24.戻ってきた日常
こうして私たちは、学校公認のカップルになったのでした。
そして――
「はあ、やっぱり家は落ち着くなあ」
白夜くんが私の部屋の絨毯に横になる。
私は白夜くんの足をわざと踏んずけながら言った。
「白夜くんの家じゃないでしょ」
「そうでした」
冗談だか本気だか分からない口調で白夜くんが言う。
全くもう。
でもそんな何気ないやり取りが、今の私たちには心地良い。
幸せだなあ。
心からそう思う。
私は作っていた鍋をテーブルの上に置いた。
「じゃーん、今日の晩ご飯はキムチ鍋でーす」
「やった」
二人でテレビを見ながらダラダラと鍋をつつく。
「実家にいた時は、あまりキムチって食べなかったんだよね。父さんが辛いもの嫌いでさ」
「へー、そうなんだ」
「うん。母さんは辛いの好きなんだけどさ」
へえ、白夜くんのお母さん、辛いものが好きなんだ。
と、ここで私はいい案を思いついた。
「そうだ。今度、白夜くんのお母さんも一緒にこの家に招待したらどうかな。お母さん一緒に鍋をつついたら楽しそう」
私が言うと、白夜くんは少し不機嫌そうな顔になった。
「えっ、三人で?」
白夜くんの嫌そうな顔を見て、私は少しドキッとしてしまった。
もしかして、白夜くんとお母さんの間に、何かわだかまりがあったりするのかな?
「だめ?」
恐る恐る聞いてみると、白夜くんは少し照れたように笑った。
「……だって、せっかく彼女と一緒なのにお母さん同伴じゃちょっとさ」
「そっか、そうだよね」
納得しかけた私の肩に、白夜くんはそっと手を回して耳元でささやいた。
「ほら、母さんがいたら彼女とイチャイチャもできないし」
「えっ……!?」
い……イチャイチャ!?
イチャイチャって何!?
私がパニックになっていると、白夜くんはプッと噴き出した。
「相変わらず可愛いね、花」
「もう」
人のことからかって。
でもまあ、人をからかってこんなに楽しそうに笑うだなんて、少し前の白夜くんじゃ考えられなかったな。
私がそんなことを考えていると、急にスマホが鳴った。
「あ、お母さんからだ」
白夜くんに断りを入れて電話に出る。
「もしもし」
「あ、花。今度お父さんの写真を展示する展覧会があるらしいの。一緒に見に行かない?」
「お父さんの?」
今年はお父さんが亡くなって十年の節目の年。
お父さんの写真仲間が、お父さんが生前撮った写真の展覧会を企画してくれたんだって。
お父さん、報道写真だけじゃなく、花とか空とか動物とかもたくさん撮っていたんだ。
「へえ、そうなんだ。行ってみたいなあ」
私が言うと、スマホの向こうからこんな声が聞こえた。
「行きましょうよ、この間のあの彼氏と一緒に。ねっ」
「えっ」
「それじゃあ、誘っておいてね。お母さんがぜひこの間のお礼をしたいって。よろしくね」
「あっ。ちょっと待っ……」
ガチャッ。ツーツーツー。
一方的に言って電話を切るお母さん。全くもう。
「お母さん、何だって?」
電話が終わると、白夜くんが心配そうに私の顔をのぞきこんでくる。
あっ、もしかしてこの間のことがあったから心配してるのかな?
「あ、うん。別に大したことじゃないの。お父さんの写真展を見に行かないかって。白夜くんも一緒に」
「おっ、いいね。見に行きたい」
なんだか妙に乗り気の白夜くん。
「白夜くん、写真好きだったの?」
私が首をかしげると、白夜くんはこう言って微笑んだ。
「興味あるよ。だって花のお父さんのことだもん」
白夜くんは、私の手をそっとにぎった。
「花のことなら何でも知りたい」
その眼差しがなんとも言えず熱っぽくて、私は目をそらしてしまう。
「分かった。白夜くんも来るって話しておくね」
私は白夜くんから離れると、お母さんにOKのメッセージを送り、ため息をついた。
全くもう。白夜くんって、こんな人だった?




