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この淡いファインダー越しの世界で、僕はいつも君だけを見ていた  作者: 深水えいな


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23.閉会式ミラクル

「白夜くんはね、あなたのために、毎日音楽室に来てこの曲を練習してたのよ」


 アユ先生が、私の横にやってきてハンカチを差し出してくれる。


「そうだったんですか?」


 それで白夜くん、毎日帰りが遅かったの?


「ええ。愛するあなたのためにね」


「で、でも」


 私たち、ニセのカップルだし、白夜くんは私のことなんて――。


 そんなことを考えていると、白夜くんのピアノが終わった。


 体育館が大きな歓声に包まれる。


 白夜くんは立ち上がり、マイクを手に取った。


「この曲は、五十鈴花さんのお父さんが、結婚する時にお母さんにささげた曲だそうです。なので、僕もこの曲を花さんにささげたいと思います」


 綾瀬さんがうなずく。


「なるほど、彼女に捧げた曲だったんですね。素敵な演奏ありがとうございました」


 会場は大きな拍手につつまれる。


 すると白夜くんは、真面目な顔つきになって話し始めた。


「この曲を、僕は五十鈴さんに捧げましたが、実は五十鈴さんと僕は本当に付き合っているわけではありません」


 白夜くんの発言に、会場内がざわつく。


 えっ。


 白夜くん、どうしちゃったの。


 いきなりそんなことバラすだなんて。


 ……あ、もしかしてこれを機にニセの彼氏彼女関係は解消しようってこと?


 そっか。


 私、ついに愛想をつかされちゃったのかな。


 そうだよね、ニセの彼女のくせに、あれこれ出しゃばりすぎたし、白夜くんももうイヤになっちゃったんだ。


 私はシュンと下を向いた。


「えっ、それは、どういうことですか!?」


 綾瀬さんがあわてふためく。


 きっとこの展開は台本に無かったんだろうな。


「彼女は、僕が女の子たちにこれ以上追いかけ回されないように、盾になってくれていたんです。でもそのせいで、五十鈴さんにはすごく迷惑をかけてしまった……」


 会場内がざわつく。


「それってニセの彼女だったってこと!?」

「じゃああの記事は全部ウソってこと!?」


 白夜くんは真っ直ぐに私のほうを見つめてこう言った。


「だけど僕は、五十鈴さんと過ごすうちに、一緒にいてとても楽しいし、離れたくないなって思ったんです」


 白夜くん……!


 気がついたら、私の目から涙がポロポロとあふれる。


 白夜くんは続けた。


「五十鈴さんの強さや内に秘めた繊細さに心から惹かれるようになったんです。だから、もし五十鈴さんさえよければ、五十鈴さんを本当の彼女にしたいと思っています」


 私を……本当の彼女に!?


 私が信じられない気持ちでいると、綾瀬さんが降りてきて、私にマイクを向ける。


「……だそうですが、五十鈴さんはどうですか?」


 私は目に涙をいっぱい溜めて、大声で叫んでやった。


「良いに決まってるじゃん!」


 会場中がわあっと歓声に包まれる。


「おめでとう!」

「おめでとう、五十鈴さん、白夜くん!」


 体育館の外では、文化祭の終わりを告げる花火が鳴り響く。


 私と白夜くんは、手を繋いで夜空を彩る光の花を見上げた。


 それはとても幸せで、まるで夢みたいで――。


 いつまでもこの日が続けばいいのに。


 私はそんなことを思ったのでした。




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