チー牛の残り香
「は? 管理売春? ……って、何?」
「簡単に言えば一人のボスが頂点にいて、そいつの命令で売春が行われることね」
「はあ……」
中学生にはあまりにも馴染みのない単語が出てきたせいもあり、そんなリアクションしか出来なかった。
管理売春て……。俺自身が童貞なのに、そんな縁もゆかりもないことを言われてもどうしようもないぜ。外国のディズニーランドみたいなものだ。
そう思っていたら、大葉先生が説明を続ける。
「管理売春ではまだ子供でしかない少女たちが、金持ちの変態のところへ次々と送られていくの。そうやって稼いだ売上が半グレの資金元になっていると聞くわ」
「先生、警察じゃなくて教師ですよね?」
ごく自然に出てきた疑問をスルーし、大葉先生はさらに質問を重ねてくる。
「安藤君、一つ訊かせて。あなたは学校で密かに行われている管理売春に関与しているの?」
「いや、そんな、俺は管理売春なんか……」
だって、管理売春って単語だってさっき知ったばっかりだし、そもそも俺、童貞だし……。
「やっぱり……。ワルぶっていても、あなたからはかつてチー牛だった者の残り香が漂っていた。あなたはシロみたいね」
「チー牛言うなや」
「そもそも、なんであなたは不良になんかなろうとしたの?」
「それは……」
俺が不良になったのは、力こそがすべてだと気付いたから……だけではない。
もう一つだけ、俺が暴君へと鞍替えをした理由があった。