12 再戦
12話目です。アシュラとの再戦になります。
この話でアシュラの回は終わるはずだったのに・・・
俺が目覚めてから、数日がたった。アシュラと再び戦うことは決めたが、さすがに怪我した後にすぐってのは無理なことだし、ミカヅキに止められた。だからその数日はリハビリも兼ねて【身体能力強化】などの練習、アシュラ戦の作戦会議に使った。まあ作戦会議と言っても全然大したものじゃないがな。でもおかげで、なんとかなりそうな気がしてきた
そして万全の体調で準備を整えた昼ごろ、俺たちは施設の玄関を出た
「よし、再戦にいくか!」
「マスター・・・。コートと手袋、さらに魔眼とか厨二病患者みたいな格好してますね。ここが私たち以外いないところでよかったですよ。周りに人がいるときにこんな格好の人が隣に歩いていたら迷わず離れますよ」
・・・そんなことは言わないでほしかった。だってしょうがないじゃん!現在の最強装備っていったらこれなんだもん!コートは施設にあったもので、鑑定してみると【物理攻撃防御(上)】、【魔法攻撃防御(上)】、【身体能力上昇(上)】なんて結果がでたので遠慮なく盗りいただきました。見た目暑そうなんだけど、実際はそんなことないんだよね。なんだろう、魔法で着心地快適仕様とかになっているのかな?
「というかミカヅキ。お前なんでそのパーカーなんだよ」
「何でと言われましても、これが上等なものだったからですよ」
ミカヅキはパーカーを着ていた。このパーカーも、俺と同じ効果が付いていて性能に関してはなんの問題もない。ただ・・・
「なんでフードの部分に猫耳が付いているんだよ!?」
そう、ミカヅキが着ているパーカーにはなぜか猫耳が付いていた。ここの施設の研究員たちは一体なにを求めていたのだろう・・・
「ああ、この猫耳ですか?これはですねマスター・・・需要ですよ」
「どこからのだよ!?」
「わかりません。ですがきっとあるはずなんです。この猫耳フードを求める声が!というか、マスターも好きですよね?猫耳こういうのとか?」
嫌いではない。嫌いではないんだが・・・俺はやはり本物の方を触ってみたいんだよね!!
「宿主、いつまでこんな茶番をやっているんだ。そろそろ日が暮れるぞ」
「え、うそ?もう日が暮れるの?そっか~。じゃあ夜の森は危険がいっぱいだから、また明日にしようか!」
「おいまて宿主。何を真に受けている。まだ昼だぞ?・・・まさかここまできて逃げる気ではないよな?」
「いや、ちょっとほら。こう、いざ行こうとすると少し怖くなってきて・・ねぇ?」
「ねぇ?ではないわ!さっさと覚悟を決めろ!大丈夫だ。今はワタシもサポートはできる。負けるわけがなかろう?」
「そうですよマスター!私もなにがあっても守りますから。嫁として!」
うん・・そうだな。俺もいい加減に覚悟を決めるか!準備は万端。ミカヅキもカゲロウもいる。次は、アイツに眼球と腹をぶっ刺されたときの借りを返してやる。・・ミカヅキの発言に関しては・・・まあ置いておくとして
「じゃあ、借りをかえしに行くか!」
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森を進むこと数十分、【情報収集】でアシュラの痕跡を探しながら歩いていたミカヅキが止まった
「マスター、見つけました。あの洞穴です」
ミカヅキが指した場所を見ると、数百メートル先に洞穴があった。結構距離があるけど、魔眼のおかげではっきり見えるね。前は視力がいいとはいえなかったから、この距離だと見えなかったかもなぁ。いや~、そこはアシュラに感謝してもいいかな?・・・うん、そんなことはないね。やっぱりやられた分はやり返そう
「まだこちらには気づいていないようだが、どうする宿主?」
普通なら奇襲とかだろうが、たぶんアイツには通じないだろうな。野生の勘みたいながのありそうだし
「真正面から行く。アシュラは気づいて出てくるはずだ。そしたら、無暗に突っ込まず、いつでも攻撃できるように態勢を構えておけ」
「「了解し(まし)た」」
俺たちは最大限の警戒をしながら洞穴へ進んでいく。残り100メートル近くに差し掛かったとき、中からアシュラが出てきた。やっぱり野生の勘あるんじゃないかな?
「何かが近づいてきたと思ってみれば、貴様らか。そっちの貴様の方は重症を負わせたはずだが、元気そうだな。たしか目の方もやったはずなんだが・・・まあいい。そっちからわざわざ来てくれたんだ。今度は確実に殺してやる」
「俺は殺されに来たわけじゃないぜ?眼と腹のお返しをしにきたんだ。親から"何かをもらったらきちんとお返ししなさい"って言われてるんでな」
「はっ、それは何とも丁寧なことだなっ!」
アシュラが猛スピードでこちらに向かってくる。相変わらず速いな。だが、今の俺になら見切れるっ!
「ほう、これをよけたか」
「言っただろ?俺は殺されに来ているわけじゃないって!」
――――――ゴォウッ!!
