17 高級なところは恐くて落ちつかない
17話目です。
いつもより投稿が遅くなってしまい、申し訳ありません
盗賊との戦闘からしばらく、俺たちは馬車に揺られながら町へと向かっている
「さて、そろそろ見えてくると思うよ。・・・あ、見えた。あれが私の町だ」
お、ついに町が!どれどれ・・?馬車から外を見てみると、丈夫そうな門を構えた街が見える。おお、あれか!想像していたよりも結構大きいな
「マスター、ついに来ましたね!」
「ああ、そうだな。人がいるところと聞いて、こんなにうれしく思ったことは初めてだよ」
今まで魔物くらいしかいなかったもんなぁ。人と関わることがそこまで好きではなかった俺をこんな考えをするようにまでさせるとは・・。異世界とはなんて恐ろしいところなんだ!
「私は人がたくさんいる場所というのは初めてです。だから、迷わないようにマスターのそばから離れないようにしておきますね」
「いや、前々からお前はあんまり俺のそばから離れたことって無いだろ・・。別にお前一人で町を見てきたっていいんだぞ?」
「いえ!やめておきます!あの、本当に見知らぬところで迷子とか、恐怖以外の何者でもないですから」
「・・・。うん、それは俺も恐いわ」
ちょっとテンション上がってて、"一人でも町なんて余裕だぜ!"みたいな思考回路をしていたけど、よくよく考えてみたら、・・うん、やっぱりいきなり一人なんてのは無理だな。こういうのはだんだんと慣れていってからにしないと。ほら、町といえど何があるかはわからないじゃない?いきなり後ろから刺されるかもしれないし?道に迷ったら心細いし?元の世界とは違うんだし?・・・決して俺がすごくビビりとかそういうわけではない
「さあ、もう、門に着くよ」
馬車は、門の前に進んでいく。うん?門番っぽい人たちがこっちに来るぞ!?なんだろう、別に何もしていないけどなぜか緊張してしまう
「そこの馬車。いったん停まってもらおうか」
呼び止められた!この門番さん少し強面だから、かなり迫力がある
「やあ、お疲れ様。私だ」
すごい。この人少し恐そうな門番さんにすっごくフランクに話しかけていったぞ!
「アセトア様であられましたか。これは失礼をいたしました。しかし、アセトア様。一応ここを通る際は確認をさせていただかないと」
「そうか、すまなかったね。はい、これでどうかな?」
そう言ってカードのようなものを門番さんに渡していく。あれが身分の証明を記すものなのかな?
「ありがとうございます。確認終了しました。・・・おや?誰か同乗しているのですかな?」
門番さんが俺たちも乗っていることに気づいたようだ
「ああ、彼らは私が盗賊に襲われているところを助けてくれた人たちだ」
「そうでしたか。では、お二人もカードの提示をお願いできますかな?」
・・・・・。やべぇ、カードなんて持ってないぞ!?いやだって、あの島でそんなの必要なかったし!むしろそんなものがあったら邪魔だし!ここは正直に言うか!?いやでも、"そんなカード知りません"なんて言ったら、変に怪しまれたりしないか!?どうしよう・・・
「な、なあミカヅキ?お前ちょっと、奇跡的に俺たちのカードを持っているなんてことは・・・」
「マスター。そう易々と奇跡なんて起きませんよ」
「で、ですよねー」
くそう、万事休すか!?いや、まだ可能性はある
「カゲロウさーーーん!」
「そんなのあるわけがないだろう」
「ですよねーーーー!!!」
もうだめだ。こうなったら適当に誤魔化すしかないみたいだな
「アライ君、どうかしたのかい?」
「い、いや~実はですね。僕たち、迷っている最中にお金とカードが入った袋を落としてしまったみたいでして・・・」
大丈夫かな?いい感じに誤魔化せたと思うんだけど・・。ちなみに今の誤魔化し方のポイントは、"カードが無い"というのと同時に、"お金が無い"というところもさらっとアピールするところだ。これで、"じゃあ、お金を払ってください"なんて言われないはずだ
「そうだったのか。それは災難だね。いいだろうここは私がキミたちの身分の証明をしよう。門番君もそれでいいかな?」
「ええはい。アセトア様が身分を証明してくださるのなら大丈夫です」
そんなわけで俺たちは何とか町の中に入ることができた
「では、ようこそ"アセトアの町"へ!これから私の家へ案内するよ」
馬車は待ちの中を進んでいく。いやぁ、外から見たときも大きそうな町だなとは思っていたけど、やっぱり大きいなぁ。町並みは異世界お決まりの中世ヨーロッパのような時代感だ。あの島の研究施設は結構現代チックなデザインだったから、中世風を期待していた俺としては"この世界の建物はみんなビルみたいだったりするのか!?"と心配していたりしたのだ
「何か珍しいものでもあったのかい?」
「ええ、なんせこんな町なんて初めて来たので」
「そうかい。ならこの町を楽しんでくれよ」
そんな風に話をしていると、前の方にある建物が見えた。その建物にいかつい武器を持った人や、いかつい顔をしたおっさんなんかが入っていく。え・・。なにあそこ。絶対危ない場所だよ!ちょっと領主さん!なんであんなところ放置しているんですか!!
