『パリピ吸血鬼~バブリーからなぁぜなぁぜ?~』
バブル経済の絶頂期、1990年の東京。
深夜の銀座の路地裏。スーツ姿の私は、取引先との接待を終え、ふらふらと歩いていた。突如、闇の中から現れた青白い顔の男。
「おや、美味しそうな獲物だ」
吸血鬼だった。
私は逃げ出そうとしたが、彼は楽しそうに笑った。
「逃げるのか? 面白い。鬼ごっこをしようじゃないか」
死の恐怖に駆られた私の脳裏に、突然ひらめいた。
「いや...ディスコミュージックだ」
吸血鬼は首を傾げた。
「ディスコ...?」
「そうさ。逃げるんじゃない。踊るんだ」
私は彼を六本木へと誘った。眩いネオンの海の中、「ジュリアナ東京」の看板が輝いていた。
クラブに入ると、けたたましい音楽と熱気が私たちを包み込んだ。吸血鬼は戸惑いながらも、次第にリズムを刻み始めた。
「人間よ、これは...楽しいぞ!」
彼の目は赤く輝いていたが、それは獲物を狙う目ではなく、興奮の色だった。
夜が明けるまで、私たちは踊り続けた。
「また会おう」
別れ際、吸血鬼はそう言って消えていった。
───────────
それから30年後、2020年。
「お疲れ様でした!」
送別会の喧騒が遠ざかっていく。
定年退職を迎えた私は、一人寂しく帰路に就いた。かつての華やかさは影を潜め、街にはコロナ禍の重苦しさが漂っていた。
「会社を辞めればひとりか」
センチメンタルな気分に浸りながら歩いていると、
「おいおい、あのとき踊った気持ちはもう過去のことか」
聞き覚えのある声。振り返ると、そこにはパリピな恰好の吸血鬼が立っていた。30年前と少しも変わらない姿。
「君か...」
「人間よ、久しぶりだな。今夜も踊らないか?」
彼は笑いながら私の手を取った。
「いや、もう歳だよ。膝も痛いし...」
「バカな。年なんて関係ない。音楽さえあれば、誰だって踊れる」
吸血鬼は私を連れ出した。
六本木の街並みは変わっていたが、地下に潜むクラブは健在だった。懐かしいディスコ・ミュージックが流れる中、私たちは再び踊り始めた。
「ほら、思い出したか?」
体が勝手に動き出す。30年前の興奮が蘇ってくる。
「ああ、思い出した。こんな気持ち、忘れていたよ」
「人生なんて、一瞬さ。だからこそ、今を楽しまなきゃ」
吸血鬼の言葉に、私は頷いた。
夜が明けるまで、私たちは踊り続けた。まるで、時が止まったかのように。
───────────
「おじいちゃん、また寝ぼけてる!」
孫の声で目が覚めた。ベッドの中で、私は踊るような動きをしていたらしい。
「ああ、夢を見ていたんだ」
「どんな夢?」
「永遠に続く、ディスコ・パーティーさ」
私は微笑んだ。窓の外では、新しい朝が始まっていた。
そして、どこからともなく聞こえてくる、かすかなディスコ・ミュージック。
プロンプト
「バブル全盛期の日本。夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。「いや...ディスコミュージックだ」。「マハラジャ」「ジュリアナ」そんなバブリーな時代、私と吸血鬼は踊り明かす。それから数十年後、バブル崩壊後の日本。私は退職を迎えた。部下たちとの送別会の後、一人で家に帰る。「会社を辞めればひとりか」。センチメンタルになる私。「おいおい、あのとき踊った気持ちはもう過去のことか」。そこにはパリピな恰好の吸血鬼がいた。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」