「マスターを殺させはしません」
ミカヅキが隙をぬってアシュラに炎の攻撃を当てる
「面倒だな。少し本気を出そう。【身体能力強化】発動」
まじかよ。アイツ本気じゃなかったのかよ。だが、こちらも強化のスキルは使っていない。なら
「ミカヅキ、こっちもいくぞ。【身体能力強化】発動!」
「はい、マスター。【身体能力強化】発動」
『スキル【身体能力強化】が発動しました』
ちなみにミカヅキも強化スキルを持っていた。いつの間に魔物から奪っていたんだろうか
身体を強化したアシュラが向かってくる。スキル発動後も目で追えない速さではなかったが、明らか俺とスピードが違う。こっちも強化はしているはずなのに何とか凌いでいるといった感じだ
「くそっ、俺も【身体能力強化】を使っているのにっ!!」
「宿主、たぶん奴のスキルの練度は宿主よりもかなり高いと思うぞ。何せ宿主はつい最近使えるようになったばかりだ。使用歴に差がありすぎる」
でも、だからってこのまま負けるわけにはいかない。何か、アイツを倒せるようなヒントは無いのか!?
「【カゲアソビ・棘】!」
一瞬アイツが離れた隙を見て影の【棘】を連続して発生させる。だがアシュラはそれを難なく避けていく。一点集中で当たらないなら・・・
「【カゲアソビ・針山】!!」
先程の【棘】より一回の威力は落ちるが、広範囲に亘る【針】を剣山のように出現させる。さすがにこれは避けれないようで奴の足に何本もの針が刺さる
「ほう、だがこれくらいならっ!!」
アシュラは刀を振るい影の【針】を斬って消す。相変わらず厄介な刀だな。だがそれ以上に今の攻撃でも大したダメージが無さそうなのが問題だな・・・・・っと!!
【針】を消したアシュラが俺に迫る。眼前に迫るアシュラに対して俺は影で【壁】を作り出す。だが先程の【針】と同じくアシュラに振るわれた刀によって【壁】はいとも容易く斬られる
「無駄なことを」
アシュラは俺に向かいそう言い放つ。確かに【壁】そのものは無駄だが、それ自体が無駄なわけじゃないさっ!!
「【氷弾】!」
【壁】を斬るために刀を振るった時間のおかげで、俺が斬られる前にミカヅキがアシュラに撃った魔法の氷の弾が奴の脚に着弾する。その隙に俺はその場を離れる
「クッ!!だが、こんなものは―――――」
「まだです!【氷縛】!」
アシュラに当たった氷弾はそこから氷を生やしていき、次第ににアシュラの脚を凍らせ地面と繋げ、奴の動きを止めた
「ナイスだミカヅキ、助かった!」
しかしどうしよう。【影】の攻撃はあまり効いている様子は無かった。なにかアイツに有効だとなるものは・・・
「宿主、少し感じたのだが、奴は打撃より魔法の方が効果的ではないか?」
魔法だと・・・?確かにミカヅキの魔法が当たった時、若干苦悶の表情になったような・・・
「こんな拘束・・【炎脚】!」
氷漬けにされていた足が炎によって溶ける
「ミカヅキ、もしかするとアイツは打撃より魔法の方が効くかもしれない。魔法メインでやってみてくれ」
「わかりました。マスター」
「こそこそと何の話だ?」
氷漬けを解いたアシュラが一瞬でこちらへと詰め寄り、刀を振り下ろす。だが俺はそれを手で受け止める
「何って、お前を倒すための算段だよ!」
お返しに俺は奴の腹に影を纏った拳を入れる。そして奴に触れた瞬間影から魔法の炎が噴出する
「グウッ!!相変わらずその手袋はやっかいだな」
よしっ、カゲロウの読みは当たりのようだ
「フッ。それはどうかな?カゲロウ!」
「はいよ宿主。こいつは痺れるぜ?【雷撃】!」
「追撃です【風刃】!」
「グゥオッ!!」
俺の手に纏わりついた影から雷が放たれアシュラを痺れさせる。そこへ背後からミカヅキの風の刃が襲う。どちらも魔法による攻撃。物理の攻撃よりも効果は高いはずだ
「クソッ!魔法攻撃とは煩わしいな」
アシュラは一旦俺たちと距離をとり体制を整える。よし、さっきまでよりダメージが与えられている。あれ?でも少し傷が少なくなってないか?あ、自己回復の効果か。さっさと倒さないとせっかくのダメージが無駄になってしまう
「しかたがない。アレを使うか・・・【修羅道解放】」
アシュラがそう呟く。その瞬間、空気が変わった。それと同時に目の前にいたはずの奴が消えた
「消えた!?いや移動したのか!? 何処へ!?」
「ここだ」
そう俺の背後から声が聞こえた。俺の認識できない速さで後ろへ回ったのだ。まずい、これは防げない!
―――――――ガンッ!
