20.文化祭のはじまり
文化祭当日。
生徒たち全員が見守る中、体育館で開会式が始まった。
ステージ上では、白夜くんたち生徒会のメンバーによる寸劇が行われている。
白夜くんは王子様の衣装で、剣を高く掲げながら言った。
「――それでは、これから文化祭を始めます!」
わああああっ!
大盛り上がりで文化祭は始まった。
私たちのクラスがやるのは焼きそばの屋台。
めんどくさいけど、クラスにいる間は白夜くんのことも、紬くんのことも考えなくて済むから何となく気が楽。
「いらっしゃいませー」
「焼きそば、いかがですか!」
私は大量のキャベツを切りながら、焼きそば作りに没頭していた。
「花ーっ、キャベツまだある?」
沙雪ちゃんに声をかけられる。
「うん、こっちにあるよ」
私がキャベツの入ったダンボールを沙雪ちゃんに渡していると、急に屋台がザワつきだした。
「白夜くん!」
「白夜くーん!」
えっ!?
ギョッとして顔を上げると、目の前には王子様スマイルを浮かべた白夜くんがいた。
「花が焼きそば焼いてるって言うから来てみた」
ニコリと笑う白夜くん。
「そ、そう」
私はそっけなく言って目をそらしてしまった。
だめだ。白夜くんの顔がまともに見れないよ。
そんな私の気持ちなんか知らないで、白夜くんはニコニコと話しかけてくる。
「ここ、空いてるね」
「うん、場所が悪くて。ほら、三年C組も焼きそばだし」
早口に答える。
「そっか」
そう答えると、白夜くんが大きく息を吸い込んだ。
「うわあ、ここの焼きそば、美味いね!!」
えっ!?
どうしたの、白夜くん、いきなり大きな声だして!
「うん! 麺はモチモチしてるし、濃いソースとよく絡んで美味しい!」
オーバーリアクションでうちのクラスの焼きそばを褒め続ける白夜くんに、徐々に周りの人たちが集まってくる。
「何? 何?」
「生徒会長おすすめの焼きそばだって!?」
「あの生徒会長が絶賛してるらしいぜ!」
あれよあれよという間に、お店には人だかりができてしまった。
「焼きそば下さい!」
「僕にも!」
「私にも!」
そして、余るほどあった焼きそばは、お昼前にはほぼ完売してしまった。
「すごいね、白夜くん」
私はポツリとつぶやいた。
白夜くんはやっぱり行動力もあるし、カリスマ性もある。
私にはもったいない。釣り合わないよ。
白夜くんは照れたように笑った。
「いやいや、俺にはこれぐらいしかできることはないからさ」
「そんなことないよ。すごいよ」
私はギュッと拳を握りしめて下を見た。
優しいな、白夜くん。
私の事なんか好きでもないはずなのに。
白夜くんが本当に好きなのは、アユ先生なのに。
そんな風に考えると、なんだかとっても泣きたくなってきた。
「そうだ。花、もうお昼食べた?」
白夜くんが聞いてくる。
「ううん、まだ」
「じゃあ、何か買ってきてあげる。何がいい?」
「えっと、じゃあ、たこ焼き……」
「オッケー」
白夜くんが財布を持って駆けていく。
私がその後ろ姿を見つめていると、後ろから声がかかる。
「先輩」
声の主は、茶髪に可愛い顔をした後輩。
「紬くん」
私が少しビクビクしながら答えると、紬くんは少し困ったように笑った。
「嫌だなあ、僕はただ焼きそばを買いに来ただけですって」
と、そこまで言って、紬くんはウインクしながら耳元でささやいた。
「告白の返事は、閉会式まで待ってますから」
「う、うん」
平気なフリをして答えたけど、心の中はパニックになった。
それって、閉会式までに答えを出せってこと?
まあ確かに、あれから何日も紬くんの事待たせちゃってるけどさ……。
まだ全然、どうするか決まってないよ。
私が戸惑っていると、白夜くんが帰ってきた。
「五十鈴さん、たこ焼き買ってきたよ」
わわわっ、白夜くん!?
紬くんと二人っきりでいる所、見られちゃった!
……別にいいんだけどさ。
別に、私と白夜くんはニセのカップルだし。でも――。
私がオロオロしていると紬くんがニコニコと白夜くんに声をかけた。
「こんにちは、生徒会長」
「こんにちは。俺に何か用?」
白夜くんが目をかすかに細くする。
紬くんは笑顔のままこう言い放った。
「会長、僕、五十鈴先輩に告白しました」
わあっ!?
ちょっと、何で今そんなこと白夜くんに言うの!?
「ふーん、どうしてそれを俺に?」
怪訝そうな顔をする白夜くん。
だよねえ。
紬くんは笑みを浮かべたまま答える。
「宣戦布告です」
「ちょ、ちょっと、紬くん」
白夜くんはそれに対し、顔色ひとつ変えずにうなずいた。
「……そう」
「返事は、閉会式まで待つって言っています。楽しみですね、どちらが勝つか」
二人の間に、バチバチと火花が飛んだ……ような気がした。
もう、どうしてこうなっちゃうの……?




