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癖者好き女王と紳士な銃男  作者: 秋浦ユイ
《第1部 護衛編》交際証明書
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第25話 本心

 人間は愚かだ。

 それは私も含めてそうだ。


 王族や貴族、富豪などの権力者とそうでない平民と癖者達……前者は国をまとめ上げ、時に戦争を繰り返し領土や自らの暮らしを豊かにしたいと願う。


 後者はそれら前者の行為に個々の同意など反映されずに付き添うのみ。

 つまり、この世に産まれ落ちた時から皆

 

 ――従える者と従う者に分けられるのだよ。


 私は当然、前者だ。

 運が良いというよりこれが運命という事。


 さあ目の前に転がり込む忌々しい癖者をさっさと払って全てを終わらせようか。


「な!ど、どうしてアナタが?シュルツ!」


 王子は子供の頃から相変わらず元気そうだ。

 一時期、あの娘と仲良くしたと思えば純情を咲かせたのは規格外だったが……

 

 まあそれは終わった事、あの娘は娘で私の権力と名声、そして信頼を確固たる物にする為の


 ――手段に過ぎないのだから。


「いえいえ、ただ……そろそろオーリア女王が来訪してくるので王子様をお呼びに来ただけですよ」


「でも驚きましたねぇ、まさかまたアナタが……此処にやってくるとはねぇ。懲りないねぇ」


 何らかでまた奴が私の計画を阻止する事は想定内だ。だが王子と協力関係を気付いているのは驚いた


 銃男と初目にかかった時は、ゾクリと肌が騒めいた事だ。よくもまあ、この癖者を雇った物ですよねぇ……


 オーリア女王が彼に関心を寄せていたとしても……やはり私は癖者は好かんね。


「ワタクシはただ、誤解を解きたいだけですよ。」


「誤解……?」


 銃男がワタクシに歯向かうように立ち上がり、声を挙げた。王子は彼と足元を揃えて、私を警戒している……やはら王子は癖者側に付いてしまったか


 どちらにせよ、この銃男には死んで貰わなければならないな……私の本性を知ってしまったからには


 王子は後から掌握すれば、良い。

 あの娘を材料にすれば何でも効くはずさ。

 確かに王子と娘の間に恋情が咲いてしまったのは規格外だったがこういう時に役立つ。


「私はただ、外交をしているだけですよ。両国がより良い未来の為に豊かな暮らしの為に――ただ動いてるだけですよ」


 扉は私の背に、奴の逃げ場は無い。

 窓から飛び出す事は考え得れるが……此処は高さ十メートル程ある二階だ。致命傷は避けられない

 彼らとて、馬鹿ではないだろ?


「外交ですと?アナタは自身の利益しか考えていないのではないですか……」


「何を言いますか?ベレッタさん。ポロペ国の女王とユパロンの王子ゴルド様が交際証明書を結び、両国の交わりが強固な物となれば自然と両国の――」


 おっと、これは不味いな……

 ゴルド王子が剣を抜いた

 今後に直接響くから

 王子には何もしてはいけないんだよなぁ。

 どうしたものか。

 

「本当の事を言ってくれよシュルツ!お前の本当の目的は何なんだよっ!」


 この数十年間、王子を見守ってきたけれど初めて見る覚悟を決めた迫真な顔を私に向けている……

 あぁ素晴らしいな。


 従える者に産まれたにも関わらず、此処までリスクを背負ってまで知りたがるのか……

 忌々しい癖者と協力してまでもですよ?

 王子は本当に素晴らしき器だ


「はぁ〜感銘を受けましたよゴルド王子様……この際仕方ないですねぇ他言は厳禁ですよぉ?」


 ――どうせ私の計画は狂わないさ。

 ゴルド王子をいつでも心握できる糸はある、銃男は殺せばいいし大体、既に無力さ。

 こんな物に私が擦り傷さえもつけれんさ。


「私はね全ての人間は愚かだと考えているのだよ……権力、資源、領土こう聞いて君達はおぞけを引かないかい?」


 あぁ依然と二人は警戒を緩めないね。

 一歩前に出て話を進めるけれど心は開かない……

 そりゃあそうだね。


「――私の計画はね両国を統合して“楽園”を作るのだよ私の様に聡明で有能な人間だけのね。素晴らしいだろ?そこには当然、争いも起きず権力も一強にならない……」


 笑みが止まらない

 笑みを緩める機会設定が壊れているかの様だ。

 こうして声高らかに野望を話すのは、そうない事だから……嬉しいなぁ。


「元々、住んでいた民はどうなるというですか……」


 おや、なんだ?