俺の背後へと振り下ろされた刀はカゲロウによって防がれる。だが、衝撃を受け止めきれず、俺は前方へと弾かれた
「ガッ!はあ、はあ、ナイスだぜカゲロウ」
「礼には及ばんよ。宿主には死なれてもらっては困るからな。しかし奴、かなりの強化をしてきたぞ。ワタシでも今の状態じゃあ反撃まではできないな」
そこへミカヅキも飛ばされてきた
「グフッ。すいませんマスター。少し油断しました」
「いや、気にするな。それよりも少し試してみたいことがある。少しいいかミカヅキ・・・」
「・・・・わかりました」
「最期の話し合いは終わったか?」
「ああ、お前の最期の話し合いが終わったところだよ。・・・カゲロウ、魔眼の制限解放、いけるな?」
「宿主、大丈夫か?いまだ慣れていない状態だとかなり負荷がかかるぞ?」
「やってくれ。そうでもしないと、アイツには勝てない」
「わかった。ではいくぞ宿主。【魔眼・制限解放】!」
俺の頭にいろいろな情報が入ってくる。それと同時に様々なものが視えるようになる
「何をしたかはわからんが、これで死ぬがいい!」
アシュラが目の前から消える。だが、先ほどと同じように攻撃は食らわない
―――――右からの横薙ぎ―――――
それが視えた・・・俺は攻撃が当たらないようにしゃがむ。その瞬間、頭の上を刃が通る
「何!?あのスピードが見えだと!?」
驚愕の表情を見せるアシュラの足を払い、バランスを崩したところに蹴りを入れる。そしてすぐさま後方へ下がる。そこへミカヅキの魔法が炸裂する
「ガハッ!!あの速さを追えるとは、どういう視力をしてやがる」
アシュラは少し勘違いをしている。俺が視たのは移動してくる奴の姿ではなく、奴が俺に攻撃をしてくる未来である。魔眼の制限を解放したときに使える能力の一つ【未来視】だ。ただこれは他の魔眼の能力の中でも一度の情報量がとびぬけて多く、多発することはできない
「だが、これで勝ったと思うなよ?」
再びアシュラが迫る
「【カゲアソビ・刀・半影喰】!【攻撃力】・【防御力強化】!」
『スキル【攻撃力強化】【防御力強化】が発動しました』
――――――ガキンッ!!
アシュラの刀と俺の刀がかち合う。パワーは向こうのほうが強く押されるが、どうにか吹っ飛ばされないように耐える。少しの間その状態が続き、このままだと押し切られると感じた俺は、奴の押す力を利用して、その場から離れる
「俺が炎を使えるってことを忘れんじゃねぇぞぉ!――――ボフウゥゥゥ!!!」
うお、アイツ口から炎を吹きやがった!!大道芸かよ!?だが、これくらいは問題ない
「喰え。【半影喰】!」
アシュラが吹きだした炎は全て影の刀に吸われる
「!?おいおいなんだよそれは!?」
「お前の持つ刀の特性は確か、″スキル・魔法で作られた大抵のものは斬ることができる″ だったな。俺の持つ刀の特性は少し似たようなもので″スキル・魔法で作られた大抵のものは吸収することができる″というものだ」
「はは、それは反則じゃないか?」
「似たようなものを持つお前には、言われたくないっ!」
今度は俺からアシュラに攻めかかる。しかし、なかなか攻撃は入らない。たまにくるアシュラの炎を纏った拳や蹴りを俺は【未来視】やカゲロウのサポートを受けつつよけていく。そして作られた一瞬の隙。俺はそこを逃さずにアシュラの脚に刀を突き刺す
「カゲロウ!!」
「あいよ!【暴発】!」
刀を突き刺した部分からカゲロウが炎を送り込み、脚の内部で爆発させる。これで片足を抑えることに成功した
「グウウゥゥオオオオ!!!!」
思わず動きを止めるアシュラ。俺はそこから離れ、止めとなる攻撃を仕掛けにいく
「【影の食卓部屋・結界】」
アシュラを中心に、黒い箱が周りを囲む
「なんだこの黒いものは!?クソッ!出れねぇ!」
内側からアシュラが抜け出そうと攻撃をしてくる
「カゲロウ、持ちそうか?」
「結構きびしいねぇ。あわよくば喰おうかと思ってたんだが、それはきつそうだ。さあ、宿主やっちまいな」
「ミカヅキ、準備はいいか?」
「はい、マスター。いつでもオーケーです」
「よし、決めるぞ!【激流】!」
「うお!?なんだ!?水が流れ込んできたぞ!?」
ブラックボックスの中に影から水を流し込む。そして次に
「いきます。【豪爆炎】!」
ミカヅキが超高温の炎をぶち込む。この工程をもってして完成する技が
「「【水蒸気爆発】!!!」」
―――――――――ドゴオォォン!!!
結界を解除したとき、そこにいたのは瀕死のアシュラだった
はい、ということでアシュラとの戦いでした。戦闘描写って難しいですね。
水蒸気爆発の英語の読みってあれで当たってますかね?すっごい不安なんですが・・・
次回、やっとアシュラ回が終わります(はずです)




