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選ばれなかった英雄  作者: はむ
第1章
6/10

5.検証の儀

村長の家に連れてこられたリアンは、囲むように立つ大人たちの視線を受けていた。

そのどれもが、探るようで、恐れるようで……温かさとは無縁だった。

「…では、始める」

村長の低い声が部屋に響く。

テーブルの上には、青白く揺らめく水晶球。

“スキルを持つ者にのみ反応する”といわれる古い魔道具だ。

「リアン。手を置きなさい」

促され、リアンは緊張で喉が鳴った。

周囲からはドクドクと心臓の音が聞こえてしまいそうだ。

(俺に……スキルなんてあるわけない。昨日も……た

だ必死だっただけで……)


震える指先を水晶に近づけようとした、その時……

「待ってください!」

ミリアが駆け込んできた。

息を切らし、頬を涙で濡らしながら。

「リアンは何も悪いことしてません!勝手に“覚醒したか確認する”なんて、おかしいです!」

「ミリア、落ち着きなさい。これは村の安全のためだ」

村長は穏やかに言ったが、その目は冷えていた。

「魔獣が現れた直後に、君が異常な動きを見せたという証言がある。噂が広がる前に、真偽を確かめねばならん」

「証言なんて、あいまいです!リアンは……ただ私を守ろうとしただけなんです!」

ミリアの叫びは誰にも届かない。

村人たちは皆、“正しさ”ではなく“恐れ”によって動いていた。

リアンはゆっくりミリアに向き直った。

「ミリア……いいよ。やらせてみる」

「だめ! リアンは……そんなの気にする必要ないよ!」

「このままだと、もっとひどい噂になる。

 だったら……ここで終わらせたい」

彼の言葉にミリアは唇を噛んだ。

手は震え、涙が溢れそうになる。

(ミリアのためにも……ここで決着をつけるんだ)

リアンは決意を固め、水晶へ手を伸ばした。

―その瞬間。

胸の奥で“熱”が強く脈動した。

(……まただ。昨日と同じ……いや、それ以上に熱い)

水晶は触れる前から微かに震えている。

村長も、周囲の大人たちも気づき始めた。

「な、なんだ……!?」

「起動反応だ……! やはり覚醒していたのか!」

ざわめきが部屋を包む。

リアンの指先が水晶に触れた途端…

ぱぁんっ!!

破裂音とともに、眩い光が弾けた。

衝撃で大人たちが後退し、リアン自身もよろめく。

水晶は中央から真っ二つに割れていた。

「……ば、ばかな。水晶が……壊れただと……?」

「スキルの有無を測るだけの道具だぞ!?

 壊れるなんて……聞いたことがねぇ!」

誰もが言葉を失ってリアンを見る。

ミリアだけが、震える手でリアンの腕を掴んだ。

「リアン……怖くない? 大丈夫……?」

リアンは答えられなかった。

胸の奥で燃えるような光が、今にも爆ぜそうなほど激しくなっていく。

何かが目覚めようとしている。

だがそれが祝福なのか、破滅なのか。

まだ誰にも分からなかった。

村のざわめきは、もはや“噂”ではなく“確信”へと変わりつつあった。

リアンは、村では収まりきらない“何か”を持っている。

そうして、少年の運命は静かに、確実に動き出していた。

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