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この淡いファインダー越しの世界で、僕はいつも君だけを見ていた  作者: 深水えいな


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28.観覧車のキス

 週末、私たちは観覧車のあるショッピングモールにやって来た。


「こっちはどう?」


 白夜くんが白と黒のTシャツを手にやって来る。


「いいね、シンプルで合わせやすそう」


 私が言うと、白夜くんは試着室を指差した。


「試着してみなよ」


「うん、行ってくる」


 初めに白いほうを試着して白夜くんに見せる。


「どうかな?」


 私がくるりと回ってみせると、白夜くんは頬をほころばせて笑う。


「うん、似合うね。可愛い」


 「可愛い」だって。


 なんかこそばゆくなっちゃう。


「それじゃ、次は黒ね」


 今度は黒のTシャツに着替える。


「どう?」


 私がくるりと回ると、白夜くんはさっきと同じような口調でこう言った。


「うん、こっちも可愛いね」


「白夜くん、どっちがいいと思う?」


「どっちも良いよ」


 白夜くんの答えに、私はむすっとして腕を組んだ。


「白夜くん、本当はどうでもいいって思ってない?」


 私が問い詰めると、白夜くんは困ったように笑った。


「思ってないよ。だってどっちも可愛いから。この際両方買ったら?」


 ……全くもう。


 結局、汚れにくそうという理由で黒の方を購入し、ショッピングは終わった。


 ショッピングを終えた私たちは、次にクレープ屋さんに移動した。


「ここのクレープ、生地がもっちりしてて美味しいらしいよ」


 白夜くんがピンク色の可愛いキッチンカーを指差しながら言う。


「へぇ、そうなんだ。私、食べたことない」


「僕も初めてだ」


 二人でクレープ屋の列に並び、注文をする。


 白夜くんはイチゴカスタード、私はチョコバナナクレープにすることにした。


「わあ、白夜くんのクレープ、いちごがたくさん入ってる!」

「花のも美味しそうだね」


 二人でクレープにかぶりつく。


「わあ、美味しい」


 私がチョコバナナの美味しさに浸っていると、白夜くんがイチゴカスタードのクレープを差し出してきた。


「一口食べてみる?」


「いいの? あ、私のクレープも一口どうぞ」


 二人でクレープを交換して食べてみる。


「おいしい」


 パシャリ。


 私がクレープにかぶりついていると、急にシャッターを切る音がした。


 見ると、また白夜くんがインスタントカメラを構えてる。

 

「もう、また変なの取って」


「だって可愛くて。ほら、鼻にクリームついてる」


「もう、そんなの撮らないでってば」


 もう、白夜くんったら……。


 私が少し拗ねていると、白夜くんは屈託のない笑顔で笑う。


「楽しいね」


「……うん」


 楽しかった。


 こうしていると私たち、まるで何の不安もない、ごく普通のカップルみたいだった。


「あ、観覧車がある」


 空がほのかに紅く色づき始めたころ、白夜くんは観覧車を指さした。


「これに乗ってから帰ろうか」


「うん」


 二人で観覧車に乗りこむ。


「わあ、高い」


 私は徐々に遠ざかっていくお店やおうち、周囲の街並みを見て声を上げた。


「わあ、すごくいい景色!」


 私がはしゃいでいると、白夜くんが目を細める。


「そうだね」


「……どうしたの?」


「いや」


 白夜くんが遠い目をする。


「実は俺、小学生の頃からずっと学級委員長でさ、遠足で遊園地に来たりしても、他の子の面倒を見たり班を仕切ったりするのに忙しくて、思いっきり遊んだことってなかったんだ」


「そうだったんだ……」


 それは可哀想かも。

 しっかりしてるのも大変だな。


 私は自分が小学生の時のことを思い出した。


 お父さんが亡くなって、これからはお母さんを支えていかなきゃって、私がしっかりしなきゃって思った日のことを。


 そっか。


 ひょっとして、私たち、少し似てるのかも。


「じゃあ今日は、思いっきり遊べた?」


「うん」


 白夜くんがうなずく。


「楽しかった。ありがとう」


 とびきりの笑顔を見せてくれる白夜くん。


 その無邪気な表情は、いつもの王子スマイルよりずっといい。

 

 学校にいるときもカッコつけてるんじゃなくて、いつもそうしていればいいのに。


 少しして、観覧車は一番高いところで止まった。


 遠くの街並みが、真っ赤な夕焼けに溶けていく。


 なんてキレイな景色なんだろう。


 「……あっ、あれ私たちの学校じゃない?」


 私が学校を指さしていると、向かいの席に座っていた白夜くんが私の隣に座った。


「……そうだね」


 白夜くんが私の肩に手を置く。


 振り返ると、白夜くんの顔が近づいてきた。


 私はとっさに目をつぶり――私たちは小さな小さなキスをした。


 ほんの数秒だけのわずかなぬくもり。


 びっくりして顔を上げた私の目に映った、儚げで優しく美しい瞳。


 私は声にならないような小さな声で吐き出した。


「すき……私、白夜くんが好き」


「うん。僕も好き」


 白夜くんが私の手をそっと握ってくれる。


「だから――ずっと一緒にいて。辛いことも悲しいこともあるかもしれない。でも……私は白夜くんとずっと一緒がいいの」


 白夜くんは、少しびっくりしたように目を見開いた後、穏やかな表情でうなずいた。


「うん。約束だよ」


 私と白夜くんは小指を絡めて約束を交わし合った。


 きっと二人は永遠。


 手術は成功するし、これからも二人でずっといられる。


 そう――私は信じていた。



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