表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/102

14 定期報告と脱出

14話目です。今回はあの方が登場します。さて、あの方とはいったい・・・

 アシュラ戦から数日がたった。暮らしはあの後も変わらない。変わったところがあるとすれば、森の散策が、食糧の確保以外にもスキルの練度を上げるという目的が増えたくらいだ。最近では、俺たち単体でも数体の魔物を相手にしての戦闘もなんなくこなせるようになってきた。ここに来たばかりのころは毎度死ぬような思いをしながら戦っていた魔物とも、今では日課として、より複数との戦闘訓練の対象となってしまった。日課といえば、ミカヅキからの毒持ち動植物を薦められるのも、森へ入るたびに毎回やられている。そろそろ俺も毒持ち生物に詳しくなりそうで恐い。覚えていた方がいいのだが、覚え方がひどすぎると思うんだ・・・。たとえば、


『あなた、結構毒に詳しいですね!どこでそんなに覚えたんですか?』


『ええ、むかし森によく入っていたときに、連れによく毒持ちの生物なんかを"おやつにどうです?"な んて、よく薦められたもので。はっはっはっはっは!』


 とか言ったら絶対相手にドン引きされること間違いなしだろう。そんなことになりたくはない!



「おや?マスターこんなところで何をやっているんですか?」


おっと、俺を毒持ち生物に詳しくさせようとしている元凶がやって来たぞ


「今はだな、この世界の言語を書けるように勉強していたのさ」


「あれ?でもマスターってこの世界に来るときに、転移者特典みたいなかんじで、スキル【異世界言語理解】を持ってませんでしたっけ?」


そのスキルはたしかに持っている。そのおかげで俺はこの世界の文字が問題なく読めるんだが・・・


「このスキルは読むだけなら問題はないんだ。読むだけ・・・・ならな」


「というと?」


「読むことはできても、文字そのものは覚えないと書くことができないっていうスキルなんだよ・・・」


つまり、"葡萄"という漢字を"ブドウ"と読むことはできても、実際に書いてみようとすると見本を見ながらでなければ書くことができないようなかんじである


「なるほど、それで勉強をしていたのですね」


「ああ、勉強は好きではないのだが、さすがに文字は覚えておかないとこの先不都合が起こるかもしれないだろ?そういえば、お前は文字とか覚えなくてもいいのか?」


「そうですね。私には【情報収集クラッキング】があるので、一度見てしまえば書けるようにはなりますね」


クソッ!この便利能力め!


「あ、便利といえば・・・おーいカゲロウさーん!」


「なんだ?宿主?」


 俺の目の前に黒いものが集まって不安定な形を持ったものが現れる


「なあ、お前の能力とかで文字を一瞬で書けるようにはならないの?」


「ふむ・・。できるぞ?」


 マジで?さすがチートさん!


「正確には、スキルではなくてワタシの情報処理能力により、即座に文字を覚えられるというものだがな」


「おお!正直そんなことはどっちでもいいのだが、できるのならやってくれない――――――」


「だが宿主。それはあくまでもワタシが覚えるのであって、宿主が覚えるわけではない。何らかの事故でワタシが動くことができなくなったとき、困るのは宿主ではないか?」


 む、むぅ。それを言われるとたしかに・・・


「つまり、ワタシに頼らずしっかり自分で覚えなければならないということだな。がんばれ宿主」


うっ・・まじかぁ・・・


『ピロンポロンパロン。ピロンポロンパロン』


ん?なんだこのちょっと抜けたような音楽は?


「マスター。このちょっと抜けたような音楽、マスターの手袋から鳴っている気がするんですけど」


 え?俺の手袋?・・・あ、本当だ。俺の手袋から鳴っている。どうしようこれ爆発とかしないよね!?こういうときは・・とりあえず同じ万能手袋で触ってみよう!なんとかなるだろう。この手袋かなり万能だから!えいっ!


 ――――――ピッ


「あ、もしもしシン君?久しぶりね。全然通信に出てくれないからどうしたのかと思ったのよ?」


 うおっ!手袋から声が!?ん?この声はもしかして・・・


「あの~。もしかして女神様ですか?」


「そうよ?私以外に誰がいると思ってるのよ。定期的に現状報告してもらうって言ったでしょ?」


 やっぱり女神様か。そういえば現状報告なんて仕事があったな。観察対象なんだっけ俺


「お久しぶりです女神様。いやすいません。連絡を取るときにこんな電話みたいな着信音が鳴るとか知らなかったので」


「ああ、そういえば連絡が取れるとしか言ってなかったような気がするわね」


「マスター。さっきから女の人の声がするのですが、どなたでしょう?」


ちょっとミカヅキさん恐いから詰め寄らないで!これ修羅場っぽくなる必要とか全然ないから!


