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23 依頼書は正確に

23話目です。うーん、どうしても戦闘までのくだりが長くなってしまう・・・。こんなものなのかなあ?

 先日、多少のごたごたはありながらも冒険者登録をした俺たちは、本日初仕事を受けてみようかと思い冒険者ギルドに行くことにした


「へぇ、冒険者登録をしたのかい」


 という言葉はおなじみの領主野郎である。現在俺たちは屋敷で朝食中だ。今のところこちらが反撃を企てているということはばれていない様子で、なんら変わりない様子で接してきている。俺たちも、信頼を寄せているような風を装い過ごしている


「ええ。やっぱりいつまでもここにお世話になっているわけにもいきませんし、旅での資金稼ぎのためにも冒険者になって仕事をしたほうがいいかなと思いまして。幸い多少なりと戦える力はあるので、特に問題も無いですしね」


 そう言いながら、俺は本日の朝食に出てきたパンのようなものを頬張り、スープと一緒に咽へと流し込んでいく。今俺が食べているパンはフランスパンみたいな見た目をしていて、その見た目通りに固い。こんなのを毎日食べていたらきっと顎がめちゃくちゃ丈夫になるに違いない。まあ、絶対にそんなことはやらないが。


「そうかい。こちらとしては、そんな心配はしてくれなくてもいいんだけどね。まあ、そこは君達が決めたことだし、私が口を出すことではないか。大丈夫だとは思うが、くれぐれも油断はしないようにね?」


 "死んでしまったら売れないから"だろ?


「ご忠告、どうもありがとうございます。気をつけて行ってきますよ」


 そうして朝食を食べ終えた俺たちは、いつもの服装に着替えてから冒険者ギルドへと向かった





 ギルドに付いた俺達は、早速依頼書が張り出されているボードへと向かった。ボードには様々な依頼が貼り出されている。冒険者といったらコレの魔物討伐や植物採集、護衛に関するものがある。これらの依頼書にはクラスが書かれていて、その表示されているクラスに達していないと依頼を受けることができないようだ


「魔物討伐にクラス制限があるっていうのは定番だけど、まさか植物採集と護衛にまでクラス制限があるとは思わなかったな」


「まあ、よく考えてみればそれも当然のことなんだがな」


「お、カゲロウか。当然っていうのはどういうことだ?」


「宿主よ、よく考えてみろ。植物にだって様々なものがあるだろ?そこらへんに普通に生えている普通の薬草もあれば、効果は強力だが超危険地帯にだけ生えているもの、植物そのものが危険な物もある。そこへ金に目が眩んだような自らの力量もわからないヤツが行けば確実に死ぬだろう。ギルドもわざわざ冒険者を減らしたいわけではないはず。だから、クラス制限をかけているのだろう」


 ほお~。確かにそうだな


「護衛に関してもそうだ。重要人物の護衛なのに初心者丸出しのヤツが護衛に付いたって意味なんてほとんど無いだろう?」


 それもそうだな。"要人護衛が役立たずで敵に殺されちゃいました"なんて洒落にもならないだろう。ギルドの信用もがた落ちになるに違いないしな


「それで宿主。今日はどんな依頼を受けるんだ?」


 ちなみに、依頼の種類は先ほど挙げた討伐や採集関連だけでなく、数は少ないが工事関係や飲食店の所謂短期アルバイトのようなもの、果てはペット探しなんてものもあった。こっちの依頼はほとんどがクラスフリーなので、基本的に誰でも受けられるようだった。冒険者の仕事なんて採取と戦闘くらいしかないと思っていたが、結構何でも屋みたいなかんじなのかもな。それにしても・・・うーん、依頼どれにしようかな。多くて困るな


「あ、マスター。これなんてどうです?」


 そういってミカヅキが一つの依頼書を指差す。その依頼書には"大量発生したスライムの討伐"と書かれていた。クラス制限は・・・D以上か。俺たちは最低クラスのEだから、ギリギリ受けられる依頼だ


