『吸血鬼に襲われたら、除草剤をぶちまけろ!!!!』~ 除草剤バトル・ロワイアル~
国道58号線沿いの中古車販売店「カーショップ太陽」は、夜の闇の中で静かに佇んでいた。店の看板だけが蛍光灯の光で浮かび上がり、その下で私、営業二課の佐藤は一人、草むしりに励んでいた。
「店長の野郎…国道から綺麗に見えるように一日で草はすべてなくせって無茶だろ…」
手には業務用除草剤の噴霧器。倉庫には在庫処分で引き取った除草剤が段ボール20箱分も眠っている。明日の朝までに何とかしなければ、また店長の説教が始まる。
その時だった。
背後に、ひんやりとした気配を感じた。
振り返ると、そこには漆黒のマントを纏った青白い顔の男が立っていた。月明かりの下、その瞳は血のように赤く輝いている。
「やあ、こんな夜更けにご苦労なことだ」
男の声は甘く、そして冷たかった。犬歯が月光を反射してきらりと光る。
「あ、あんた誰だ?ウチはもう閉店してるんだけど」
「私か?私は…そうだな、ドラキュラとでも名乗っておこうか」
は?ドラキュラ?
「冗談きついっすよ。コスプレイベントならクラブのホールですよ」
「冗談?」男は笑った。
「では証明してあげよう」
次の瞬間、男の姿が消えた。いや、消えたのではない。私の真横に瞬間移動していたのだ。
「ひっ!」
「さて、退屈しのぎに遊びをしようじゃないか。鬼ごっこだ」
「お、鬼ごっこ?」
「そう。私から夜明けまで逃げ切れば、君の勝ちだ。もし捕まえられたら…」ドラキュラは舌なめずりをした。
「君の血を頂戴する」
冗談じゃない。こいつ、マジモンの吸血鬼だ。
「ルールは簡単。この販売店の敷地内が舞台。逃げるも隠れるも自由。では…」
ドラキュラがゆっくりと目を閉じる。
「60秒数えよう。1、2、3…」
私は全力で駆け出した。倉庫へ、倉庫へ!
吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。でも今は午前2時。夜明けまであと4時間。逃げ切れる保証なんてない。
他に弱点は…十字架、ニンニク、流水、杭…いや、そんなもの今ここにあるわけがない。
倉庫に飛び込んだ私の目に飛び込んできたのは、山積みの除草剤の段ボール箱だった。
そうだ、除草剤だ!
吸血鬼の別名は「生ける屍」。つまり生命力が弱い。植物を枯らす除草剤なら、もしかして…!
「60!さあ、どこにいるかな?」
ドラキュラの声が近づいてくる。私は急いで除草剤のボトルを開封し、噴霧器に装填した。
倉庫の扉がゆっくりと開く。
「見つけた」
「くらえ!」
私は咄嗟に除草剤を噴射した。緑色の液体がドラキュラの顔面に直撃する。
「ぐああああああ!」
ドラキュラの顔が、ジュウジュウと音を立てて煙を上げ始めた。まるで熱した鉄板の上に水をこぼしたように。
「くそ!なんだこの液体は!」
「除草剤だよ! グリホサート系除草剤『草枯れ太郎BigMT』!近所のホームセンターで1本980円!」
「き、貴様ァ!」
ドラキュラは怒りに燃える目で私を睨んだ。しかし顔の半分はただれている。
私は走った。展示場へ。
「待て、この小僧!」
ドラキュラが凄まじい速度で追いかけてくる。しかし私には策があった。
展示されている軽トラックに飛び乗り、エンジンをかける。幸い、すぐに売れるように常にキーは刺さったままだ。
「逃がすか!」
ドラキュラが手を伸ばす。私はアクセルを踏み込んだ。
「うおおおお!」
軽トラックは急発進し、荷台には除草剤の入ったタンクを積んでいた。さっき準備していた散布用のものだ。
国道沿いをジグザグに走りながら、私は荷台のホースを操作した。除草剤が虹のように空中に散布される。
「やめろ!やめろォ!」
追いかけてきたドラキュラに除草剤が降り注ぐ。その身体が徐々に溶け始める。
