26 思わぬ敵
26話目です。前回の説明回の、ダイジェスト的なものが今回の最初に載ってます。前回無駄に長々と書いた意味はいったい・・・。考えないことにしよう
史書を読んだことで、この世界の歴史について多少なりと知ることができた。いやあ、よかったよ。別に俺たちタイムスリップしたわけじゃないんだね!あの施設は旧時代の建物、迷宮遺跡ってことなんだね!いや、でも待てよ・・。あの施設は迷宮みたいなかんじはしなかったぞ?ということは、あれは何になるんだ?・・・ただの遺跡か!!
というか、俺たちがいたあの島って、この本に書かれている"原初の島"ってやつじゃないか!?魔物とか魔人、獣人がそこからやって来たっていうのもあっているし、レベル100声の魔物とかうじゃうじゃ
いるし。・・・あそこ、自殺スポットみたいなものだったんだね。俺はとんでもないところに転移していたんだな。ホント、よく生き残れたよ・・・
それからあと一つ、驚いたことがある。それは、旧時代の人たちが作った道具は現在この世界で人工遺物とよばれ、かなり貴重なものとされているということである。何が言いたいかというと、そう、俺とミカヅキが普段着用している服やコート、それからミカヅキの刀である【月見酒】は人工遺物に分類されるということだ。何気なく盗んだ物がまさかそんな貴重品だったとは・・・。とたんに恐くなってきた。まあ、今更どうしようもないのでこの件は問題なんて何も無いこととしよう
いや、それにしても、まさかこの世界の文明が一回滅んでいたとはねぇ。既に戦争で滅びかけていたような時代だったとはいえ、止めを刺した魔人、獣人、魔物の正体が、どこかの国が人工的に作りだした種族だとは、思いも寄らなかっただろうな。まあ、自業自得なのだから仕方が無いが、当時の何の関係も無い一般市民がこの真実を知ったら暴動どころじゃすまないだろうなぁ
ふあぁぁ。あー、眠くなってきた。もう、だいぶ夜も深くなってるしな。今日はもう寝るとしよう
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「マスター。起きてください。朝ですよー」
ミカヅキが俺を起こそうと体を揺さぶってくる。しかし、俺は起きる気は無い。もっと寝ていたいのだ。ほら、睡眠の神様が俺に「もっと寝ろ~」ってささやいてる
「まだ、寝ていたいから大丈夫。ほら、神様もそう言ってる」
「何を支離滅裂なことを言っているんです、かっ!」
―――――ドスゥッ!!
「おふぅっ!?」
わき腹を思い切り突かれた。痛い、けっこう痛い!しかも寝ぼけている人間に対してやりやっがたぞ!なるほど、これがうわさに聞く"寝耳に水"だな!?おかげでばっちり目が覚めてしまった
「くそう。この"寝耳に水作戦"、やるじゃないか!」
「いえ、水なんて使ってないですし、そもそも攻撃したところは耳じゃなくてわき腹なんですが・・・。まあ、とにかく起きましたねマスター。今日もギルドに行くんじゃないんですか?というか、もう朝というより昼に近づいてますよ?」
あー、ギルドか、ギルドね、うん・・・。そういえば今日も依頼を受けに行くんだったね。そうだったね。・・・仕方が無い、ちゃんと起きて仕事でもしに行きますか
帰ってきました。いや、今日は複数依頼を受けてみたんだけど、簡単すぎて・・・。薬草探しは、依頼の薬草と見た目がそっくりだけどまったく効果の違う草があるから、それに注意しなければいけないということで初心者にとってはそこそこ難しい依頼なんだけど・・。魔眼を存分に活用させたら簡単に見つかるわ見つかるわで、探索よりも移動距離の方が時間がかかったくらいだった。その後に、ゴブリン討伐なんて依頼も受けてみたんだが、「えい」ってかんじでゴブリンを殴っただけで
―――――スパァン! グシャア! ベキョッ! グチャッ!