「へえ、スライムの討伐か」


「はい、スライムならあまり強くは無いので、それなりの数でも私たちなら余裕で倒せます。しかし、この依頼書に書かれているのは"大量発生。推定約50体ほど"だそうです。これは対大多数の訓練にもいいと思うんですよね」


 なるほど、仕事もしながら訓練もできるというのか。それはいいな!スライムは体内に入ってきてその生物の内臓などを破壊して殺すという攻撃手段をとってくるから、基本的に避けなければいけない。だけど、アイツらってそこそこ速かったりするんだよね。普段は、俺たちとはかなりレベル差があるから避けられるんだけど、50体か・・・。久しぶりに俺の"眼"が活躍する時が来たかもしれない


「よし、じゃあそれを受けよう。で、どうすればいいんだ?」


「その紙を受付に持っていって、冒険者カードと一緒に出すんです。あ、ついでにマスターと私のパーティー登録もしましょう。それなら2人で同じ依頼を受けることもできますし」


「パーティー登録なんてのもできるのか。というか、お前何でそんなに詳しいの?」


「それは、まあ、昨日そこに置いてある冒険者などについて書かれた本のないようを情報収集クラッキングしましたからね。大体のことならわかりますよ」


 そういえば昨日そんなことをしたって言ってたな。いやぁ、こういうスキルって便利だね。ミカヅキがいてくれてほんとよかったよ





 澄み渡る青空、吹き抜ける風、そして眼科に広がるのは大地を埋め尽くさんとばかりのスライムども。今俺たちは、スライムが大量発生したという場所のすぐそばの丘の上に来ていた


 いや、ちょっとまて!これ、明らかに50体どころじゃないよね!?ざっと見ただけても150体くらいいる気がするんだけど!?依頼書はちゃんと書いてもらわないと困るんだけど!?


「まじで何があったんだよ・・・」


「大方、スライムたちが異常なスピードで増殖したのだろう。しかし、こんなに増えるとはなぁ」


 この数は・・ちょっと無理があるよね。50体ならまだしも、さすがにあのスピードのヤツら150体は相手にできる自信が無い。何かいい方法ないかな・・・?



 少し考えてみたが、結局いい案は思いつかなかった。しかし、いつまでもこうしているわけにはいかない。依頼も受けてしまたのだし、このまま帰ったら依頼の失敗で罰金払わなきゃいけない。ちょっと、物は試しでやってみるか


 俺はすぐ近くで石を拾い、取り敢えず自身に【身体能力強化】をかけて比較的遠く離れたところにいるスライムの一匹に向かって全力で投げた。距離があるので、例えこちらに気が付かれても逃げ切れるだろう


 俺が投げた石は勢いよく飛んでいき、狙った通りのスライムにぶち当たる。そして


 ———————パアァン!!


 などという、いっそ清々しいまでに破裂音を立てながら爆散した。魔石も粉々のようだ。・・・あれ?なんか倒せた?避けられて下手したらこっちに向かってくるかもと考えていたんだけど・・・。いや、たまたまかもしれない。もう一回やってみよう・・・



 ―————————パアァン!!


 ・・・これ、案外問題なく行けるかもな。しかも強化スキル使わずに


「ミカヅキ・・・このスライム、そんなに強くないかもしれない・・・」


「そうですか!ならこのままお仕事続行ですね!はぁ、最初のお仕事が失敗にならなくてよかったですよ」


 ホントだよね。さて、それじゃあ、初仕事といきますか!