「この草木を枯らす呪いの液体め!」
「呪いじゃない!科学の力だ!」
私は販売店に戻り、次々と除草剤を武器化していった。スプレーボトルに入れて投擲、ホースで放水、バケツでぶちまける。
展示車両の中から水鉄砲まで発掘して装填した。
「貴様、本当に人間か!?」
「中古車販売店の社員を舐めるな!在庫処分品の活用力は半端じゃないんだよ!」
戦いは続いた。私が除草剤を撒き散らし、ドラキュラが逃げ惑う。立場は完全に逆転していた。
やがて東の空が白み始めた。
「くっ…朝が…」ドラキュラは傷だらけの身体を引きずりながら闇の中へ消えていった。「覚えていろ…次は…こんな卑怯な手は…」
「卑怯で悪かったな!」
私は勝利の雄叫びを上げた。
しかし、それは束の間の勝利だった。
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翌朝。
「佐藤ォォォォォ!!!」
店長の怒号で目が覚めた。私は倉庫の床で気絶していたらしい。
「て、店長…」
「これを見ろ!」
店長が突きつけたのは、防犯カメラの映像だった。そこには…
国道沿いを軽トラックで爆走し、除草剤を撒き散らす私の姿。
展示場で除草剤をバケツでぶちまける私の姿。
「うおおおお!」と叫びながら水鉄砲で除草剤を撃ちまくる私の姿。
ドラキュラの姿は、もちろん映っていなかった。
「お前、頭おかしくなったのか!?国道沿いの植栽に除草剤使ったら違法なんだぞ!道路法違反だ!しかも環境汚染!近隣住民から苦情の電話が鳴りやまないんだが!?」
「い、いや、あの、吸血鬼が…」
「吸血鬼ィ!?」
こうして私は、「国道沿いの草木に除草剤を使用してはいけない」という法律を身をもって学ぶことになった。
店長の説教は3時間に及び、給料から賠償金が天引きされることになった。
しかし不思議なことに、あの日以来、店の周辺の雑草は一本も生えてこなくなった。
店長は「お前のせいで土壌が完全に死んだんだ!」と激怒したが、私は知っている。
あれ以来、夜な夜な誰かが草の種を撒いていく音を。
そしてその影が、月明かりの下で私に中指を立てていたことを。
復讐は、まだ終わっていない。
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**あとがき(重要)**
本作品はフィクションです。
**国道や公道沿いの植栽・街路樹に無断で除草剤を使用することは、道路法や各自治体の条例により禁止されています。**
また、除草剤の不適切な使用は:
- 土壌汚染
- 生態系の破壊
- 河川への流出による水質汚染
- 近隣住民への健康被害
などを引き起こす可能性があります。
除草剤は使用方法・使用場所を守って、正しく使いましょう。
吸血鬼が出ても、除草剤をぶちまけてはいけません。
プロンプト
「『吸血鬼に襲われたら、除草剤をぶちまけろ!!!!』。場所は地方の国道沿いの道、中古車販売店社員の私。「店長の野郎…国道から綺麗に見えるように一日で草はすべてなくせって無茶だろ…」。そのとき、後ろに気配が。夜中に吸血鬼と遭遇した。吸血鬼は私に対して鬼ごっこを提案する。私は夜に吸血鬼から逃れるために、思考を巡らせる。吸血鬼の弱点は日光。朝まで逃げれば勝てる。しかし、逃げきれる保証はない。吸血鬼の弱点はいくつもあるが、結局あそこしかない。そう除草剤だ。俺は咄嗟に除草剤をぶちまける。吸血鬼の身体が溶ける。「くそ!なんだこの液体は!」。俺は販売店の倉庫一杯に貯蔵されている除草剤と中古車を使って吸血鬼を撃退する。このプロットを元にシリアスコメディ短編小説を書きましょう。翌日、防犯カメラに除草剤をまき散らす姿写って問題になる。これは国道沿いの草木に除草剤は使ってはいけないと啓蒙する社会派コメディです。」




