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狐の皇子  作者: 葉月秋子


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「私は早く自分の守護獣の形を知りたいんだ」


「皆様、そうおっしゃいます。

 ですが焦りは禁物、先ずは自由にご自分のオーラを視覚化することを学ばれることです。

 術を操ることと、魂を遊離させることは、まったく別のものですから。

 炎を操るのは、妖力の強い王家の方々にとっては、息をするようにたやすいこと。

 魂を遊離させるのは、誰にとっても厳しい意志の鍛錬を必要とすること。

 肉体と魂を繋ぐ糸が切れれば、命を失うことになるのですぞ」


(ちぇっ)


 妖狐の一族である彼らは、平常の人の姿のほかに『魂の本質』と呼ばれる狐の姿を持っている。


 霊体で現れるそれは『守護獣』と呼ばれ、鍛錬によって、目に見える形で肉体から引き出すことができる。


 そして現実の肉体をその『守護獣』の姿に重ね、変身できるようになって初めて、一人前の妖狐と認められるのだ。


「よろしいですかな、肉体が獣に変化するのは、ただの獣化でございます。

 人間あたりが変化するのはたいていこれで、言葉もしゃべれず、理性も持たぬ、ただの獣になってしまうのです。

 妖力の強い王家の方々は、危険を防ぐため、みなさま生まれた時に障壁を授けられ、魂なく獣化することの無きようになっておられます。

 魂を獣に変え、それに肉体を添えて、初めて知性と妖力を備えた幻獣に変化することができるのです。

 まずは魂を分離し、その真の姿を現すこと。

 十五歳の冬至祭に行われる成人の儀式で、魂の真の姿を一族に披露することによって、はじめて障壁が解かれ、正式に妖狐の一族として変身が認められることになるのです」



 何度も聞かされた、一族の掟。


 十五歳になっても守護獣を表せぬ者は、妖狐の一族から追放される。

 どれほど身分ある王族の身でも。


 それは一族の子供たちにとって、期待と不安と恐怖に満ちた成人の儀式だった。



「兄上様とあなた様と、どちらが早く守護獣を実体化して見せられるか、楽しみですな」


「兄上もまだ、実体化されてはいないのか」


「はい、ですが、それは見事な銀色のオーラを見せられました。

 兄上の守護獣は銀でございましょう」

 

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