 丘を下りていき、目の前にいたスライムに蹴りを一撃お見舞いする。スライムには"物理攻撃耐性"というスキルがあるのだが、スキルレベルが低いので俺たちからすると持っているけど持っていないようなものである。蹴られたスライムは核である魔石ごと粉砕して死んだ


「あ、魔石って金になるんだっけ。壊さないようにしないとな」


 ということで、スライムの魔石は破壊しないように力加減を調整しながら、蹴ったり斬ったり飛んできたヤツを叩き落としたりしてどんどん数を減らしていく。ミカヅキも同じく魔法で燃やしたりして討伐数を増やしていく


 ちなみに、"こんなに適当に討伐とかして、ギルドにはどう証明するんだよ?"という問題については、全然大丈夫だ。ミカヅキ曰く


「この冒険者カードには、依頼対象の魔物の討伐数が自動で表示されるんです」


 とのことだった。というわけで、何も気にすることなくガンガン倒していっても何の問題も無いということなのだ


 スライムを倒し始めてから数分。半ば作業化してきて少しめんどくさくなり始めた時、スライムたちの動きが変わった


「宿主!何かスライムたちが一点に集まり始めているぞ!」


 見ると、一体のスライムに他のスライムたちがどんどん自らを押し込むように集まっていき、やがて溶けて一体化しているようだった。それは他のスライムと一体化していくごとに大きくなっていき、そして最後には一体の巨大なスライムが佇んでいた


『【スライム】が【ジャイアントスライム】へと進化しました』


「・・・ははは。なんかすごいのができたんだけど・・・」


 ジャイアントスライムが体から触手のようなものを出してきてウネウネさせている。おそらくあの触手を自分の手足として鞭のように使って、落ちてしまったスピードの代わりとするのだろう


あと何だろう、このスライム、もう一段階くらい進化しそうな気がする。そうなる前に討伐しないとな


「マスター」 


「ん?なんだ?」


「スライム・触手・女の子ってこれ、明らかにエロ展開か―――――」


「これ以上はだめだっ!」


 もうすでにアウトな気がするが、一応止めておかなければ!

 

「ああ、マスターは触手なんかではなくて、やっぱり自分の手の方が――――――」


「やめええい!!」


「お二人さんよ、一応今は戦闘中だぞ?」


 そうだった!ミカヅキのトンデモ発言につい動揺してしまったぜ


 さて、このでっかいスライムをどうしようか・・・。するとそこへ、スライムの触手が襲いかかってきた


 ――――――ビュンッ!  ジュッ!


 おっと危ない。やっぱり触手は鞭みたいに使ってきたか。・・ん?なんか、触手が打ち付けれたところ溶けてない?もしかしてこの触手、【溶解】とかそんな作用もあるのか!?コイツ進化して、かなり強くなったな!これは、早めに片付けた方がいいよな


「ミカヅキ!このでっかいのを氷り漬けにするぞ!」


「はい!」


 ジャイアントスライムの触手の攻撃を避けつつ、本体に近づいていく。中心部へと進むほど攻撃は苛烈になっていくが、残念。このくらい余裕で避けながら進める。そせて、ミカヅキと共にスライム本体にへとたどり着いた


「いくぞミカヅキ!」


「「【氷結】!!」」


 ――――――パキパキパキッ!!


 見事スライムを氷り漬けにすることができた


「よし、じやあ最後の仕上げといきますか!」


 俺とミカヅキは氷り漬けスライムの目の前に立ち、拳に力を込めて構える


「せーのっ!」


 ――――――――ガシャアアアン!!


 スライムを氷ごと殴って破壊する。もちろん魔石は壊さないように配慮はしたぞ


「ふう、スライム討伐完了!それと魔石もゲット!」


「お疲れ様ですマスター」


「ああ、お前もお疲れ」


「宿主、お嬢ちゃん、お疲れさん。いやあ、今日はみんなよく頑張ったな!」


「そうだな。今日はみんなよくがんばっ・・・。いや、カゲロウお前はほとんどなにもしてないじゃねぇか!」


「チッ!ばれたか!」


「あ、お前今舌打ちしたな!?」


 こうして、俺たちの初仕事は終わったのだった



はい、というわけで、スライムがいっぱいな回でした。

スライムって作ると、プルプルしたやつとドロッてしたやつがありますよね。自分はプルプルした方が好きですね


次回、やっと前に書いた予告の話になるかも

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