『ミリオンダラー・ヴァンパイア』~後編~
快進撃を続ける私とヴァンパイアトレーナー。ついに、世界タイトルマッチの日が来た。
ラスベガスの巨大アリーナ。観客の熱気に包まれたリングに立つ私。対戦相手は、"ダーティー・マイ"ことマイ・ソーヤー。反則技で悪名高いヘビー級チャンピオンだ。
ゴングが鳴る。私は軽快なフットワークで相手を翻弄し、クリーンヒットを重ねる。ラウンドを重ねるごとに、勝利の予感が高まる。
「よし、このまま行けば勝てる!」
第11ラウンド終了。ベルが鳴り、私はコーナーに向かう。その瞬間だった。
背後から鈍い音が聞こえ、激痛が首筋を走る。振り返ると、マイクが反則パンチを放っていた。衝撃で私はよろめき、コーナーの椅子に首を強打する。
「カルメン!」ヴァンパイアの悲痛な叫び声が聞こえた。それが、意識が途切れる前の最後の音だった。
目覚めると、私は病院のベッドにいた。全身が動かない。医師の言葉が耳に届く。
「首の骨折により、全身不随となりました。完治の見込みは...」
その後の日々は、怒りと自己嫌悪の連続だった。リハビリに励むも、進歩は見られない。家族も徐々に足が遠のいていく。
「なぜ、こんな目に...」
絶望の淵に立たされた私。そんなある夜、窓から月明かりが差し込み、見覚えのあるシルエットが現れた。
「よう、カルメン。元気そうじゃないか」
ヴァンパイアだった。相変わらずの不敵な笑みを浮かべている。
「...何しに来たの?」私は虚ろな目で問いかける。
「お前に、新たな人生を提案しにきた」ヴァンパイアは真剣な表情で続けた。
「お前を吸血鬼にしてやろう。そうすれば、この体も治る。再び、リングに立てるぞ」
私は驚愕した。人間でなくなる代わりに、再起の機会。しかし、それは永遠の闇の人生。
「決めるのはお前だ。人間として生き続けるか、吸血鬼として新たな人生を歩むか」
ヴァンパイアの言葉が、静寂の中に響く。月明かりに照らされた病室で、私は人生最大の選択を迫られていた。
人間か、吸血鬼か。生か、死か。
答えを出す時が来たのだ。
沈黙が病室を包む。月明かりが私の涙を銀色に輝かせる。
「...できない」私は震える声で答えた。
「人間をやめることはできない」
ヴァンパイアは静かに頷いた。
「そうか。お前らしい答えだ」
彼は窓際に歩み寄り、夜空を見上げた。
「カルメン、お前は強い。人間の中で最強のボクサーになれた。きっと、この試練も乗り越えられる」
振り返ったヴァンパイアの目に、人間離れした輝きを感じた。
「俺は...お前に人生を捧げた。お前が人間として生きると決めた以上、もう会うことはできない」
その言葉に、胸が締め付けられる。
「待って...」私は叫びたかった。しかし、声は出ない。
ヴァンパイアは窓を開け、最後の言葉を残した。
「さようなら、カルメン。お前の人生に幸あれ」
彼の姿が、夜の闇に溶けていく。
一筋の涙が頬を伝う。それは、失った未来への哀悼。そして、永遠に別れた友への惜別。
窓から差し込む朝日が、私の顔を照らす。新たな朝の始まり。人間として生きると決めた私の、長く孤独な闘いの始まりだった。
リハビリの日々。一進一退の苦闘。しかし、私は諦めなかった。
ある日、指先がかすかに動いた。小さな希望の光。
私は心の中でつぶやいた。
「見ていてね。必ず立ち上がってみせる」
その言葉が、誰に向けられたものなのか。もう、私にも分からなかった。
ただ、闇の中で輝く赤い瞳の記憶だけが、永遠に私の心に刻まれていた。
それは、失われた友情の証。そして、永遠に続く孤独な闘いの象徴。
カルメン・ロドリゲスの新たな物語が、ここから始まる。
人間として。ボクサーとして。そして、永遠に心の中で吸血鬼と闘い続ける者として。
プロンプト
「つづき、快進撃を続ける私と謎のヴァンパイアトレーナー。ついに世界戦になった私。相手は反則を多用するダーティーなボクサー。試合を優勢に進める私。ラウンド終了後に敵が放った反則パンチからコーナーにあった椅子に首を打ちつけ骨折し、全身不随となる。やり場のない怒りと自己嫌悪に苛まれ続け、完治の見込みがない私は家族に見放された事から人生に絶望し始める。するとヴァンパイアが私の元を訪れる。」
「物語の幕切れは突然。物語を切ない終わりで締めくくってください。」