「女神様だよ!俺の記憶から情報を持っているだろ!?」


「ああ、なるほど。上司に仕事を押し付けられた残念な――――モゴッ!?あいふぉふふんへふかなにするんですかまふあーマスター!?」


やめるんだミカヅキ!それ以上は言ってはいけないやつだ!


「あら?シン君?ほかに誰かいるの?」


「ええ、今から報告する内容にも出てくるんですけど、今俺と一緒に過ごしているミカヅキです」


「初めまして女神様。ミカヅキです。マスターの嫁です」


「おいこら何を言っている」


「"マスターの嫁"ってシン君のってこと!?結婚したの!?」


「おい待て!女神様まで何言ってるんですか!?」


「いいわね~結婚なんて。こっちは仕事でそんな暇も無いってのに。異世界行って嫁ですか。はぁ~」


 ああもう女神様の日ごろの不満が漏れ出ちゃってるよ


「女神様違いますって。話を聞いてください。それに今は忙しくってそういうのは考えている余裕なんて無いですから!それで、報告って何を言えばいいですか?」


「はっ!そうね。報告は異世界に来てからこれまでのことを簡単に話してくれないかしら?」


「わかりました。えーと、まず転移先が――――――


 ――――――――で、アシュラとの戦いの後に転移魔法陣を見つけて脱出ができそうなので、今はそれに備えて準備をしているところですね」


「あなたすっごい冒険していたのね」


 ええ、本当ですよまったく。何でこんなことになったのやら


「そういえばシン君。報告の中に影が治療してくれたって言っていたけど本当なの?」


「ええそれは――――」


「本当だぞ?」


うおっ!いきなり出てくるなよ


「その声・・・話に出てきた影ね?」


「ああ、そのとおりだ。始めましてだな女神様?」


「ホントに影が喋るなんて・・」


「なあ女神様よ。ワタシには宿主からもらった"カゲロウ"という名前がある。できればそちらで呼んでいただきたいのだが?」


「そう、わかったわ。カゲロウ、シン君を助けてくれたのは感謝するわ。私としても人間とこうやって話す機会なんて滅多にないし、シン君とは話していて面白いもの」


「まあ助けたことに関しては、宿主を死なせるとワタシも死ぬことになるからな。それに宿主は面白いというのも同意できることだしな」


 二人そろって俺を面白いとか言いやがって、バカにしてるの?そうなの?


「カゲロウ。あなたシン君に迷惑をかけないように存在しておきなさい?」


「ははは、善処しよう」


コイツ絶対する気無いだろ!はあ、もうういいや


「そういえば女神様。女神様からもらったこの手袋、すっごい便利ですね!どんな攻撃も防御できるし、鍵の開錠とか、ミカヅキに魔石を埋め込むのにも役立ちましたし・・・」


「あ~、その手袋ね。ちょっと渡そうと思っていたものと違うの渡しちゃったみたいなのよねぇ」


「え?それはどういう・・・?」


「本来シン君に渡す予定だったものは【天界製手袋】だったんだけど、どうやら私が渡したものは、【天界製万能手袋】だったみたいなのよね。性能としては、あらゆる環境、状況に適応、対処が可能で、着用者の動きを少し補助するなどの効果があるわ。いってみれば、天界製手袋のよりグレードアップしたものみたいなかんじね」


 まじですか・・。そんな上等のものだったとは・・・


「あ~、やっぱりこれ、返したほうがいいですかね?」


「いや、別に返さなくていいわよ?もともと、その天界で作られた手袋っていうのは、幼少期の神様がうまく使えない神力を補助するために作られたものだから。私はもう手袋そんなのが無くても余裕で力は使いこなせるから要らないのよ」


 なるほど。手袋はそういう目的のために作られていたのか。これを返さなくてすんでよかったぜ。やっぱりこんな便利なものを一度手にしてしまうとねぇ。あれ?そういえばこの手袋って・・


「あの女神様。この手袋ってもしかして女神様が使っていた・・・」


「そうね。その手袋は昔私が使っていたものね。だからおさがりってことになるかしら」


おおう!やっぱりそうか!いやぁこの手袋が女神様が使っていたものかぁ・・・はっ!ちょっとミカヅキさん近いですよ!?別に何にも考えてないですよ!?だからそんなにじーっと見なくてもいいんですよ!?


