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15 そんなにうまくいかないのが人生

本編15話目です。

いいことってあんまり長く続かないですよね

目を開けるとそこは、先ほどと変わらないような薄暗い洞穴の中だった。


「転移は成功したのかな?とりあえず外に出てみるか」


 確認をしてみなきゃ。これで、"同じ島の別の場所に転移していた"なんてことだったら、確実に泣いてしまう


「ここは・・・森だな。まさか本当に同じ島なんじゃ・・」


 洞穴の外は森だった。立派な木が聳え立つ大自然あふれる森だった。ただ、転移前のところとは若干違う雰囲気が出ている


 ―――――――ガサッ


『【バジリスク】が現れました』


「マスター、何か出てきましたよ!」


 うん、今見ていたからわかるよ。それにしても、転移そうそう襲ってくるなんて間が悪いやつだな。さて、ここの魔物は強いのだろうか。ここ数週間は鍛えてきたつもりだが、負けるようならばさっさと島に戻らなければならない。そして俺の引きこもりライフの始まりだ!!おっと怠けたいというよう欲が強く出てしまった


「Gyaaaaaa!!!」


 バジリスクが低空飛行をしながら俺たちに向かってくる。いわゆる突進だろう。・・・だが、遅い。もっと目で追えないくらいのスピードで来るかもしれないと警戒していたのだが、余裕で見えるし避けられる。なんならカウンター気味に奴に攻撃を与えることもできる。一応何があるともわからないため、【身体能力強化】スキルも使っておく。飛んできたバジリスクを避け、胴体に蹴りを入れる


「Gugyuaa!?」


 バジリスクは数メートルほど吹っ飛び、地面に身体を打ちながら転がる。・・・もしかしてコイツ、全然強くない魔物なのか?これ、下手をしたら【身体能力】強化とかしなくてもいいんじゃないだろうか・・・?


 起き上がり、再び飛んでくるバジリスク。俺はそれを避け、今度は頭部をぶん殴る。さっきのように吹っ飛ばすのではなく、真下の地面に打ちつける


「ミカヅキ、もしかしたらコイツ結構弱い方の魔物かもしれない」


「ええ、見ていたらわかります」


「これなら問題なくいけそうだな」


「そうですね」


 そんな話をしているとバジリスクが起き上がり、"よくもやったなコノヤロウ!!"とでも言いたげに目から光線を放ってきた。目からビームかよ・・・


「GoGyaaaaa!!!」


 その光線は、周りの地面や植物を石のように変えながら俺たちへと直撃した


「うおっ!?周りが石だらけになってるよ。石の彫刻群でも作る気なのかね?」


「いやでもマスター。これはこれで素晴らしい芸術作品になりそうですけどね」


周りが石になっている中、俺たちはまったくの無傷で同じ場所に立っていた。これにはバジリスクも驚いたようで、


「Gyaa!?」


とか間の抜けた声を出している


「ぷっ!ミカヅキさん、今の声聞きました?」


「ええマスター。しっかりと聞きましたよ。"ぎゃぁ!?"ですって。なんともまあ面白い声を出すもので。ぷふっ!」


二人で散々馬鹿にしていたらバジリスクもキレたようで、"おれの怒りを食らええぇぇ!!!"とでも言いたげに、今度は口から濁った紫色の、見るからに毒々しいブレスを吐いてきた


「GoGaaaaaaaaa!!!」


そのブレスは先ほどの目からビームで石にした地面なんかを溶かしながら俺たちに直撃した


「うわっ!?汚ねぇ!!」


「何ですかこれ!?すっごいベトベトするんですけど!?」


 今回もしっかりと無傷で立っている俺たち


「・・・・・」


バジリスクは開いた口が塞がらないとでも言いたげに、口を全開まで開けたままの間抜け面をさらしていた。"なんで効かないの!?"とでも言いたそうだ。俺らに石化や毒が効かなかった理由だが、島でのスキルの練習中に


『スキル【全状態異常耐性】、【魔法全属性耐性】が進化。【状態異常無効】、【魔法攻撃無効】になりました』


 という表示が出た。あのときは"スキルって進化するのか!"と驚いたものである。練度を上げるための訓練のおかげかもしれない。ちなみに、ほかにも耐性系スキルはあるが、進化したのは今はまだこの二つだけだ。しかし、今はそんなことよりも・・・


「お前、よくも・・・。全身ベトベトで汚くなっちまったじゃねえかあああ!!!」


 ―――――――ドゴン!!


「最悪です」


 ―――――――スパンッ!!