という、いや~な音とともにいろいろとはじけ飛んでしまう有様だった。あれはもう、"粉砕した"というより"爆砕した"といったほうが表現として適切な気がする。うーん、昨日のスライム討伐の方がまだ戦闘っぽいことをしていた気がする。まあ、依頼はしっかりとスピーディーに終わらせられたほうがいいんだけどね
そんなこんなでこの日が終わった
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そしてとうとうやってきた4日目。本来なら俺たちに仕込まれた毒が回りきる日であり、俺たちの作戦決行日でもある。作戦の決行は夕食時にするつもりなので、午前中はいつもと変わらずにギルドで依頼を受けてきた
今はその作戦決行のとき。つまり夕食の最中である。この部屋にいるのは、夕食を食べている俺、ミカヅキ、領主、あとカゲロウ、近くで控えているいつもの執事だけである
「アライ君たちは今日もギルドに言ってきたのかい?」
「ええ、そうですね。やっと仕事のやり方というのにも少しずつ慣れてきたところですよ」
「そうかい。ならよかった」
そろそろいくか。カゲロウを使ってミカヅキにこっそりと合図を送る。さっき部屋にいるときも打ち合わせの最終確認をしたので大丈夫だろう
「はい。頑張ってお金を稼いで、旅の準備ができるようにはしておきたいですからね。いつまでもここでお世話になっているわけにはいきませんから。あ、いや、とても感謝はしているんですよ――――――」
――――――ガシャアン!
ステップ1。突然俺が倒れる。こうすることによって薬が効いているように見せかけ、相手を油断させるのだ
「マスター?何しているんです――――」
――――――ガンッ!!
ステップ2。ミカヅキも倒れる。俺だけじゃなくてミカヅキにも薬が効いていることをアピール。ミカヅキ、倒れたはいいけど、思い切り顔面を机にぶつけていったな。鈍い音が聞こえたぞ。あ、なんかすごい痛そうな雰囲気でこっち見てるんだけど。いや、体が麻痺している設定だから動けないからね?俺助けられないよ?
ミカヅキは、まあ、置いておくとして、次のステップへと進もう
「え?体が動かない!?な、何がどうなって!?」
「おっと、やっと薬の効果が出たようだね」
「く、薬!?え、それってどういうことですか!?」
ステップ3。今回の件について理由を聞き出す。いや、別に問答無用で殴りかかってもいいんだけど、一応理由は聞いておきたい。人間自分の優位性が保たれると、ついついお喋りになってしまうというのはありがちな話だ。まあ、フィクションの世界ではだが。だから、もしかしたらこの領主も俺たちに面白そうな話をポロっと喋ってくれるかも知れない。という考えからこのステップを入れてみた
「ふふふっ。やっぱり気になるのかい?」
はい、気になります気になります。・・・ん?ちょっと待って。今コイツの話よりも気になって、さらに俺にとって重要なことを見つけてしまったんだが。・・・なんか、夕食で出た熱々のスープ、こっちに流れてきてない?
「いいだろう。せっかくだし、キミ達に教えてあげよう」
い、いったいなんでスープがこぼれて・・・。はっ!まさか、さっきミカヅキが倒れたときの反動とかで、スープがこぼれたんじゃ!?ミカヅキをちらっと見てみる。・・・なんかすっごい申し訳なさそうな雰囲気でこっち見ているんだけど!やっぱり原因はミカヅキか!!おい、どうするんだよこれ!?動けない設定だから避けることができないんですけど!?
「キミ達はこれから売られるのさ。つまり人身売買ってことだ。そのためにわたしは毒を使って君たちを動けなくさせたのさ」
ああああ!スープがどんどん近づいてきてるんだけど!避けたいけど、避けたらこの作戦が失敗してしまう。い、いったいどうしたら。あ、スープが落ち・・・
―――――ボタタタタタッ
「ッ!?」
うぎゃああああ!?熱い!熱い!!熱い!!すっごい熱い!!
「ふふっ。やはりショックかい?"今まで親切にしてくれた人が、実は自分たちを売るつもりだったとは"なんていうのは」
そうじゃねーよ!!今こっちは物理的ショックに見舞われてるんだよ!やばいってコレ、絶対脚火傷してるって!こうなったらもう設定とか、話聞くのとか無視して暴れてやろうか――――
「ど、どうしてこんなことを・・・」
だあああ!!ミカヅキ、そこ話続けちゃう!?いや、作戦通りではあるんだけどさ!こっちは君がこぼしたスープが直撃して、熱くて悶えてるっていうのに、"そんなものお構い無し"みたいに淡々と話を進めて・・・。ちょっと気にされなさ過ぎて悲しくなってくるんだけど
「わたしがキミ逹を売る理由。それは・・・」
うう、もういいや。熱いのは諦めて話を聞こう
はい、遂に始まった"vs領主"回です。今回のスープのくだりは、前回の前書きからヒントを得ました。どうでもいい情報ですね。
次回、"vs領主"2回目です。次が中編となるか、後編となるのかは自分のやる気次第!




