6
6
サンルームに続く明るい居間で、第二妃は息子を待っていた。
金を基調とした豪奢な室内には、異国の植物と花々の鉢があふれ、天井からはたくさんの金銀細工の鳥籠が吊るされて、色鮮やかな小鳥たちが鳴きかわしている。
錦張りの寝椅子にしどけなく横たわり、母はアルフを招いた。
精緻な刺繍の布と宝石が黒髪が隠れるほどに頭を飾り、胸ぐりの深いドレスからのぞく豊満な乳房は絹のように滑らかで白かった。
たくさんの指輪をはめた手を動かすたびに、ブレスレットに仕込まれた練り香が退廃的な重い香りをまき散らす。
「おお、優しい子じゃ。母に花を捧げてくれるのか」
言われてアルフはまだマリンカの一枝を持っていたことに気づいた。
おとなしく母に差し出す。
受け取った母はクスリと笑った。
「次からは、女子に花を贈るときは、安っぽいマリンカなどではなく、温室咲きの八重の薔薇にするが良いぞ」
横に座らせ、甘いシロップや砂糖菓子を勧める。
乗馬で汗をかいたアルフはただ一杯の水が欲しかった。
汗と埃で体がちくちくする。
埃だらけの服の上から、母はアルフの体を撫でまわした。
「怪我はないようだの。
お前を振り落とすような暴れ馬は殺してしまって、もっとおとなしい小馬を用意してあげようほどに」
「ちがう!僕が勝手に落ちたんだ」
「僕などと言ってはいけないと、いつも注意しているではないか」
「僕・・・ちがう、私はあの小馬が好きなんだ、母上!
落ちたことなど、なんでもない」
「好き嫌いの問題ではない。
御身を危うくするものなどを近づけてはならぬのだ。
御身の大切さはよくよく言い聞かせているではないか」
「あの小馬に何かしたら許さないから!」
「許さぬと!母に向かってなんという口をきくのか!」
「ちがう!母上、なぜわからないんだよ!あの小馬は悪くないんだ!」
「判っている、母にはすべて判っている。
お前は優しい子じゃからの。
何も心配することはない。この母に任せておくのじゃ」
「判ってないじゃないか!聞いてよ!母上!」
「みっともない、王子とあろうものがそう声を荒げるでない。
困った年頃じゃな。
さ、あちらへお行き。埃だらけでひどいなりじゃ」
母との会話は最近いつもこうだ。
こっちの言うことを全然聞かないくせに、怒ると反抗期だと頭から決めつける。
(王子でなかったら、絶対にキレてやるのにっ!)