俺の全身がベトベトになったことに対する怒りを乗せたパンチが、見事にバジリスクの腹にヒットし、 次いで放たれたミカヅキの風の刃が首を跳ね飛ばす


「Gaaa・・・」


 よし、死んだか。まったくとんだ迷惑なヤツに出会ってしまったぜ


「あ、宿主。その魔物はワタシの食卓部屋ブラックボックスにしまっといてくれよ。後でワタシが食べる」


 うおっ!カゲロウか。いきなり声をかけられたからびっくりしたぞ


「わかった。しかし、魔物なんてまずいものよく進んで食おうとするな」


「まあ、うまいわけではないのだが、相手のスキルを獲得できる可能性が高くなるのは食べることが一番だしな」


 そんなものか。さて、とりあえずこのベトベトの毒液を洗い落とそう


「よしミカヅキ。どっか近くの川を見つけてそこでこのベトベト洗い流そ――――」


「バッシャーン!!」


「―――――ブベッ!?」


 ミカヅキが魔法で作り出した大き目のウォーターボール俺の頭の上で破裂させた。当然その真下にいた俺は服もろともびしょぬれになるわけで・・


「な、なにをする!?」


「いや、マスター。このベトベト、一応石をも溶かす毒ですよ?そんなものを川で落としたら生態系が大ピンチですよ?」


 そうだった。まったくダメージが無かったから忘れていたが、これは一応毒だった。危ない危ない


「でも、俺もお前もびしょぬれだし、ここじゃ冷えるから日のあたる場所に移動しようか」


「そうですね。こんなんで風邪を引いたなんてことにはなりたくないですからね」


 というわけで、いい感じに日のあたるところを捜し歩いて数分。日が当たってとても暖かそうないい感じの川原を発見した


「お!ここいいな!ここで休むことにしよう」


「そうですね。ここにしましょう」


・・・・・・・。あ~。暖かくて気持ちがいいなぁ。こうしていると、嫌なことも忘れられそ「べちっ!」痛っ!またかよ!チクショウ!嫌なこと忘れられなかったぜ!やっぱりこの川でさっきの毒を洗い流して生態系を狂わせればよかった!まったく、どこの川原でも魚が俺に当たってくるんだよなぁ。なんでいつまでたっても反応できないんだろう・・・


「マスタ~。ここポカポカしていてきもちがいいで―――――


「ヒュンッ!!」  "ガシッ!!"


 ――――――すねぇ。あと食料ゲットしました」


 うん、わかったからそのドヤ顔はやめよう?


「ふう。よしそろそろ出発するか。どこか森から出られる場所を見つけないとな。あとドヤ顔やめよう?」


「仕方ないですねぇ、やめますよ。そんなに私の顔が嫌なんですか?さて、そろそろ行きましょうか」


 いや、お前の顔が嫌いなわけは無いんだがな。だって普段はかわいいし。ただ、そのドヤ顔は絶妙な具合に人をイライラさせるからなぁ。


 そんなことをしながら、服も乾き始めた俺たちは森の出口をさがして再び歩き始めた


「というかお二人さんよ。炎の魔法とか使って乾かした方が早かったのではないか?」


「「あ・・・」」


 ひ、日向ぼっこしたかったからいいんだもん!





~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





 歩き始めてから数時間がたった。ここまでに何度か魔物と遭遇してひとつ確認できたことがある。"この森はたぶんあの島の森じゃない"ということだ。今までに遭遇した魔物は全然強くなかった。あの島の魔物でこの程度の死ぬ奴はいない。つまり、俺たちはちゃんと島から脱出することに成功したの


「あ!マスター!あの木の向こう側、かなり明るくないですか!?」


 ミカヅキが示した木の向こうを見ると、多数の木によって日光が遮られている森とは明らかに光の当たり具合が違うようだった。


「おお!本当だ!あの木の向こうからすごい明るくなっているな!もしかしたら出口かもしれないぞ!村とか町とかがあるかもしれないぞ!!」


 やっと森から出れるという期待を胸に、俺たちは駆け出した。走って走って光の差すところへ出た俺たちが見たものは・・・



 ―――――草原だった


「え!?ええぇぇぇぇ・・・・」


「そ、そんなぁ。森を抜けたと思ったら、今度は草原ですかぁぁ?」


 どこまでも広がる草原。人どころか、何かが通った道すらもない。ただただ緑が広がっているだけである。そんな都合よくはいかないかぁ


「はぁ、ここで止まっているのも森に戻るのもなんだし、とりあえず進んでみるか」


「そうですね。そのうち人に出会えるかもしれませんし」


 森を抜けた先にあった草原。俺たちはきっと人と出会えると信じて歩き出す



 はい、森の次は草原ということで人が一切出てきませんでした。

 ステータスは主人公を基準に大体で決めていますので、かなり適当です。なのでそこらへんは、すうっと読み流していただければ結構です

 次回、やっと人と遭遇します

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