「ちょ、ちょっと。あ、あれ、何ですか?」
「うん?どれだい?・・ああ~。あれはこの町の冒険者ギルドだよ」
「冒険者ギルド!?」
それって魔物の討伐なんかを仕事としているっていう異世界あるある職業の?
「君たちが住んでいたところには無かったのかい?」
「え、ええ。今初めて見ました」
なにせ俺たち以外に人がいなかったもので!
「そうなのかい。冒険者ギルドといってだね、"冒険者"と呼ばれる人たちに仕事を斡旋するところさ。あ、君たちはカードをなくしていたんだったね。冒険者ギルドに行けばカードを再発行してもらえると思うよ。カードは身分の証明に大切なものだからね。早いうちに行ってきたらいいよ」
ほ~、ご丁寧な説明、どうもありがとうございました。なるほど、冒険者ギルドか・・・。明日にでも行ってみるかな
「あ、ということは、"カードを持っている人=冒険者"ということですか?」
「いや、そんなことは無いよ。私もカードは持っているが冒険者ではないしね。カードの再発行は他でもできるのだが、ここだと一番冒険者ギルドが手っ取り早いということさ」
そういうことか。ちょっとだけ、この世界の人たちは子供でさせも魔物を殲滅できるようなごっつい人ばっかりなのかと思ってしまったぜ
冒険者ギルドを過ぎてからさらに町の中心の方へ向かうこと数分。目の前に大きな屋敷が見えてきた
「着いたよ。ここが私の家だ」
・・・。正直ここまで大きいとは思っていなかった。さすが、この町の領主というべきか・・。何の案内もなしに入ったら、俺なら確実に迷うなこの家
「さあ、入ってくれ。助けてもらったお礼に、食事をご馳走するよ」
やったーーー!!!ご飯が食べられる!念願のおいしい食事が食べられる!
「マスター!早く行きましょう!」
「わかった、わかったからそんなに急かすな。あと、よだれを垂らすな」
「申し訳ありませんが、食事には少しお時間がかかります。お二方には客間にご案内いたしますので、それまでお待ちくださいませ」
うわっ!?突然執事さんみたいな人が話しかけてきたから驚いた
「びっくりした。この人いつからいたんだよ」
「何を言っている宿主。馬車が襲われていたときからずっといただろう?」
「うおっ!?カゲロウか・・。全然喋ってこなかったから忘れてた。というか、まじでこの人最初からいたっけ?」
「ああ、いたぞ?まあ、御者だったから馬車の中からはあんまり見えなかったんだがな。それにしても、ワタシを忘れていたとはひどいことをする」
「悪かったって」
だって全然気配が無かったんだもん
「それではご案内いたします」
そうして、執事さんに案内された部屋は、高級感満載の部屋だった。この家具とか壊したら、俺じゃ到底払えない値段なんだろうなぁ。これは、まずい。壊してしまったらという恐怖で何も触れない!
「いやぁ~、すごく豪華な部屋ですねぇ」
はっ!やめろミカヅキ!そんなにうろちょろしたら・・・
――――――ガンッ!
「あ・・・」
キャーーー!!??ミカヅキが棚にぶつかった弾みで、上に置いてあった高そうなコップがぁぁ!!!
「"カゲアソビ・クッション"!!」
ふう、コップの落下地点に影のクッションを置いたことで何とか割れずに済んだようだ。はあ、恐いかった
「す、すいません。マスター」
「いや、割れなかったから別にいいけど、もうちょっと注意してくれよ?まあ、人間誰にだって失敗はあるもんさっ!?」
―――――ガンッ!
ギャーーー!?俺の足が机に当たって上にあった置物がぁ!?
「あ!危ない!」
それをミカヅキがギリギリでキャッチ
「マスター・・。」
「すいませんでしたっ!!」
だ、誰にでも失敗はあるよねっ
高級そうな物を見ると、"もしこれを自分が壊してしまったら"という想像をして緊張してしまいます。自分だけですかね?
次回、ご飯が出てきます




