表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

死のパイナップル

「着いたわね」


 先生の運転するバイクの後ろに乗って、夜の高級住宅街に来た。後ろから先生の柔肌を堪能したが、冥途の土産としてはちょっと割りが合わない気がしないでもない。これで死ねば俺は童貞のまま命を落とすことになる。


 夜の住宅街は静かだったが、一ヶ所だけ騒がしい家があった。白い壁で囲まれていることもあり、一見集合住宅に見えるほどの大きさだが、よくよく見ると大きな一軒家だ。あの白い壁の向こう側では真っ黒な犯罪が行われている。


「生意気な家に住んでいるじゃない。全部ぶっ壊してやるわ」


 大葉先生はおおよそ教育者に似つかわしくないセリフを吐く。


「でも、応援が来るまでちょっと時間がかかると思いますよ。それまでどうします?」


 いくら応援が来るとはいえ、武器を集めるなど準備があるからそれなりに時間がかかるだろう。


「バカ言ってるんじゃないわよ。すぐに突っ込むわよ」

「は?」


 一瞬俺の耳がおかしくなったのかと思ったが違った。先生はすでにカチコミする気が満々の状態だった。


「いや、だって二人しかいないし」

「何言ってるのよ。だから私たちにはここがあるんでしょう?」


 先生は自分の頭を指さす。いや、待て。何人もいる半グレ相手に二人でカチコミとか、バカの極みでしかないだろう。


 そう思った刹那、先生が黒いパイナップル状のものを取り出した。


「それ、何です?」

「見たことないの? 手榴弾よ」


 ――そういうことじゃねえよ。


 俺の脳内ツッコミもむなしく、先生は手榴弾のピンを抜くと騒がしい白い家へと投げ込んだ。ドン引きするぐらいの剛速球の後、爆発音とともに悲鳴が上がった。


「うわ」


 俺はもう笑うしかなかった。手榴弾で悲鳴が上がる光景なんか、ゲームぐらいしか見たことがない。


 先生はもう一つ胸元から手榴弾を取り出すと、やはり剛速球の勢いで投げ放つ。再び白い家から悲鳴が上がる。


「行くわよ」


 先生は返事を待たずに飛び出した。もう深く考えるのはやめようと思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