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兄上と競争するのは難しいんだ。
遅刻したアルフは、馬上で待っている兄を見てため息をついた。
だって、あっちには全然その気がないんだもの。
「遅れて申し訳ありませんでした」
謝罪しながら、自分の耳は挑戦的に反らされているのがわかる。
兄は控えめに微笑みながらうなずく。
銀の耳は、柔らかくリラックスしたまま。
どんな接し方をしても弟の耳が神経質にぎゅっと反るのを知って、セイレンはいつのころからか、アルフに声をかけるのを止めてしまっていた。
取り澄ましてお高くとまった、嫌な奴だ、と思おうとしても、何かの拍子に柔らかな笑みを向けられるので、アルフはやりにくくてしかたがない。
並足で馬場を回りながら、自分の守り役のローワンと、兄の守り役のトゥ・リーが、あからさまに相手を避けて、馬場のむこうとこっちに立っているのが目に入った。
「あれほどはっきり意思表示してくれれば、まだやり方があるのに」
アルフはため息をつき、クスッと笑う。
初めてトゥ・リーを見る者は、みなギョッとする。
見上げるような大男のトゥ・リーは戦の傷が元で、両耳を失っていたのだ。
聴力に異常はないようなのだが、耳がないために表情が読めない。
力士のようにごつい顔に吊り上がった小さな眼、割れ目のような口だから、なおさら。
幼い頃のアルフは、異形のトゥ・リーがすごく怖かった。
(耳が小さくて下のほうについているという人間族も、あんな変な顔をしているのだろうか)
僕の守り役がローワンで良かったと、のっぺりした丸い頭を横目で見ながら、よく思ったものだった。




