表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/102

20 世の中は大体お金がかかる

20話目です。みなさんこの連休にどこかへ行きましたか?自分は折り畳み自転車で出かけたら、後輪がパンクしました。もう折り畳み式で遠出なんてしない・・・

 俺たちは冒険者ギルドの目の前までやってきた。入口の扉からは剣を持った人、見た目からして魔法使いだろうなあという人、明らかに"一般市民の方ですよね?"という人たちが出入りしていた。一般市民っぽい人たちは何しに来ているんだろう?あ、依頼とかかな。ちなみに今回俺たちは、身分証の発行とともに、冒険者登録をしようと思っている。これから生きていくのに金を稼ぐことは必須だからな


「異世界ファンタジー系ラノベだと、冒険者ギルドなんかに行くと見た目恐そうな雑魚キャラに絡まれるのがお約束ですよね」


「そうだな。それがお約束みたいなところだが、それを体験してみたいという気持ちと、何事もなくことを済ませたいという気持ちが現在胸中を駆け巡っているよ」


 面倒なことになるのは嫌だからな。でも冒険者じゃなさそうな人たちも出入りしているのだから俺たちがそこまで注目されることはないだろう。さて、そろそろ覚悟を決めて中に入りますか。なんか、こういうところに初めて入るのって緊張するな


 いざ勇気を出して入ってみたギルドの中は思いのほか広かった。テーブルがいくつか並んでいるところがあり、そこに座って談笑したり料理を食べたりしている人たちがいる。なるほど、食事スペースもあるのか。冒険者以外の人たちもいるから、だれでも利用できる食堂のようなところになっているのだろう。依頼以外でギルドに来る人たちも多そうだ。そしてギルドの入り口から見て奥のほうに受付のような場所があり、そこに人が並んでいる。たぶんあの列に並んで順番待ちをするのだろう


受付待ちの列に並んでから数分、俺たちが列の一番前となった。ちなみにここまで何も起きていない。ちょっとだけ・・・・、"チンピラ冒険者に絡まれて俺があっさり倒して周囲の注目を浴びてしまう"なんてことを考えていたが、そんなことは無かった。・・・嘘です。実は結構期待したりしていました。だって、"なんだアイツ!?スゲェぞ!!"みたいに言われてみたかったんだもん。面倒になるのは嫌だけどそういう展開にちょっと憧れてたんだもん


「次の方どうぞ」


 そう呼ばれ、数個ある窓口の一つに向かう。・・・ふむ。異世界物語あるあるの一つ、"ギルドのお姉さんは美人が多い"というのは本当のようだな。"テレビに出ているモデル"みたいな感じじゃなくて、"学年トップ10には入ってそうだな"というぐらいの美人さであるから、俺も変に緊張して喋れなくなるということはなさそうである


「どのようなご用件でしょうか?」


「えっとですね、あの、身分証明書の発行と、あと、冒険者になりたいんですけど、その、ギルドへの登録とかって・・」


 訂正。やっぱり緊張して言葉がつっかえつっかえになってしまった。大丈夫かな、ちゃんと伝わったかな?  


「身分証明書の発行と冒険者登録ですね。えーと、お二人分でよろしいでしょうか?」


「あ、はい。よろしくお願いします」


 よかった。伝わっていたみたいだ


「それでは、合計で銀貨3枚となります」


 ・・・え?お金かかるの?そんなの聞いてなかったんだけど!?まあ、そりゃカードだってタダで作られているわけじゃないんだし、お金はかかるよな。お金がかからないものなんて、街中で配られるポケットティッシュくらいだもんな。だけどあの領主、俺たちお金がないって言ったんだから声くらいかけてくれてもいいだろ!!しかしどうしよう、お金なんて一切持っていないんだけど


「マスター・・・」


 焦っている俺にミカヅキが声をかけてくる。なんだこの落ち着き様は。もしかしてミカヅキお前、実はお金を持っていたり・・・


「先に言っておきますけど、今回も私は何もできませんからね?」


 はい、だめでしたー!わざわざ何かありそうな態度を見せてくれてありがとう!お金どころか策すらも持っていなかったね!


「あ、宿主・・・」


 なんだよ今度はカゲロウかよ。どうせミカヅキと同じ流れなんだろ?いや、でももしかしてコイツにはお金以外でも何かしらの作戦があったりするのか!?


「ワタシも何もできないから期待するなよ!」


 結局何もねぇのかよ!すでに期待しちゃってたよ!なにかありそうな溜めをつくるなよ!くそう、コイツら使えねえ・・。いったいどうしたらいいんだ・・。そんな時、隣の窓口から声が聞こえた



『よし、じゃあこの魔石を買い取ってくれ』


『かしこまりました。では、少々お待ちください』



 何っ!?魔石だと!?魔石ってあの魔物から採れるやつだよな!?そうか、あれ売れるのか。それならいくつか"影の食卓部屋ブラックボックス"に入っている。よかった、念のためにと持っていたものが役にたった。問題は俺が持っている魔石で金額に届くかなんだが・・・


「あの、すいません。実は今お金持っていなくて・・。で、その、魔石を持っているんですけど、それを換金してもらって、そこから代金を引いてもらうってことはできますかね?」


「はい、わかりました。ではここに魔石を置いてください」


 そう言われ、おれは受付のお姉さんの前にとりあえず魔石を3個程置く。貧乏性で何となく渋って全部は出さなかった。足りなかったら追加で出せばいいだろう。さて、これで足りているかな・・?


