転機
五年ぶり?の執筆になるので、書き方をどわすれしてしまいましたが、何とか亀よりも遅い投稿スペースでマイペースに書いてこうと思います。
夢幻泡影という名の会社は代々引き継がれてきた名残りであり、バグやウイルス、エラーを処理する専門になったのは約10年前に遡る。
篠沢武陽。彼は夢幻泡影という名の店を継ぐ跡取り息子。
しかし、彼は妖を退治する生業を忌み嫌い。継ぐつもりなど毛頭になく陰陽師の才は家族の誰よりも随一でも妖に対して術を使うことは彼が生まれてから約30年間一切なかった。
彼の両親が他界して唯一の弟が家を継ぐことになってから数十年たった時
ゲーム会社に勤めていた武陽はpcから弟、陽太から受け取った一通のメールから始まる。
『兄さんへ 仕事だと思うけどこの予約してあったメールが届いたのは僕の仕事に何か支障が起きて戻って来られない状況だと思う。兄さんが嫌いな家業で店は継がなくて良い。ただ店はどんな形でも構わないから僕が戻ってくるまでの間、店のこと任せたいんだ 陽太より』
と、予約した時間で相手に送れるメールを読み終える前には席を立ち。その場で上司や職場の人にも聞こえる声で早退する旨を伝える間に速やかに荷物をまとめ上司の返答を待たずに退社し、陽太が居るであろう夢幻泡影に向かった。
夢幻泡影は、武陽が勤めるゲーム会社。いや、武陽が住んでいる都会から離れた田舎でも都会とも言えない場所にあり、住んでいる場所から車で3時間掛かり、新幹線でも2時間掛かるところにある。
互いに気遣ってせいぜい一年に3回の電話を1時間する程度。それでも兄弟仲はかなり良く誕生日を社会人になった今でも必ず祝い送り合っている仲だ。
メールで送られてくるのは滅多にない。しかも、予約メールに加えて会社を出てからすぐさま弟に電話しても繋がらない状況だ。
(一体何故、私はこんな離れた場所に両親が他界した後も移動しなかったんだ?)
陽太から離れた場所に居ることに今更ながら後悔にも似た焦りが募る。
否、離れた場所ではないと嫌でも駆り出される可能性もあった。両親が現在だった時に危惧した事だ。
離れた距離が酷く、もどかしい。
「……式か」
今だけは、そう。自分に陰陽師の才。家業が妖を退治する専門の陰陽師の家庭で良かったと思う時が来るとはな。陰陽師の家庭ではなかったら術を習得することが出来ず移動手段が狭まっていた。
武陽は緊急時とは言え、今の今まで移動でさえも使おうともしなかった陰陽師の術を使うことに対して、皮肉なものだ。と言いたげな声色でぽつりと呟く。
式札が必要だ。だが、生憎そんなもの都合よく持っていない。普段、必要にすらしていなかったから作る必要もなかった。
しかも、この数十年間。使用することもなかった為、何かを式札の代わりとして術を使うなど試してもいない。だが、迷ってる時間も惜しいぐらいに現状を知る必要がある。戻って来れないとはどういう事か。否、大体予想は出来ている何せ妖を退治する専門家業だ。
裏路地に入り、スーツの胸ポケットから吸入式の万年筆を取り出して毛先を左指の横腹に突き立てて染み込ませる。血を混ぜることにより、術の精密度と持続性が上がる
代用するものは、成功させれば何でも構わない。だが、陽の気を込められやすいものがいい。気は手に集めて物に移しつつ詠唱か字に書く。或は両方やると更に術の正確さや成功率が増す