのは知っているよね?」
それは知っている。最近この世界の歴史を学んだときに、地理についても調べたからな。たしかこの町の先にある・・・
「この町の先にある、強力な魔物が大量に存在する"魔の森"。そこに近いこの町の周辺には、結構魔物が出るんだよね。その魔物を倒しに冒険者が集まってきて、この町は辺境ながらも賑わっている」
そうそう、魔の森だ。ちなみにその魔の森というのは、俺たちが島から転移してきたとき最初に辿りついたあの森らしい
「でも、いくら冒険者がいるといっても町の防衛費っていうのはかかるんだよ。辺境で、出てくる魔物のレベルも高いこの町なら、他の町と比べてもなおさらだ。しかもそれだけじゃない。費用がかかるのは町の内側についてもだ。この町の運営や、治安維持、その他もろもろとね。魔物を倒してくれる冒険者はありがたい存在ではあるけども、気性が荒い輩も多くてね。いろいろ大変なのさ」
あー、俺も町で絡まれたりしたもんなあ。ああいうのの取り締まりはたしかに大変そうだ。まあ、たぶんあのときのヤツらは冒険者じゃなかっただろうが
「それに加えて、近年魔物が活性化してきてね。今まで以上に出費するようになってきた。これ以上になると、領民からの税でも足りなくなる」
財政危機ってやつなのかな?でも、これだけで人を奴隷として売ろうとしたりするのか?
「そんな時にだ。王国から増税するという通達が来てね。それもかなり重い増税だ。王国が税金を上げた理由、わかるかい?
―――――"異世界から勇者を招くため"
だそうだ」
異世界からの勇者・・・。あれ?俺たちのことじゃない?いや、厳密に言えば、俺はクラスのみんな共々この異世界に召喚される前にまったく違う超危険地帯に転移したので、勇者ではないのだが。ということは、ここは本来俺がちゃんと召喚されるはずだった国ということなのか。しかし、勇者召喚のせいで、勇者にならなかった俺が今とんでも無いとばっちりを受けているというのはどういうことなのだろう・・・。世の中理不尽だなあ・・・
「勇者は魔王を倒してこの世界を平和にしてくれるらしい。だから、その勇者をもてなすための資金にするために、税金を多く取るのだそうだ。それに、勇者というのは魔王を倒すのが目標なんだろう?ならばこの活性化した魔物はどうなる?当然そのままだ。なら、勇者が何とかしに来るか?それは無いだろう。わざわざこんな辺境の町に来て魔物を倒し続くてくれるなんてのはありえない話だ。そもそも、根本的な解決にはなっていない。ふふっ、これでは勇者が世界を救うよりも先に私たちが潰れてしまうな」
まあ、そうだろうな。勇者というのは世界の脅威となる魔王なんかと戦うものだ。物語上においても、どこかの町をわざわざ行って救うようなことはしていないのがほとんどだ。そんなことをしていたら、敵が先に世界を滅亡させるなんてことがあるかもしれないからな。さらに言えば、この世界の魔物は魔王という存在とはつながっていないから、"魔王を倒す=魔物を倒す"ということにはならない。だから、勇者が魔王の脅威から世界を救ったとしても、この町などが魔物の脅威から救われることはほぼない
「だが、そんなことは絶対にさせない。代々アセトアの家が治めてきたこの領地を手放す、ましてや滅ぼすことなんて絶対にさせてたまるものか!そんな時だ。とある者が私に取引をかけてきたんだよ。その者はわたしにこう言った」
『アセトアの領主よ。わたしと取引をしないか?わたしはこの領の支援を行おう。魔物の駆除でも、金銭 的な面でもやろう。その代わりにアナタはこちらに奴隷として使えるものを渡してほしい。種族・年齢・ 性別は問わない。どうだ?これはそちらにとってもいいものだと思うのだが?』
「わたしはこの取引に乗った。だけど、この取引にはわたしたちにとって少しばかり問題があった。そう、奴隷の確保だ。奴隷は一回渡せばいいというものではないから、数が必要だ。だが、わたしは奴隷を持っていない。しかしそうなってしまうと、取引は無かったことになってしまう。そこで思いついたのが、そう、キミたちのような旅人などを奴隷にするということだ。この町は冒険者や旅のものがよく来る。さらに、近くには人がほとんど通らない林道があるからね。都合よく確保することができたよ」
なるほど、あの道で迷い歩いていた俺たちはまさしく恰好の餌食だったということだな。しかし、一つ疑問がある
「お前は俺たちを奴隷にすることが目的だと言った。なら、なぜすぐに薬を使わず、わざわざ俺たちをもてなして、食事に毒を入れるなんて回りくどいことを・・・?」
「うーん、それは・・・"楽しいから"かな?」
「楽しいから、だと?」
「そうだよ。今までよく接してくれた人に裏切られたときの表情って言うのはなかなかに面白いものさ。そしてそこに至るまでの時間の経過も楽しいものだ。キミはそう思ったりはしないのかい?」
そんなこと思うかっ!!・・・なんてことはない。人間少なからず、他者を馬鹿にして面白がるものだと思う。他人が失敗すれば笑うし、自分の嫌いなヤツが多少なりとも不幸にあえばそれを喜ぶ。そんなものだろう。というか、俺も現在進行形で演技してコイツを騙して楽しんでいるところだしな。あー、コイツよりましとはいえ、多少なりとも意見が似たことがショックだよ
「さて、だいぶお喋りが過ぎてしまったね。じゃあ、そろそろキミたちの終幕といこうか。じゃあねアライ君。この4日間楽しかったよ」
これで、話は終わりか。まあ、なかなかに面白い話が聞けたと思う。話が終わった領主は、俺たちを捕らえようとする。だが残念。そうは問屋が卸さないってんだぜ!
「俺たちの終幕?いや違うな。終幕になるのは、お前の方だぜ?」
演技を終わりにして俺は立ち上がる。さて、どうだ?騙していたと思ったら騙されていたという感想は?お前の驚きに満ちたアホ面笑ってやろうじゃねーか!!なんか、俺のほうが悪役みたいだな・・・
そう思いながら、領主を見てみる。・・・あれ?なんか余裕そうな顔しているんですけど!?
「・・・ふむ。やはり薬は効いてなかったということかな。予備でアレを準備しておいてよかったな」
え、えーっと。これはもしかして・・・
「宿主よ。たぶん作戦がばれてたな」
どうやら、問屋が卸さなかったのは俺たちの方のようでした
はい、ということで、バトル描写一切無しな回でした。自分はどうやらシリアスを書くのが苦手なようです。いつにも増して文章が下手な気がする・・・。
次回、"vs領主"の後編にして『異世界初めての町編(仮)』の最終話(になったらいいな~。)です




