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初めまして、長和三鷹です。
ここで小説を書くのはこれが初めてです。
初心者丸出しの文章ですが、読んでいただけるとありがたいです。
読んでみた感想などもお願いしたいです。アドバイスも大歓迎です。
よろしくお願いします。
真っ白な空間。
比喩的な表現などではなく、この部屋の壁から天井、数少ない家具の机や椅子までもが全て白で統一されており、どこまで続いてるのか、あるいは床があるのか、天井があるのかとも疑いたくなるほどに、平衡感覚やら遠近が掴めない。窓もカーテンも、まるで無駄なものを全て排除したかのような空間が、正にこの部屋だ。そして、この部屋は抽象的な意味で何もない空間だった。普通、部屋というものはそれぞれの部屋によって違えど、匂いや色などをなんとなく感じることが出来るもの。決して、真っ黒に染めていようが、真っ白に染めていようが、それは一緒で、何らかの雰囲気を感じ取ることができるのだ。
しかしながら、ここは全くそういうものがない。雰囲気自体が無いといえばよいのだろうか。雰囲気があると仮定したとしても、異様な雰囲気としか言いようが無い。漢字一文字で表すならば『無』。感情、匂い、雰囲気。全てを遮断したような何も無い部屋だった。
そんな真っ白な空間に、椅子に座っている2人の影があった。
1人は白衣の女性。眼鏡を掛けたこの女性は、釣りあがった目や細い輪郭からきつい印象を覚える。また細身の体躯をしており、組んだ足からは太股まで見えていて、白衣というのはあまり似合いそうに無い人だった。しかし、一方で真っ白な白衣はそんな彼女を強調する材料になっている。
そして、その向かいの席に座っているのは小さな少年だった。まだ小学生と見える幼そうな顔に体躯。大きな瞳は可愛らしさを醸し出している。しかし、少年はこの白の統一感溢れた空間の中で柄入りの派手な衣服を身に纏っていた。そして、一際目を惹くのが彼の表情。普通、小学生くらいの子供だったら何かしらの感情を含んだ表情をして、感情を表に出すものだ。しかしながら、彼の表情には一切の感情も見えなかった。無感情。まるで、全てがどうでも良いと訴えているようなそんな雰囲気が出ている。
そんな2人が真っ白な空間で、ただ向かい合って座っている。それは、異常のほか無かった。
「それでは今からいくつかの質問をします。正直に答えてください。」
そんな静かで異様な雰囲気を漂わせていた沈黙を破ったのは、女性の方だった。しかし、少年に対して言うような心遣いのある穏やかな口調ではなく、まるで突き放しているような、嫌っているような口調だ。
少年は声に反応するように、視線を机から女性へとゆっくりとした動作で移していく。女性は目が合った時点でまた口を開き始めた。
「では、あなたの名前は?」
「……礎野村 逞です。」
女性の質問に、少しの間を空けた後、少年には似合わない敬語を使って丁寧に抑揚のない声で答える。
女性は続けた。
「あなたの年齢は?」
「……9歳です。」
「あなたの好きな食べ物は?」
「……グラタンです。」
「あなたの嫌いな食べ物は?」
「……ブロッコリーです。」
「あなたの今、嵌まっていることは?」
「……ゲームです。」
何の取りとめも無い質問に、歳相応の答えが飛び交う。しかし、そのどちらともが、発した言葉とそのときの表情は一致しなかった。
そろそろそんな質問が繰り返され、10分を経とうとしている頃。
「あなたの今、悩んでいることは?」
「……ありません。」
「あなたの家族構成は?」
「……父と母と僕の3人です。」
「では、最後の質問です。」
そういうと、女性は居住まいを正し、鋭い目を更に鋭くして、少年を睨むように見つめた。
しかし、少年はそんな女性の視線もしっかりと目に映して、怯まずにジッと見る。
少しの沈黙が流れて、女性はゆっくりと口を開いた。
「あなたは何故、両親に包丁を向けたのですか?」
「……分かりません。」
少年はそのときだけは俯いて、顔を見えないようにしていた。