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この淡いファインダー越しの世界で、僕はいつも君だけを見ていた  作者: 深水えいな


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24/31

24.戻ってきた日常

 こうして私たちは、学校公認のカップルになったのでした。


 そして――


「はあ、やっぱり家は落ち着くなあ」


 白夜くんが私の部屋の絨毯に横になる。


 私は白夜くんの足をわざと踏んずけながら言った。


「白夜くんの家じゃないでしょ」


「そうでした」


 冗談だか本気だか分からない口調で白夜くんが言う。


 全くもう。


 でもそんな何気ないやり取りが、今の私たちには心地良い。


 幸せだなあ。


 心からそう思う。


 私は作っていた鍋をテーブルの上に置いた。


「じゃーん、今日の晩ご飯はキムチ鍋でーす」


「やった」


 二人でテレビを見ながらダラダラと鍋をつつく。


「実家にいた時は、あまりキムチって食べなかったんだよね。父さんが辛いもの嫌いでさ」


「へー、そうなんだ」


「うん。母さんは辛いの好きなんだけどさ」


 へえ、白夜くんのお母さん、辛いものが好きなんだ。


 と、ここで私はいい案を思いついた。


「そうだ。今度、白夜くんのお母さんも一緒にこの家に招待したらどうかな。お母さん一緒に鍋をつついたら楽しそう」


 私が言うと、白夜くんは少し不機嫌そうな顔になった。


「えっ、三人で?」


 白夜くんの嫌そうな顔を見て、私は少しドキッとしてしまった。


 もしかして、白夜くんとお母さんの間に、何かわだかまりがあったりするのかな?


「だめ?」


 恐る恐る聞いてみると、白夜くんは少し照れたように笑った。


「……だって、せっかく彼女と一緒なのにお母さん同伴じゃちょっとさ」


「そっか、そうだよね」


 納得しかけた私の肩に、白夜くんはそっと手を回して耳元でささやいた。


「ほら、母さんがいたら彼女とイチャイチャもできないし」


「えっ……!?」


 い……イチャイチャ!?


 イチャイチャって何!?


 私がパニックになっていると、白夜くんはプッと噴き出した。


「相変わらず可愛いね、花」


「もう」


 人のことからかって。


 でもまあ、人をからかってこんなに楽しそうに笑うだなんて、少し前の白夜くんじゃ考えられなかったな。


 私がそんなことを考えていると、急にスマホが鳴った。


「あ、お母さんからだ」


 白夜くんに断りを入れて電話に出る。


「もしもし」


「あ、花。今度お父さんの写真を展示する展覧会があるらしいの。一緒に見に行かない?」


「お父さんの?」


 今年はお父さんが亡くなって十年の節目の年。


 お父さんの写真仲間が、お父さんが生前撮った写真の展覧会を企画してくれたんだって。


 お父さん、報道写真だけじゃなく、花とか空とか動物とかもたくさん撮っていたんだ。


「へえ、そうなんだ。行ってみたいなあ」


 私が言うと、スマホの向こうからこんな声が聞こえた。


「行きましょうよ、この間のあの彼氏と一緒に。ねっ」


「えっ」


「それじゃあ、誘っておいてね。お母さんがぜひこの間のお礼をしたいって。よろしくね」


「あっ。ちょっと待っ……」


 ガチャッ。ツーツーツー。


 一方的に言って電話を切るお母さん。全くもう。

「お母さん、何だって?」


 電話が終わると、白夜くんが心配そうに私の顔をのぞきこんでくる。


 あっ、もしかしてこの間のことがあったから心配してるのかな?


「あ、うん。別に大したことじゃないの。お父さんの写真展を見に行かないかって。白夜くんも一緒に」


「おっ、いいね。見に行きたい」


 なんだか妙に乗り気の白夜くん。


「白夜くん、写真好きだったの?」


 私が首をかしげると、白夜くんはこう言って微笑んだ。


「興味あるよ。だって花のお父さんのことだもん」


 白夜くんは、私の手をそっとにぎった。


「花のことなら何でも知りたい」


 その眼差しがなんとも言えず熱っぽくて、私は目をそらしてしまう。


「分かった。白夜くんも来るって話しておくね」


 私は白夜くんから離れると、お母さんにOKのメッセージを送り、ため息をついた。


 全くもう。白夜くんって、こんな人だった?



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