「あ、あ~、女神様。こんな便利なものをありがとうございます。大切に使っています」


「あはは、別にいいわよ。それそんなに大切なものじゃないし。・・そろそろ時間ね。じゃあシン君、また次の報告のときに」


「はい。また次のときに。では」


―――――――ピッ


 ふう、これで報告は終了か。なんか無駄に疲れたな・・


「マスター」


「お、おう。どうしたミカヅキ?」


「マスターさっきその手袋を見て変なこと考えていませんでしたか?


 "この手袋女神様が使っていたやつかぁ。女神様のいい香りとかしないかなぁ"


とか考えてませんでしたか?」


「いや、ぜんっぜんそんなこと考えて無かったよ?ぜんっぜん考えて無かったよ?」


「まあいいですけど。どうせその手袋、今はもうマスターのにおいと、土と血のにおいしかしないんですけどね」


 あっ。そうじゃん。もうこれ散々使いまくってるから、魔物の血と自然のにおいしかしないじゃん・・・


「マスター?なにをそんなに残念な表情をしているんですか?・・・はぁ、まったくマスターは・・・。ああ、でもその手袋マスターの・・・・ふふっ」


おうっ!?なんかゾワッっとした!?


「ははははっ。やっぱり宿主たちは見ていて飽きないな!」


なんかカゲロウがうざいなあ


「まあがんばれよ?宿主?」


カゲロウが俺の頭をぺちぺち叩いてくるんだけど!すっごいうっとうしいんだけど!こいつにもうちょっと制限かけられないかな!?制限かかれ~。制限かかれ~


『【支配率自由設定】を使用できるようになりました』


わお!俺の願いが通じてなんか便利な能力を使えるように!なんてご都合的なんだ!!だが今は丁度よかった。よしこれでカゲロウの行動の自由は俺のものだ!支配率変更!


 『支配率を変更します。支配率を設定してください』


 う~ん、どうしよう。上げすぎても下手して眼が使えなくなったら困るから・・・70%で!


『支配率を50%から70%へと変更します』


「ん?なんだこれ?体の自由が利かなくなって?このままでは体を保っていられなくなる!?お、おい宿主何をした!?」


 ははっ。焦っているカゲロウはおもしろいなぁ


「支配率を変更したんだよ。しばらくおとなしくしてな」


「ふ、ふふっ。いいのか宿主?ワタシの自由が弱まるということは、サポートができない分スキル【影】の使える力も弱まるということだぞ?」


な!?ま、まじかよ!?だが!


「だが、別に時間がある!すぐに【影】の練度も上げてみせる!!」


「く、くそおおおう!!」


さようならカゲロウ。しばらくは俺の中にいるんだな


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 女神様への報告からさらに数週間。ついにこの日、俺たちはこの島を出ることになった。魔物を狩って食料も蓄えた。文字もある程度覚えた。さらに予定通りスキルの練度も上げた。もちろん【影】練度も上げ、カゲロウの支配率が今の状態でも【ニンギョウゲキ】とか使えるようになった。めちゃくちゃ大変だったけどな


「マスター。ついにこの島から出られるんですね」


「そうだな。やっとだ。もう一年くらいここにいた気がするよ」


「マスター、おいしいものを食べにいく約束忘れてませんよね?」


「ああ、そうだな。うまいもの食べに行かないとな。まあ、転移先がここより危険じゃなければいいんだがな」


「大丈夫ですよ。私とマスターの二人なら、どこでも生きていけますよ」


「おい、宿主にお嬢ちゃん。ワタシのことを忘れていないかい?」


 そうだった。カゲロウもいたな


「悪い悪い。そうだな。俺たちなら大丈夫だろう。じゃあ、そろそろ行くぞ!」


「はい!」


「ああ!」


そうして俺たちは魔法陣の上に乗る。その次の瞬間、俺たちは危険だらけの島から姿を消した



はい、『俺たちの冒険はこれからだ!』回でした。あ、終わりませんよ?本当にこれからですよ?

ちなみにカゲロウはもやもやで現れることができなくなっただけで、主人公の中から出れなくても喋ることはできます

次回、あっちの人たちの話にしようかと思ってます


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