 興味があり気なようだ銃男君。


「良い質問だよベレッタ……ユパロン国民は私が選定した者のみが“楽園”に住める。ただポロペ国民は殆どが癖者だから、その時点で落選だね。」


 もちろん、君は私の“楽園”には住めないよ。

 此処で死ぬのだから……今、私のスーツの中には君の頭部と同じモノが入っている。


 話すだけ話して、早く殺そう……


「そんな事、不可能に決まってるだろシュルツ……目を覚ましてくれ。貴方がしている事は間違いだ」


 いつでも私を斬れるように剣を構える王子。

 悲し気にも同情をする様な声色だ。

 だからと言って私が辞める事はない。


「ゴルド王子様……アナタが、それを実行するのですよ?私には現段階では当然、国を動かす権利は有りませんからねぇ。」


 おおっと聞いた途端、王子は固唾を呑むような強く強く眉間に皺を寄せている。

 

「俺がそんな事をする訳ないだろ……例え貴方に指示されたとて!」

 

 明らかに痺れを切らしているな……

 ――そろそろ潮時かな


「拒否したら……()()()()()()()()()()()()


 ――カランカララン


 構えていた剣を落とし

 抜け殻になったかのように膝から崩れ落ちた王子、全てを悟ったのだ。自分がどんな状況下に置かれているかを。


 淀んだ王子の顔は正に蜜の味だ、気持ちがいい。

 この為に私は何年も何十年も計画を練り立ててきた甲斐があったというもの。


 さあ、遊びは此処までにして。

 気色の悪い銃男を殺すとしようかね


 崩れ落ちた王子を諸共せずして、一向に警戒をしているのは虚勢だろう。

 もうお前は今でも逃げ出したいだろう?

 此処に再びやってきた事を後悔している事、だろうね……


 君が最後に見る走馬灯には。

 一体、何が映るのかねぇ癖者に産まれ堕ちた時から幸せになる運命なんて決してない。


 私の違って悲惨な物だろうなぁ

 来世は癖者でなく真人間に産まれるといいな。


『世は腐ってる――』


 だからこそ私が変えなければいけない。

 今生の全ての癖者や愚か者を救えなくとも

 癖者なき世界、低脳なき世界を実現すれば


 長い目で見れば。

 世の全ての人間は健全なことだろう


「ありがとベレッタ……君の犠牲は無駄にしない」


 私はスーツから銃を取り出して

 彼に突きつけた。

 驚く彼の横には抜け殻になった王子がいるが、気にしない……コレで私の計画は――


『話は聞かせてもらったぞ』


 んっ!

 後方から声が……あの方の声が!

 瞬時に後方の扉を見るがまさか……


 ――国王様が。


「お主の“本心”は理解した……」


 でも、なぜ国王が?

 いつから話を聞かれていたのだ?

 王子か、銃男の仕業か……ならば最初から私は勘付かれていたというのか。


「お前の声を聴かせてもらっていたぞ、常にな。」


 国王の更に後方からゾロゾロと兵らがやってくる。その先頭を歩くのは予定到着時刻にはまだ早い“オーリア女王”!


 どうしてだ……

 や、やはりこの銃男の仕業だ。

 奴もトランシーバーを掲げてやがる!


 しくじった!

 ノープランで奴が来る事は無いと考えていたが、まさか女王とも協力を仰いでいたとは。


 あの時、しっかりと女王に釘を刺したのにも関わらずリスクを取ったというのか?

 ただなぜ、そこまでのリスクを取れるのだ?


「全て“トランシーバー”でな……」


 女王が掲げたのはトランシーバー。

 盗聴するには最適解。

 その事を頭に入れていない訳ではなかったが……

 

 トランシーバーのような無線機器は“モ・ムエニラ”の技術ではなかったか?


 門外不出、製造は愚か情報を仕入れる事は困難なはずだろうに……。


「まあコレを知っていて持っている者など、この場ではごく僅かだろうな……何せ某国の統治者に譲り受けて貰ってな役に立つな」

 

 “某国の統治者”だと?

 なぜ、関わりがある?

 怠った。全てを怠った

 油断していた……

 

「もう観念して下さいませんか、シュルツ外交官」


 銃男が静かに私に語り掛けてくる。

 もう勝敗が決まったような物だ、計画も野望も全部、消え去った。


 何を間違ってしまったのだろうか

 彼の信念のような物を見くびってしまったからか、癖者だからと見下していたからか……


 ――ぁあぁ、本当に私は愚か者だ。

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