表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狐の皇子  作者: 葉月秋子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/26

6  


 サンルームに続く明るい居間で、第二妃は息子を待っていた。


 金を基調とした豪奢な室内には、異国の植物と花々の鉢があふれ、天井からはたくさんの金銀細工の鳥籠が吊るされて、色鮮やかな小鳥たちが鳴きかわしている。 

 錦張りの寝椅子にしどけなく横たわり、母はアルフを招いた。


 精緻な刺繍の布と宝石が黒髪が隠れるほどに頭を飾り、胸ぐりの深いドレスからのぞく豊満な乳房は絹のように滑らかで白かった。

 たくさんの指輪をはめた手を動かすたびに、ブレスレットに仕込まれた練り香が退廃的な重い香りをまき散らす。


「おお、優しい子じゃ。母に花を捧げてくれるのか」


 言われてアルフはまだマリンカの一枝を持っていたことに気づいた。

 おとなしく母に差し出す。

 受け取った母はクスリと笑った。


「次からは、女子(おなご)に花を贈るときは、安っぽいマリンカなどではなく、温室咲きの八重の薔薇にするが良いぞ」


 横に座らせ、甘いシロップや砂糖菓子を勧める。


 乗馬で汗をかいたアルフはただ一杯の水が欲しかった。

 汗と埃で体がちくちくする。

 埃だらけの服の上から、母はアルフの体を撫でまわした。


「怪我はないようだの。

 お前を振り落とすような暴れ馬は殺してしまって、もっとおとなしい小馬を用意してあげようほどに」


「ちがう!僕が勝手に落ちたんだ」


「僕などと言ってはいけないと、いつも注意しているではないか」


「僕・・・ちがう、私はあの小馬が好きなんだ、母上!

 落ちたことなど、なんでもない」


「好き嫌いの問題ではない。

 御身を危うくするものなどを近づけてはならぬのだ。

 御身の大切さはよくよく言い聞かせているではないか」


「あの小馬に何かしたら許さないから!」


「許さぬと!母に向かってなんという口をきくのか!」


「ちがう!母上、なぜわからないんだよ!あの小馬は悪くないんだ!」


「判っている、母にはすべて判っている。

 お前は優しい子じゃからの。

 何も心配することはない。この母に任せておくのじゃ」


「判ってないじゃないか!聞いてよ!母上!」


「みっともない、王子とあろうものがそう声を荒げるでない。

 困った年頃じゃな。

 さ、あちらへお行き。埃だらけでひどいなりじゃ」


 母との会話は最近いつもこうだ。


 こっちの言うことを全然聞かないくせに、怒ると反抗期だと頭から決めつける。


(王子でなかったら、絶対にキレてやるのにっ!)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