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選ばれなかった英雄  作者: はむ
プロローグ
1/10

━終焉より始まりへ━

最初に、光があった。

そして、闇がそれを呑み込んだ。

それは神話の中の出来事ではなくこの世界の“根源”そのものだった。

光は秩序を生み、闇は混沌を生んだ。

神は世界を正しき形に整えようとし、魔族はそれを壊し自由を手に入れようとした。

何度も何度も、光と闇は衝突し、そのたびに世界は焼け、また再生を繰り返した。

そして今も、終わりのないその均衡は続いている。


━━━━━━━


 高天の座にて、神々は静かに見下ろしていた。


「秩序は正義。混沌は罪。

理を乱す者は、いずれ世界を壊す。」


神々は法を創り、命に限りを与えた。

それが“正しい世界”だと信じていた。

しかし、その中で“祈りを失った者”たちは、ただ静かに消えていった。


「人は導かなければならぬ。

彼らに自由を与えれば、再び混沌が訪れる。」


そうして神は、あらゆる“例外”を許さなかった。

抗う者を罰し、運命を越えようとする魂を封じた。


━━━━━━━


一方、深淵の底で、黒い焔が揺らめいた。


「神よ。お前たちの秩序は、ただの鎖だ。」


かつて天から堕とされた“最初の魔”が嘲笑う。

その声に応じ、無数の魔族が目を覚ました。


「我らは破壊の子。壊すことでしか、自由は手に入ら

ぬ。」


魔族は光を憎み、神を否定し、

だが同時に神にだけ許された“永遠”を羨んでもいた。

こうして、光と闇の争いは再び始まった。

それは誰にも止められない、宿命の輪廻。


━━━━━━━


 だが、その狭間でひとりの“人間”が立ち上がった。


「神も魔も、俺には関係ない。

ただ、この手で誰かを救いたいんだ。」


その言葉は、どちらの陣営にも届かなかった。

けれど確かに、世界の理を震わせた。

その男の名は、もう誰も覚えていない。

神々はその存在を恐れ、魔族はその魂を求めた。

彼は神にも祈らず、魔にも従わず、ただ“人”として生き抜いた。

そして彼の魂は燃え尽き、欠片だけが世界に残された。

それは、やがて“記憶”となり、誰も知らぬうちに、ひとつの血脈へと受け継がれていった。


━━━━千年後。━━━━


神々は眠り、魔族は影に潜んだ。

だが世界は、また少しずつ歪み始めていた。


「再び選ばれぬ者が、立ち上がる時……」

「この世界は、また均衡を試される。」


━━━━━━


 辺境の村、砂埃の舞う訓練場で、ひとりの少年が木剣を握りしめていた。

名は、リアン・クロード。

魔法の素質もなく、剣の腕も凡庸。

誰もが彼を「無能」と呼んだ。

だが、その胸の奥で、確かに燃えているものがあった。

それはかつての英雄の“欠片”、神にも魔にも支配されぬ、“人の意志”そのもの。

この世界で最も小さな灯が、やがて光と闇の理を揺るがす炎へと変わることを、誰も知らなかった。


━━━━━━


これは、選ばれなかった少年が英雄へと至るまでの物語。

そして、“神と魔を超える”ただ一人の人間の記録である。

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