『夜明けのディベート』~笑っていいとも?~
東京の夜。静寂を破る足音が響く。
「まさか本当に鬼ごっこを始めるとは」
息を切らしながら、私は後ろを振り返った。黒いマントをはためかせ、優雅に追いかけてくる吸血鬼の姿。その赤い瞳が月明かりに輝いていた。
「人間さん、もう疲れた?」
甘い声で吸血鬼が囁く。私は答えず、ただひたすら走り続けた。
頭の中では様々な思考が駆け巡る。
「日の出まであと4時間...逃げ切れるか?いや、待て。吸血鬼は日光に弱いんだ。朝まで逃げ切れば勝てる!」
希望が湧いてきた矢先、目の前に奇妙な光景が広がった。
「さあ、みなさん!朝まで討論会へようこそ!」
道端に即席のステージが設置され、熱心な観客たちが集まっている。司会者らしき男性が叫んでいた。
「なんだこれ...」
困惑する私の耳に、慣れ親しんだ声が聞こえてきた。
「それって貴方の間奏ですよね」
振り向くと、さっきまで追いかけてきた吸血鬼が、パーカーとイヤホンという意外なカジュアルスタイルで、一般市民を論破していた。
「え?ちょっと待って...」
状況が飲み込めないまま、突如スタッフに腕を掴まれた。
「次はあなたの番です!さあ、ステージへ!」
「いや、でも...」
抵抗する間もなく、私はステージに押し上げられていた。スポットライトを浴び、目の前には先ほどの吸血鬼。彼は爽やかな笑顔で手を差し伸べる。
「では、テーマは『現代社会における夜型人間の生き方』。どうぞ」
司会者の声が響く中、私は呆然と立ち尽くした。
吸血鬼は身を乗り出し、ウインクしながら囁いた。
「さあ、朝まで楽しもうじゃないか。人間さん」
観客の熱気に包まれ、私は深呼吸をした。
「まあいいか。命の危機よりディスカッションの方がマシかも」
こうして、吸血鬼と人間による前代未聞の討論会が幕を開けた。果たして、夜明けまでに何が起こるのか——。
夜が深まるにつれ、討論は白熱していった。吸血鬼の巧みな話術と詭弁に、観客は魅了されていた。
「夜型の生活こそが人間の本質。昼間に縛られる必要なんてない」と吸血鬼は主張する。
私は深呼吸し、冷静に反論する。
「確かに、夜型の生活に魅力はあります。しかし、それは選択肢の一つに過ぎません」
吸血鬼は眉をひそめる。
「どういう意味ですか?」
「人間の強みは適応力です。昼でも夜でも、状況に応じて活動できる。それこそが真の自由というものです」
観客からどよめきが起こる。
「だが、夜の方が...」吸血鬼が言いかける。
「いいえ」と私は遮る。
「重要なのは、自分で選択できること。昼も夜も、両方を理解し、活用できる。それが現代社会を生きる 知恵です」
吸血鬼の表情が曇る。
「さらに言えば」と私は続ける。
「多様性を認め合うことこそ、現代社会の要です。昼型も夜型も、お互いを尊重し、協力し合うことで、社会はより豊かになる」
会場に拍手が沸き起こる。
吸血鬼は焦った様子で反論しようとするが、その時!
「おや?もうこんな時間?」
司会者の声に、会場が明るくなっていることに気づく。
「ちょ、ちょっと待って!」吸血鬼が慌てふためく。
「まだ討論は...」
しかし、東の空はすでに明るんでいた。
「さあ、結論の時間です!」と私は叫ぶ。
「皆さん、朝日と共に、新しい一日の始まりを祝福しましょう!」
観客全員が立ち上がり、東の空に向かって拍手。
「うわああああ!」
吸血鬼の悲鳴と共に、朝日が会場を照らす。吸血鬼の体が光り始め、
「人間よ...君は強かった...だが...これで終わりと思うなよ...」
「ポッ」という音と共に、吸血鬼の姿が消える。残されたのは、一握りの輝く砂と、なぜかサングラス。
会場は大爆笑と拍手に包まれた。
私はサングラスを拾い上げ、かけながら言った。
「さあ、皆さん。素敵な朝食でも食べに行ってくれるかな?」
いいともーーー!!
プロンプト
「場所は東京、夜中に吸血鬼と遭遇した私。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。そのとき、謎の討論会が道端で開かれていた。「朝まで討論!!」。なんだこの意味不明な討論会は。「それって貴方の間奏ですよね」。例の吸血鬼が一般市民を論破していた。パーカーとイアホンを着けてさっきと違うカジュアルな恰好をしている。「では次の人です」。私は番組スタッフに強引に討論会に参加させられてしまう。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。」
「揚げ足取りのような詭弁を使う吸血鬼に正論をかまして勝利して物語を締めくくってください。」