「こ、これは・・!?あの、これは、何の魔石ですか!?」


 お姉さんが、何か驚いた様子で俺に訪ねてくる。これが何の魔石か?えーっとこれは、ゴブリンの魔石かな?そこまで大きなものじゃないし、アイツらやたらと数が多いから、何回も倒して魔石を取り出しているうちに見慣れたから何となくわかる


「えっと、これはゴブリンの魔石だと思います」


「え・・?ゴブリンの魔石!?え、でもゴブリンの魔石ってもっと小さかったはずじゃ・・。もしかして偽物・・?いやでも、確かにこの魔石には魔力が流れているみたいだし・・・」


 なんか、この魔石ですっごく混乱させてしまったようだ。お姉さんが"偽物なんじゃ"とか言うから心配になって鑑定してみたが、やはりこれは"ゴブリンの魔石"で間違いないようだった。だが、このまま"これはゴブリンの魔石です"って言い続けても先に進まないから、今回は誤魔化すことにしよう。いま重要なのは"これが何の魔石か"ではなくて、"この魔石はちゃんとお金になるのか"ということなのだから


「あの、もしかしたらそれ、ゴブリンの魔石じゃないかもしれません。いろいろと魔石を持っているのでどれがどれだかわからなくなっていまして。それよりも、この魔石で金額足りてますかね?」


「あ、ああ。すいません。今換金いたしますので、しばらくお待ちください」


 ふう、なんとか話が先に進んだな。ちなみに今の誤魔化しポイントは"いろいろあってどれがどれだかわからない"と言うところだ。これによって、例え間違ったものを渡したとしても、たいていは"たくさんあるんなら、少しは間違えても仕方がないか"なんて思ってくれる。・・かもしれない


 

 待つこと数分、お姉さんが戻ってきた


「えーと、魔石の値段が計金貨一枚。そこから代金の銀貨3枚を引かせていただきましたので、お渡し分は大銀貨9枚と銀貨7枚になります」


 よかった、金額は足りていたみたいだな。お姉さんがカウンターに戻ってきたとき"足りていなかったらどうしよう!?"ってすごいドキドキしていたんだよね。そして俺は代金を払ってなお余った分のお金を受け取る。すると、周りの人たちがざわざわし始めた


『おい、アイツ金貨一枚分の魔石を持ってきたみたいだぞ!』


『まじかよ!アイツが魔物を討伐したのか!?』


『おいおい、あんな小さくてひょろいやつが魔物なんて倒せるわけねえだろ』


 なんだなんだ!?急に騒がしくなったぞ!?あ、俺が受け取ったお金でかな?もしかして、結構な金額をもらったのか?今度どこかでお金について調べてみるか


「それと、こちらが身分証明カードと冒険者カードになります」


 そういって二つのカードを渡された。おお、ついに身分を証明できるものが手に入ったぞ!これでこれから町の検問で困らなくて済む!・・・ところであの、渡されたカード何にも書かれていないんだけど、これどういうこと?もしかしてわざと渡された!?会って初日の人に嫌がらせされた!?


「カードに自分の情報を登録する方法はお分かりですよね?」


 あ、カードに情報登録しなきゃいけないのか


「あの、教えてもらってもよろしいでしょうか・・」


「え!?あ、ああはい。カードに自分の情報を登録するには、自分の血を一滴垂らしてください。それで登録が完了となります」


 ああ、なるほど血ね!そういうことで、俺たちは手を切ってカードに血を垂らす。すると、カードがほんのりと光った。そして光が収まった後には、なにやら文字が書かれていた。おお、これで使えるようになったということか。というか、お姉さんすごくビックリしていたな。これくらい知っているのが当然みたいな感じだったな。またまたご面倒をおかけしてすみませんね


「マスター、どうやらこの身分証明カードは自分のステータスが見られるようですよ?」


 そんな便利機能がついているのか!まあ、俺の場合は魔眼があるから、自分のどころか人のステータスも見られるんだけどね


「えー、次にお二人は冒険者登録は初めてということなので、冒険者についての簡単な説明を受けることができますがどういたしますか?」


「じゃあ、お願いします」


「はい。まず、冒険者はE、D、C、B、A、Sの6クラスに分かれています。そして冒険者ギルドでクラスに見合った依頼を選んで任務についていただきます。基本的には自分のクラスの一つ上のクラスの依頼までしか受けることしかできません。依頼の中にはクラスフリーのものもあるので、その場合はE~Sのどの方でも受けることができます。依頼の失敗時には罰則金を払っていただく必要がありますので、依頼を受ける際はよくご確認をしてからにしてください。そのほか細々としたものはあちらに本として置かれているのでご自由にお読みください」


 時間があったらその本読んでみようかな。暇つぶしとかになりそうだしな


「それでは最後に、ご自分の冒険者カードとこの紙にお名前を書いてください。お名前は本名でなくても構いませんので。あ、代筆は要りますか?」


「いいえ、大丈夫です!」


 今こそ、俺の勉強の成果を発揮するとき!自分の名前くらいスラスラっと書いてやるぜ!スラスラッ!よし、いい感じに書けた!


「えと、書けました」


 紙とカードをお姉さんに渡す。ん?なんかお姉さんが困ったような顔をしてこっちを見ているんだが・・・


「あの、ヘイルス語で書いていただかないといけないのですが・・・」


 ・・・・え?



はい、ポケットティッシュは無料でもらえるという話でした。道で配られているチラシやティッシュって、どうせ使わないのにもらってしまうことってありますよね

次回、主人公は再び文字を身に着けるため勉強をします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