━終焉より始まりへ━
最初に、光があった。
そして、闇がそれを呑み込んだ。
それは神話の中の出来事ではなくこの世界の“根源”そのものだった。
光は秩序を生み、闇は混沌を生んだ。
神は世界を正しき形に整えようとし、魔族はそれを壊し自由を手に入れようとした。
何度も何度も、光と闇は衝突し、そのたびに世界は焼け、また再生を繰り返した。
そして今も、終わりのないその均衡は続いている。
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高天の座にて、神々は静かに見下ろしていた。
「秩序は正義。混沌は罪。
理を乱す者は、いずれ世界を壊す。」
神々は法を創り、命に限りを与えた。
それが“正しい世界”だと信じていた。
しかし、その中で“祈りを失った者”たちは、ただ静かに消えていった。
「人は導かなければならぬ。
彼らに自由を与えれば、再び混沌が訪れる。」
そうして神は、あらゆる“例外”を許さなかった。
抗う者を罰し、運命を越えようとする魂を封じた。
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一方、深淵の底で、黒い焔が揺らめいた。
「神よ。お前たちの秩序は、ただの鎖だ。」
かつて天から堕とされた“最初の魔”が嘲笑う。
その声に応じ、無数の魔族が目を覚ました。
「我らは破壊の子。壊すことでしか、自由は手に入ら
ぬ。」
魔族は光を憎み、神を否定し、
だが同時に神にだけ許された“永遠”を羨んでもいた。
こうして、光と闇の争いは再び始まった。
それは誰にも止められない、宿命の輪廻。
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だが、その狭間でひとりの“人間”が立ち上がった。
「神も魔も、俺には関係ない。
ただ、この手で誰かを救いたいんだ。」
その言葉は、どちらの陣営にも届かなかった。
けれど確かに、世界の理を震わせた。
その男の名は、もう誰も覚えていない。
神々はその存在を恐れ、魔族はその魂を求めた。
彼は神にも祈らず、魔にも従わず、ただ“人”として生き抜いた。
そして彼の魂は燃え尽き、欠片だけが世界に残された。
それは、やがて“記憶”となり、誰も知らぬうちに、ひとつの血脈へと受け継がれていった。
━━━━千年後。━━━━
神々は眠り、魔族は影に潜んだ。
だが世界は、また少しずつ歪み始めていた。
「再び選ばれぬ者が、立ち上がる時……」
「この世界は、また均衡を試される。」
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辺境の村、砂埃の舞う訓練場で、ひとりの少年が木剣を握りしめていた。
名は、リアン・クロード。
魔法の素質もなく、剣の腕も凡庸。
誰もが彼を「無能」と呼んだ。
だが、その胸の奥で、確かに燃えているものがあった。
それはかつての英雄の“欠片”、神にも魔にも支配されぬ、“人の意志”そのもの。
この世界で最も小さな灯が、やがて光と闇の理を揺るがす炎へと変わることを、誰も知らなかった。
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これは、選ばれなかった少年が英雄へと至るまでの物語。
そして、“神と魔を超える”ただ一人の人間の記録である。




