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この淡いファインダー越しの世界で、僕はいつも君だけを見ていた  作者: 深水えいな


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22.真相

 そして文化祭も終盤。


 そろそろ閉会式の時間となった。


 早く新聞部の片付けをして閉会式を見ないと。


 私が廊下を急いでいると、急に誰かから呼び止められた。


「――五十鈴さん、ちょっといいかしら?」


 顔を上げると、そこに居たのはアユ先生だった。


「アユ先生」


 どうしてアユ先生がここに?


 私が思わず後ずさりをすると、アユ先生はニッコリと笑う。


「五十鈴さん、今いいかしら。そこの空き教室で少し話さない?」


 ギクリと心臓が鳴る。


 私はゴクリとつばを飲みこんでうなずいた。


「はい」


 私たち二人は、空き教室で向かいあって座った。


 アユ先生、何だろ。


 もしかして、「港は私のものだから近づかないで!」……ってこと?


 わたしがもんもんと考えていると、アユ先生がゆっくりと口を開いた。


「今日あなたを呼びとめたのは、例の記事のことで、あなたと少しお話したいな、と思って」


「はい」


 き……来たっ!


 私がドキドキしながらアユ先生を見つめていると、アユ先生は小さくため息をついた。


「どうも勘違いしているみたいだけど、私と白夜くんはそういう関係じゃないの」


 困ったように首を横に振るアユ先生。


「で、でも……」


 私はぐっと唇をかみ締め、思い切って聞いてみた。


「私……見ちゃったんです。アユ先生と白夜くんが二人で会って『今日の放課後もよろしく』って言っているところ」


 アユ先生は一瞬キョトンとしたあとで、小さく笑った。


「ああ。聞かれていたのね。それはね……」


 それは?


 私が緊張していると、アユ先生はこんなことを言い出した。


「詳しいことは言えないけれど文化祭の閉会式の演出がらみで相談を受けていたの」


 えっ?


「で、でもあの抱き合っている画像は――」


「ああ、あれは白夜くんが文化祭の準備で頑張りすぎて倒れちゃった時の写真ね。上手く撮るものだわ」


 アユ先生が眉間にシワを寄せて腕を組む。


「……白夜くん、倒れちゃったんですか⁉︎」


「ええ。幸い、私がすぐに車で病院に連れて行ったし、大したことなかったみたいだけど――あの子、他の人には内緒にしてほしいって言ってたけど、実は生まれつき体がそんなに強くないみたいなの」


「えっ」


 そうだったの?


 私は白夜くんと初めて会った時のことを思い出した。


 あの時は貧血だって言ってたし、お腹が空いて倒れているだけだと思ってた。


 だけど白夜くん、生まれつき体が弱かったんだ。


 じゃあもしかして、最近顔色があまり良くなかったのも――。


「……それで私にも内緒にしてたんですね」


 私が言うと、アユ先生は真剣な顔でうなずいた。


「ああ、あなたには特に心配かけたくなかったみたい」


 ……そっか。そうだったんだ。


「教えてくれて、ありがとうございました」


 私はペコリと頭を下げて体育館に戻った。


 「まもなく閉会式が始まります。体育館に集まってください」


 しばらくして、アナウンスがあり、文化祭の閉会式が始まった。


 私はいつものように、カメラを構えてステージの近くで待ち構えた。


「みなさんこんにちは。いよいよ文化祭も終わりですね。まずは、最優秀模擬店賞の発表をしたいと思います」


 ステージ上では綾瀬さんが司会をつとめている。

 

 白夜くんの出番はまだなのかな?


 そう思いながら綾瀬さんの写真を撮っていると、ステージ横に、何やらピアノが運び込まれてきた。


 誰かピアノでも弾くのかな。


 そう思っていると、綾瀬さんがニッコリと笑って紹介を始めた。


「では次に、生徒会長のパフォーマンスです」


 白夜くんのパフォーマンス?


 私があっけに取られていると、綾瀬さんはマイクを手にこう言った。


「生徒会長は、それまで楽譜も読めなかったそうですが、この日のために頑張ってピアノの練習をしてきたそうです。それではお聞きください」


 小さく呼吸の声がして。優しいピアノのメロデーが流れ出す。


 あ。


 この曲――。


 この曲、パパが結婚式の時にママのために弾いた曲だ。


 そっか。閉会式の特別な演出って、これだったんだ。

 

 白夜くん、私の話を覚えていて、わざわざこの曲を?


 白夜くんの指が鍵盤を走る。


 澄み切った、だけれども力強い音が私の心の中を満たしていく。


 白夜くんと初めてお隣同士になった日のこと。


 二人で映画館デートをしたこと。


 お母さんの病院にお見舞いに行った日のこと。


 そして二人で食べた何気ない日々のご飯が、頭の中に次々と浮かんでくる。


 気づいたら、私の目からは涙がボロボロとあふれ出ていた。


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